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24話 (屑礼の目線)vsFM決着

――――屑礼の目線――――


いつもは人で賑わっている時間帯である商店街のシャッターは閉じられ、道の真ん中を衛生活動用の機械人形が忙しくうごきまわり、街の美化活動をしてくれている。

太陽の光が眩しい中、緊張した空気が流れていた。

背後には、両手に抱えたアルマジロへ文句を言っている安杏里がおり、向こう側には、これから始まるFMとの戦闘を観覧している15種族の悪魔(サマエル)と名乗った全身を白い服装で統一している男と、極悪非道で名高い童顔な姿をした少年の豪画が見える。


対峙しているFMは俺よりも更に背が高く190cmくらいはありそうだ。

格好いいとは言い難い姿をし、女にもてないであろうと思わせる容姿に少し親近感がわく。

そのFMはSKILL『ミスリル使い』の効果で、世界最高強度と言われているミスリルをアメーバのようにぐにゃりと曲げ自在に形状を変形させていた。

緊張している様子がないFMが、ミスリルで何かを造りながら俺に意味不明な事を聞いてきた。


「屑礼君。最強の矛と盾の話しを知っているかな?」

「なんだ、やぶからぼうに。それくらいなら知っているぜ。あれだろ。矛を盾で突いたら両方とも壊れてしまうって話しだろ。」


現実的に考えると、盾の厚みによって結果は変わってくるのだろう。

話しの流れから察するに、FMはミスリル製の矛と楯をつくり出そうとしているのか。

すると、俺がした返事の内容について、背後にいた安杏里が話しの訂正みたいなことを指摘してきた。


「矛と楯の話しは矛盾という言葉の起源を指し示しているだけで、最後に壊れてしまったというような結末なんてものはありませんよ。」


安杏里の両手に抱えていたアルマジロの姿が消えている。

どこに行ったんだ。

そんな事よりも安杏里がいい感じで俺を見る目が冷たい。

間違った答えを言ってしまった俺を、軽蔑している感がする。

刺激が多すぎる1日だぜ。

安杏里になら何をされても有りだと感じてしまう。

可愛いは正義というが、俺は全面的に肯定させてもらうぜ。

断言しよう。美人は3日で飽きると言われるが、それは絶対に嘘だな。

気持ちが高揚している俺にFMがお馬鹿な発言をしてきた。


「その女の子の言う通り、矛と楯の話しには結末はない。失礼だが、そちらの可愛い女の子は屑礼君の彼女さんなのかな?」


安杏里が俺の彼女だと!

そういう事は言わないでくれ。

まわりが下手に茶化してしまうと、上手くいくものも行かなくなるんだ。

分かっていても、遠くから見守るのがマナーってもんだぞ。

安杏里が俺を意識してしまったらどうするんだ。

いや、それはそれで有りだな。

俺を少しくらい男として意識するべき状況かもしれないな。

GOOD JOBだぜ、FM!

気が付くとFMの両手には最高強度を誇るミスリル製の矛と盾が完成していた。

なるほど、まさに最強の槍と最強の楯というわけか。


矛と楯の話しの結末は決定した。

俺がFMに勝利し、安杏里にご褒美をもらうことにするぜ。

高揚感で満たされている今の俺なら出来るかもしれない。

ここは、俺の未来のためにやるしかないところだよな。


俺が獲得しているSKILL『ディレイ』は行動をキャンセルさせる効果がある。

射程は3m。FMの矛よりも長い。

俺は素手で戦わなければならないが、『ディレイ』をうまく使用すれは勝ち筋が見えてくるはず。

FMがジリジリと間合いを詰め始める姿を見て、俺も自然にファイティグポーズを取っていた。

『ディレイ』を連続で使用すると気絶してしまう。

ここは初撃で仕留めさせてもらう。


———ディレイ———

相手の行動をキャンセルさせる。

射程距離3m。

連続で使用すると気絶する。


ここは一気に行かしてもらうぜ。

両足にバランスよく体重を乗せながら少し腰を落として素早くステップインを行った。

FMとの間合いが一気に詰まる。

身長が190cm近くあるFMは身を低くかがめてくると、俺の動きに合わせて完璧なタイミングで矛によるカウンターを合わせてきた。

迷いのない突きだ。

速く、そして鋭い。

死を予感させる回避不能な一撃だ。

俺よりも駄目そうな顔なのに、槍使いの達人だったのかよ。

それ故、その行動は予測できていたぜ。

―――――――SKILL『ディレイ』を発動する。


伸びてくる矛が、巻き戻っていく。

FMは完璧なタイミングで繰り出したカウンターの突きがキャンセルされると、不測の事態に陥り、自身に何が起きているのか理解出来ていない表情をしていた。

混乱して当然だ。

戦闘時において警戒するのは相手に出方であり、自分自身の行動を疑う者などいるはずがないからな。

初コンタクトの相手にSKILL『ディレイ』を使用すると、必ず決定打が入ってしまうんだよ。


ファイティングポーズを取りつつ素早くステップインを繰り返し、防御ががら空きになっているFMの懐へ潜り込んだ。

これは俺の間合いだぜ。

FMの方は全く反応出来ていない。

無条件で俺の攻撃が入る。

―――――――少し大振り気味にスイングした拳がFMの顎先を捕らえる寸前、ミスリルの楯に阻まれてしまった。


完璧にFMの不意を突いたはず。

あいつは反応出来ていなかった。

何故、俺の拳を防いでいるのだ!

