14 (真里伊の目線)戦ったら終わる
———真里伊の目線———
要塞都市の中央市場の中にある通路の真ん中には空間の狭間が存在し、そこに8帖ほどの大きさの部屋が隠されていた。
市場へ訪れる人の数は1日1万人以上いるものの、この隠し部屋の存在については誰も気が付いていない。
おそらく隠密の加護を持つ9種族以外の種族には見つけることは不可能だろう。
この隠し部屋は、誰が造ったのかは知らんけど、うちが利用させてもらうことにするわ。
都市の衛生・生産活動を行うために市場へ多くの機械人形達が出入りしており、自我に目覚めてしまったうちがここをウロウロしていても何ら違和感は無い。
常にSKILL『隠密』も発動しておるし、今後とも隠し部屋が見つかる事はないやろう。
今、太陽炉を復活してもらうためにその隠し部屋へ誘導した19種族の安杏里は、片手に抱えているアルマジロへ向かい文句を言っていた。
「太陽炉を復活する方法の説明が分かりにくいのですけど。もしかしてミランダはあれですか。わざと理解されないような表現をし、部下が仕上げた資料をみて『違う違う、分かってないな。』と待ってましたとばかりに嫌味を言ってくる上司がいますが、もしかしてその駄目な中間管理職タイプの者なのですか?」
アルマジロに向かって駄目な中間管理職だと言っておるようやけど、これは一体どういうことや。
腹話術でも始めるのかと思ったらそうでもない。
この面白くない劇にツッコミを入れるところやんやろうか。
アルマジロに話しかけている安杏里という小娘は、自我を持っている機関人形も見てもビビっていないしな。
頭のネジが10本単位で抜けていそうや。
おおおお。
安杏里が手に持っている太陽炉が輝き始めているぞ!
19種族の少女が、太陽炉へエネルギーを注ぎ始めている。
なんや、やっぱり太陽炉を復活することが出来るんかいな。
というか、アルマジロに文句を言いながら、やる行為じゃないやろ。
もっと、集中してやってくれや。
いや、もしかしてやけど、安杏里の奴、太陽炉にエネルギーが注がれていることに気が付いていないんじゃないか?
おい、ちょっと待たんかい。
――――太陽炉から光が漏れ始めているぞ!
もう許容オーバーしとるんちゃうか。
天然ボケの剣聖へ慌てて叫んだ。
「安杏里。その手の太陽炉やけど、もうええんちゃうか!」
今、『太陽炉がどうかしましたか?』みたいな顔をしたよな。
安杏里、やっぱり自分がやっている事に気が付いていなかったやろ!
それで、何でドヤ顔をしてるんや。
そこは、動揺するところやろうが!
「何気に太陽炉を復活させてしまうとは。可愛い女の子は何をやっても結果オーライになるという都市伝説は本当だったのですね。」
やっぱり、結果オーライなんか!
それから何や、その意味不明な伝説は!
ドジをしても最後に『上手くいって良かったね、お兄ちゃん』というやつの事か?
そのお兄ちゃんキャラって、どこにおるんや!
…。
気が付くと安杏里がアルマジロを放り投げ、両手で大切に包み込みながら光輝く太陽炉を「どうぞ、お受け取りください」と差し出してきた。
「チッ!」
なんで、アルマジロがうまく着地した姿を見て舌打ちしたんや?
アルマジロの事は今はどうでもいい。
さて渡された太陽炉であるが、ちゃんと稼働していた。
待ちに待った感動的な状況になるはずが、何だかテンションが上がってこない。
ここはサクッと代替品を外して太陽炉に付け替え、そして安杏里に御礼をさせてもらうことにしよう。
――――――太陽炉が無事にうちの体の一部になった。
千年戦争で勝利するために最大となる障害を乗り越えた瞬間だ。
そう、ついに完全体になったのだ。
力が漲ってくる。
運動能力が跳ね上がったことを実感した。
完全体に成るとはこれほどのものなのか。
この完全体の力を早速試してみたい。
予定通り、19種族の剣聖を実験台にしてやろう。
「安杏里。太陽炉は上手く稼働しておるようや。ほんまに有難うな。」
「どういたしまして。」
「ほいでな、SKILL『ホーミング爆撃』を試してみたいんよ。」
「ここで試されるつもりなのですか?」
「安杏里には『ホーミング爆撃』の的になってもらいたいんやけど頼めるやろうか。」
「もちろんOKです。全力で撃ち込んで来てください。」
うちの言葉に動揺する様子がないのは、うちの言っている意味を理解してないんやろうか。
うちは、安杏里を殺すつもりなんやで。
いや、どうやらこういう展開になる事を予測していたようやな。
要するに、ここまでの一連の流れは想定済という事かいな。
さすが19種族だと言いたいところだが、うちには絶対に勝てへんよ。
何故ならば、うちには100%の勝利を導きだせるSKILL『戦術眼』が有るからな。
———SKILL戦術眼———
・敵対する相手の攻略ルートを導きだす。
・出力を上げると攻略最適化時間も導きだす。
・危険な際、戦闘値が表示される。
・弱点を見付け出す9種族の固有スキル。
太陽炉を動かす事が出来て『ホーミング爆撃』が使えるようになった今のうちは、まさに鬼に金棒や。
安杏里は一応剣聖やし、『石橋を叩いて渡る』とゆうことわざもあるからな。
ここは念には念を入れて、SKILL『戦術眼』を発動させてもらうで。
—————【警告】安杏里の攻略は不可
え、マジ?
太陽炉を装備し、完全体に成ったうちでも正面からでは勝つ見込みがないという事か?
さすが剣聖というか、相当強いんやな。
ここは戦術的撤退をして、寝込みを襲わせてもらいますわ。
SKILL『戦術眼』の出力を最大にして、最適な暗殺時間を導きさせてもらうわな。
出力最大で『戦術眼』を発動や!
—————【警告】戦術的撤退は不可
…。
どういうことや。
最も頼りなるSKILL『戦術眼』が、うちに死を予告してきたんやろうか。
今のうちって、相当危険な状況におるんかいな。
目の前にいるロリ剣聖の姿にSKILL『戦術眼』の効果で、攻撃値・能力値が表示されていた。
安杏里の戦闘値、無限大
な、なんやこの『無限大』というのは!
数字ちゃうんかい!
化け物の中の化け物なんか!
安杏里が魔神に見えてきたぞ。
これは、マジであかんパターンや。
このまま安杏里と戦ってしもうたら、うちは終わってしまうぞ。




