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12 私のボディーラインとは

夜が開け朝日が昇っていた。

この時間の大気には水蒸気はほとんどなく、太陽光を遮断するような浮遊物は見られない。

青が入り混じった朝日に照らされている要塞都市は、影とのコントラストがくっきりとしている。


ミランダが呼び寄せた『隠者の加護』を持つ9種族の協力を得て、要塞都市の周囲に張り巡らされていた結界をすり抜け、1000万人以上の者が暮らしている要塞都市(イオリス)への侵入に成功し、この時間で最も賑わっている市場へ来ていた。

市場は、100m四方の敷地内に不規則なラインで軒を連ねており、石畳で舗装された路地には人でごった返している。

一堂に集まってきている新鮮な野菜、魚など旬の食材が通路沿いに並び、活気あふるれる競りの音、都市中から集まって来ている住民達と値段交渉をしている声が、折り重なるように聞こえてきてくる。

要塞都市は千年戦争の会場となっているはずなのだが、そこに暮している者達はいつもと変わらない様子で生活をしているように見える。


私をここまで誘導してくれた隠密の加護を持つ者の名前は真里伊。

頭の先から足元まで全身をフードで隠しており、私よりひと回り小柄な機械人形だ。

人の隙間をぬうようにすり抜けて進んでいき、その後ろを何とか歩調を合わせながら付いて歩いていた。



――——―真里伊(マリィ)――――——

種 族 : 9種族

加 護 : 隠者

JOB : 殺し屋

装 備 : 黒装束

スキル : 隠密、壁歩き、戦術眼、

      ホーミング爆撃

備考1 : 機械人形で性別は無い

備考2 : フードで隠れて素顔は見えない

備考3 : 小柄な安杏里より更に小さい

備考4 : 9種族より千年戦争に参加

備考5 : 悪党


真里伊は、市場の通路を不規則に目まぐるしく動く人の渦をすり抜けながらスムーズに進んでいく。

滑らかかつウルトラ可愛いが代名詞である私よりも無駄なく歩いていくとは、さすが隠密の加護を持つ9種族といったことろだ。

体を丸めならが石畳を器用に転がっているミランダが、私の心の声に反応してきた。


『安杏里が言う滑らかな代名詞とは、その凹凸が無い自身の体型の事を、表現したのか?』


なぬ。滑らかかつウルトラ可愛い言葉を凹凸が無いボディーラインへ変換してくるとは、この生き物は完全に私をおちょくってきておるな。

ウルトラ可愛いという大事な方のワードが跡形もなく消えてしまっているし。

そもそも、美少女ヒロインに毒をはくキャラクターは、イケメンの執事と決まっているはずだ。

そして何故かそのイケメンに心がトキメクわけであるが、態度の悪いアルマジロなんぞに恋心を持つはずがないだろ!

一度、ミランダは徹底的に叩き伏せる必要がありそうだな。


『私の体には少しくらいの凹凸なら有ります。訂正と、私の心を傷つけた謝罪と誠意を要求します。』

『誠意を見せろだと。反社会的勢力のような言葉を言う剣聖なのだな。だが承知した。時間の許すかぎり安杏里が納得するまで、丁寧な説明と謝罪をしよう。そんな事よりもだな、今は真里伊と結んだ2つの契約が完了した後の事を事前に考えておく方が重要なところだぞ。』


私のボディーラインが、そんな事だと!

というか、時間の許す限りと言っておきながら、何故そうなるのだ。

でもまぁ確かに、ミランダのいう事は一理ある。

そう。私は真里伊とは2つの契約を行っていた。

契約の1つである『私を滞りなく要塞都市へ連れていく事』は完了した。

そして、残るもう1つの契約が果たされた後は、9種族から『千年戦争』に参加している真里伊とバトルをするのが必然な流れなのだろう。

もちろん、千年戦争の参加者との戦闘はいつでも大歓迎だ。

その真里伊であるが——————————

突然足を止め、こちらへ振り向いてきた。


「おい、19種族の剣聖。目的地へ到着したで。」


到着したって、店が軒を連ねている、ただの路地しか見えないのですが。

要塞都市への侵入に成功し、真里伊に『ほな、行こうか。』と言われてとりあえず後ろを歩いていたわけであるが。

足元にいるミランダについても「こんな所に部屋があるとはな。」と感心している。

私だけ話しに付いていけていないようだ。

こんな所に部屋って、どこにあるんだよ!