不測の事態に停止していた思考が動きだす。

至近距離にいるFMと視線が重なり、お互い、無防備な状態になっていることに気が付いた。

俺とFMは、磁石が反発し合うように瞬時にバックステップを踏み距離を取った。


あのタイミングで楯が防御行動をとるとは予測外だ。

俺の勝ち筋は展開を予想する事。

事前に展開を予測し、『ディレイ』をタイミングよく使用しながら相手の虚をつくことこそが俺の必勝パターンだ。

逆に言うと、展開を読み違えると勝ち筋は無くなる。

俺は今、ミスリルの楯の動きを読み間違えた。

そう。数百以上たてていたシュミレーションに、あの楯の動きは入っていなかったのだ。

この戦いは俺に不利かもしれない。

お互い距離をとり、ミスリルの楯を見つめる視線に気がついたFMがニヤリとしてきた。


「屑礼君。俺の楯が不思議なのか?」

「ああ。先ほど、俺の攻撃を防いだその楯の動きに違和感があったからな。」


「気が付いていたか。俺のスキルはミスリルを変形させるだけじゃない。生命を吹き込む事が出来るんだぜ。」

「生命を吹き込むだと。それは矛と楯が生きているとでいうのかよ。」


「そう理解してくれていいぜ。生命を得た矛と楯は、俺の意思とは関係なく自立して行動するんだ。」


どう言うことだ。

矛と楯は、FMが動かしているのではなく、自らの意思で行動していると言っているのか。

信じられないことだが、目の前で起きた出来事とその話しは整合する。

俺は『ミスリル使い』の効果を低く見積りをしていたようだ。

FMの実力は本物だ。

俺からすると一瞬たりとも選択ミスをすると命とりになりかねない。

このハイレベルな攻防をしびれた熱視線で俺の戦いを見つめているかもしれない安杏里をチラ見すると、全く驚いた様子はなく退屈そうに『早く勝負をつけろ』みたいな空気を出している。

安杏里からすると、所詮は超低レベルなクソ虫同士の戦いだって感じなんだろう。

俺が敗北しても街が綺麗になるとしか考えていないようだし、助けてくれる意思も全く感じない。

そんな安杏里が刺激的な女神に見える俺って、もしかして普通じゃないのかもしれないな。

表情から余裕が消えているFMは、盾を前面に構えながらゆっくり近づいてきていた。


「敵の行動をキャンセルさせる事が出来るという0種族がいると聞いたことがあったが。なるほど、屑礼君。お前がそのスキルの使い手だったのか。」

「そんなたいそうなもんじゃない。野郎達に俺の事を知られても全く嬉しくないしな。」


FMに『ディレイ』の効果について認識されてしまった。

だが俺の方も『ミスリル使い』について理解をする事が出来た。

俺の勝ち筋は消えていない。

問題は『ディレイ』を連続で使用してしまうと気絶してしまう事だ。

次で決めなければ、俺は敗北してしまうだろう。

安杏里に俺が使える番犬である姿を見せておかないと、本当に殺処分されてしまいそうだしな。


片足を前に出し、少し腰を落とすと体重を両足にバランスよく乗せた。

俺の方から行くぜ!

深く息を吐き、ステップインを開始した。

FMは190cm程度ある身長をミスリス製の楯に隠し、俺の動きを見定めようとしている。

俺は既に矛の射程内へ飛びこんでいたが、FMからはいまだに攻撃してくる気配は感じない。

俺の攻撃に合わせてカウンターを繰り出すつもりなのだろうが、『ミスリル使い』の効果はアップデート済みだ。

その行動も予測の範囲なわけよ。


楯を全面に出して亀のように身を固めているFMにへばり付こうとすると、楯で俺の体を押し返えそうとするモーションに入るのが読み取れた。

楯に身を隠した者が相手のバランスを崩すためにやる効果的な行動だ。

自立し機能をもっている楯は、FMの意思と関わりなく最良の選択をすることは分かっていた。

そう。その動きは予測していたぜ。

ゼロ距離まで間合いを詰めてきた敵を押し返してくると思っていた。


最良の選択とは、リスクを回避しながら詰将棋をするようにジワリジワリと相手を追いつ詰めていく。

その行動は予測されたとしても、崩すことが難しいのが通常だが、俺に限っては必勝パターンをひっくり返すスキルを持っている。

楯に押し返された俺は、予定どおり後退をし、バランスを崩す演技をしてやろう。


圧をかけられた俺は体勢を崩しながら後退してみせた。

集中力が途切れた演技をし、明後日の方向を見ている俺に目掛け、FMの矛が攻撃に転じる空気を感じる。

この時を待っていた。

格上の敵を攻略するには、身を固められている時ではなく、攻撃を仕掛けてきたタイミングだ。

―――――俺は『ディレイ』を発動する。


FMから一切の無駄がない突きが繰り出されてきていた。

だが、その突きはディレイ効果によりキャンセルされている。

FMと視線が交差していた。

ここで『ディレイ』されることを悟っていたように見受けられるが、自立して動く矛と楯をコントロールできていないようだ。

俺の勝ちだな。

FMから弾丸のように真っすぐ飛んできていた矛の動きが、巻き戻されていく。

――――――――――そして俺はもう1度『ディレイ』を発動する。


2撃目に発動させた『ディレイ』により楯による防御も解除されていく。

FMの防御が、完全にがら空きになっていた。

この状況を将棋に例えるならば、俺が王手をした状態なのだろう。

あとは、王を摘み取るだけ。

フルスイグした拳をFMの顔面に叩き込むだけだ。

俺の拳がFMの顔面を捕らえようとした瞬間、思いもよらぬ事態が起きた。


――――――――FMが首を回転させて、俺の拳を回避したのだ。


空振りをしただとぉぉぉぉ!

頭の中が真っ白になった。

勝利を確信し、油断したのだ。

無防備をさらしてしまった後頭部に『ゴン』と衝撃が走り俺は気絶をしてしまった。

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