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31話 (フォルマルテの目線)イケメン②

———フォルマルテの目線———


いつもと同じ風が吹いていた。

天井スクリーンから落ちてくる太陽の光も昨日のものと同じだ。

古い建物が煩雑に立ち並び、不規則に蛇行を繰り返している道もいつも見ている景色である。

だが、今日の地下1階層は騒然とした空気につつまれていた。

歩いていた者達が足を止め空を見上げ、目に映る建物の窓からは住人達が頭を出し、皆いちように空を見つめている。

青い空には7種族が19種族に敗北し、続いて8種族が9種族に負けたメッセージが流れていた。

そう。要塞都市への侵攻を防ぐために設置されていた機関砲を突破され、俺たち0種族と同盟関係にありこの要塞都市を護っているはずの種族が瞬殺されてしまったのだ。

分かっていたことであるが、俺達の無力さを痛感させられる。

キングからの話しによると、古代文明を操る前回の千年戦争で勝利したという4種族は俺達を裏切ると言っていた。

そして、キングは俺に単体では全種類において最強と言われている19種族を連れてくるように命令してきたのだが、太陽の加護を持つ剣聖と同盟関係を築くつもりなのだろうか。

俺のような一兵卒があれこれ考えても仕方ない。

出来ることと言えば、キングからの命令を肅々と遂行するだけだ。


空を見ていると視界に紙飛行機が飛ぶ姿が入っていた。

あれはテスタのSKILL『エアメール』だ。

エアメールはその名の通り手紙を空に飛ばして届ける効果があり、返信や索敵機能も有している優秀なスキルである。

風になりながらゆらゆらとこちらへ向かってくる紙飛行機に手を伸ばした。

テスタから送られてくる手紙のほとんどはくだらない内容だが、稀に重要なものが混じっている。

千年戦争が始まり既に同盟種族が敗北した今の要塞都市内では、何が起きてもおかしくない状況にあり、ろくでもない内容が書かれている予感がした。

とはいうものの、中を見ないわけにもいかない。

足枷が嵌められているような重い気持ちのまま、手に取った紙飛行機を広げてみると、商店街で騒ぎが起きている知らせが書かれていた。



『鬼宿日の奴等がT-1地区の商店街に現れ、住民と揉め事を起こしているぞ。早くぶっ飛ばしに行くんだ。フォルマルテが来るのをみんな待っている。私もすぐに合流する。BYテスタロッサ』



鬼宿日が揉め事を起こしているだと!

治安局といった類がない地下1階層はマフィアがひしめいており、その中でも鬼宿日は最も恐れられているマフィアだ。

キングのおかげで俺達と鬼宿日とは比較的良好な関係が保たれていたはず。

とはいうものの、俺の縄張りで騒ぎを起こしているのならば、放っておくことは出来ない。

キングからの命令であるが、剣聖を探す件は後回しだ。

先にこの問題を解決しなければならない。

テスタから送られてきていた手紙は役目を果たしたところで、スキル効果を失い消滅していた。


目的地に向かい全力で走り出し、大通りを曲がったところで、ちょい太めの女が跨っている馬が向こうから走っている姿を視認した。

そのちょい太めの女こそがテスタであり、自身を少しだけ可愛いと言っている身の程しらずの者である。

教会で一緒に育った義弟の屑礼は、テスタのことを残念なムチムチな女だと表現していた。


俺達は孤児として教会で治癒活動をしている2種族の女教皇に育てられた。

100万人都市のスラム街で育った者の多くは、治安がよく高水準な生活が出来る地上階へ行こうとするが、実際にはスキルに目覚め加護を貰った者以外の0種族には厳しい環境だ。

結局、ほとんどの0種族は地下1階層へ戻ることになり暮らすしているのだ。

スキルに目覚めることが無かった俺は地下1階層で生きると決めていた。

15歳になるとすぐに黒燐(マフィア)の構成員になると、後を追うようにテスタも入ってきた。

テスタは、既にSKILL『エアメール』が目覚めており、地上階層を支配している各種族にスカウトをされていたが、全ての誘いを断り加護を受けることなく0種族のままでいる変わった女である。