意味不明だな。

黒フードをすっぽりかぶっている真里伊が「ほな入ろうか。」と言い袖を引っ張ってきた。

入るって、店にでも入るのでしょうか?

あれ――――――


―――――石畳の路地の空間に隙間がある。

建物の隙間ではなく、人が歩いている石畳の上に黒い棒みたいな隙間があるのだ。

いやいや、そんなもの、無かったはずだぞ。

というか、その隙間は何なのでしょうか。

私の袖を引っ張っている真里伊がその隙間に入っていく。

足元にいるミランダもその隙間に向かい転がっているので大丈夫のような気もするが…


隙間の奥に入ったそこは、窓のない暗い個室で天井に灯りが吊られており、壁の棚に古びた機械の山が綺麗に並べられていた。

壁の向こうからは市場の賑やかな声が聞こえ、人の気配も感じる。

全身をフードで隠し顔が見えない機械人形が袖を放し、歩きながらこの隠し部屋について話してきた。


「ここは、うちのメンテナンス工場や。」


幻影を見せられているわけでもなく、この部屋は実際に存在しているようだ。

危険性も感じないようだが、なぜ部屋を隠す必要があるのだろう。

なるほど。

勘のいい私は気がついてしまいました。

この部屋は男と女が浮気をする時に利用するという『隠れ家』というやつなのですね。

だが、この部屋には浮気を重ねるための必須アイテムであるベッドがないのは何故でしょうか。

鋭い観察眼で部屋をチェックしていた私にミランダが呆れた口調でツッコミを入れてきた。


『真里伊はこの部屋はメンテナンス工場と言っていただろ。どういう理屈でここがラブホテルに変換されるのだ。ついでに言っておくと、この場所は次元の隙間にある空間を利用しているので誰でも入れるわけではない所だ。』


ふむふむ。

確かに9種族の機械人形はそう言っていた。

ダブルベッドや怪しい照明セットがセッティングされていないはずだ。

真里伊を見ると、棚から何かを手に取り私にその何かを見せてきた。


「これが、うちの本当の心臓である『太陽炉』や。」


機械人形である真里伊の体に現在使用されている心臓は、本来のものでは無くスペアーのものを利用していると聞いていた。

今、手に取って見せているそれが、真里伊の本当の心臓である太陽炉だということか。


「今使用しておるスペアーの心臓やと火力不足でな、うちの攻撃SKILLである『ホーミング爆撃』が使えなくて困っているんや。」


真里伊と交わした残る契約の1つは『止まってしまった心臓の太陽炉へ私が命を吹き込む事』だ。

そう。真里伊が手に持っている太陽炉を復活させることが、要塞都市内へ誘導してもらう代わりに交わし契約だ。

太陽炉とはもの凄いテクノロジーで出来たものと想像していたが、真里伊が持つそれは、銀色に光る拳サイズのガラクタにしか見えない。


真里伊が「頼むわ。大事に扱ってくれよ。」とそのガラクタを差し出してきた。


太陽炉に火を入れられるのは『太陽の加護』を持つ私だけであり、真里伊は19種族が要塞都市に来るのを待っていたのだ。

美少女であるにもかかわらず、無限に思えるくらい剣を素振りしてきた私の手に太陽炉が渡されると、ズシリとした重量感がある。

こんなガラクタが『太陽の加護』に耐えられるのかしら。

いや、そもそもミランダからは、太陽の加護から生み出される無限の力に耐えられる物など存在しないと教えられていたはずだぞ。

『その認識は正しいが少しその太陽炉について説明してやろう。』とその辺りに転がるスクラップを漁っていたミランダが、真里伊に聞こえない回線を使い話しかけてきた。


『その金属はこの世界の物質では無いアダマンタイトだ。強度自体はそれほどではないので、安杏里にとっては薄っぺらい紙のような物だが、太陽の加護と共存する事が出来る唯一無二の物質なのだ。』

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