全速に近い速度で走っていた馬が近づいてくると、テスタが馬上から手を伸ばし叫んできた。



「フォルマルテェェェ。私の手につかまるんだ!」



馬を止めるくらいの余裕はあるだろうに、なんで絶対絶命の救出劇みたいな演出をして馬に飛び乗らなければならないんだ。

馬と並走するように走り始めると、ちょい太めの女が馬上から手綱を引きながら、空いている一方の手を伸ばしてきた。

テスタとの視線が交差した瞬間、差し出されてきた手をタイミングよく掴むことに成功した。

馬上へ引っ張り上げてもらうために掴んだ手を引き寄せるように力を入れると、テスタが変な声を上げながらズルリと馬から引き摺り落ちてくる。

テスタの身体能力を考えると、俺を馬上へ引っ張り上げる事は無理であると容易に予想は出来てたはずだった。

俺がテスタを馬上から引き摺り降ろしてしまった形になったのだ。

やる必要がないのに、派手な救出劇みたいなことをするからこんなことになるんだよ。


テスタの身を護るように両手で受け止めると、地面との間に俺の身体を滑りこませ、受け身を取りつつ道路に転がった。

至近距離で馬が地面を蹴り上げ走り抜けていく姿が見える。

テスタが傷つかないように護りながら地面を転がっていく俺は、商店街で揉め事を起こしている鬼宿日のことを考えていた。

戦闘向きの性格でないテスタはここに置いていくべきだろう。



「テスタ。いつまでしがみついている。早く離れてくれ。」



地面を転がり仰向けとなった状態の俺は胸に顔をうずめているテスタへ注意を促すものの、声が聞こえていないのかなかなか離れようとしない。

時間が無い時に何していやがる。

無理やりテスタを引きはがし、ようやく地面から立ち上がると、一連の様子を見ていた見物人から冷やかしの言葉が聞こえてくる。

やれやれ。何がそんなに楽しいのやら。



「テスタ。俺はこのまま商店街へ行くことにするぜ。」

「私もあとからいく。フォルマルテ。絶対に無茶はするんじゃないぞ!」



テスタから声をかけられた時には既に走り始めていた。

近道を使えば商店街までなら3分で到着できる。

細い路地に入ると正面からこちらへ向かってくるヒョロリとした背の高い男と鉢合わせになってしまった。

この男を俺は知っている。

キングから注意しておくように言われていた奴だ。

その男とは、JJという名前で鬼宿日の構成員だ。

そして、正面で立ち止まっている男は気を失っている屑礼を肩にかついでいた。

テスタからの情報では鬼宿日の奴等が揉め事を起きているという商店街の方から、その背が高い痩せた男が現れ、気をうしなっている義弟をかついでいるって、これは一体どういう状況なんだ。

俺の存在に気がついたJJの表情からは余裕が感じられない。

商店街で日常的なものでない想像出来ない何かが起きているのだと直感した。



「お前は確か、鬼宿日の構成員で名前はJJだったな。」

「そうだ。だが今はJJを改め、FMと名乗っている。」



FMに改名した男は屑礼を地面に置くと、両手を上げ戦闘意思が無いような態度をしてきた。

意思表示をしなくても、俺に敵意がないことは分かっている。

いうなれば、急いで何かから逃げてきた。もしくは、一刻も早く遠くへ行きたいような感じに見受けられるからだ。

そのFMが短めな感じで忠告をしてきた。



「フォルマルテ。この先の商店街にいくつもりなのか。」

「そうだ。そこで何が起きているんだ。」


「俺達にはどうすることも出来ないことが起きている。急いでいるのでこれ以上の説明は出来ないが、俺からお前に一つ忠告させてもらうと、そこには行かない方がいい。」

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