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無双のつるぺた

私の名は安杏里(あんあんり)

現存するたった独りの19種族である。


―――――安杏里(♀)―――――

種 族 : 19種族

加 護 : 太陽

JOB : 剣聖

装 備 : 神剣クラスソラス

スキル : 不死鳥、紫電一閃、危険予知

備考1 : 15歳で成長が停止している

備考2 : 小柄で凹凸が少ない美少女

備考3 : M男達の天使

備考4 : 自称才色兼備(少し痛い女)


空に輝く太陽が大地を焦がし、地面のところどころから炎が上がっていた。

一面に広がる岩場の景色は陽炎により歪みが生じ、岩が焼けるにおいがしている。

私が生きる『太陽の世界』には夜が無く、常時100℃以上の気温がキープされているため、私以外は限られた生物を除き生きる事が許されない環境となっていた。

その灼熱の岩地をコロコロと足元に転がってくる球体がいる。

アルマジロの姿をしたミランダだ。

ミランダとは私が『千年戦争』に勝利するためにサポートをしてくれている21種族の個体で、ここ数年はアルマジロの姿をしていた。


―――ミランダ―――

種 族 : 21種族

加 護 : 世界

JOB : 補助

スキル : 無限、万能

備考1 : 変幻自在の姿として現れる

備考2 : 千年戦争は不参加


『千年戦争』とは、1000年に1度行われる種族間戦争の事であり、各種族からの代表者が地上世界の覇権をかけ争うものである。

その『千年戦争』がこれから始まろうとしていた。

ミランダが球体の姿を解除し、緊張感の無い私に気を引き締めるように注意を促してきた。



「安杏里。まもなく『千年戦争』が開幕されるが油断はするな。太陽の加護をもつ19種族とはいえ、無敵ではないぞ。」



前回の勝者は、信じられない事に最も弱いとされる0種族だったそうだ。

つまり、私の先輩にあたる太陽の加護を受けている19種族が、敗北してしまったということだ。

だが、私に限っては、太陽神の娘にして史上最強の剣聖であり、更に才色兼備を兼ね備えている。

正直、油断していても千年戦争ごときに勝利することなど容易いものだと思われる。



「ミランダ。『お茶の子さいさい河童の屁』ということわざの意味を知っていますか?」

「うむ。大した事ではなく簡単に物事を終わらせる事が出来るという意味だ。」


「そうです。才色兼備である私の代名詞のような言葉です。」

「なるほど。才色兼備とは優れた学識と美しい容姿を兼ね備えた才女の事を指す言葉だが、自分でそれを言うと他の者から痛い女だと思われてしまうので、気を付けておいた方がいいぞ。」



確かに痛い女と思われてしまったら恥ずかしい。

ご忠告有難う御座います。

今後、口にするのは控えることにしよう。

まもなく千年戦争が開始されるわけだが、せっかくだし以前から抱えていた疑問を聞いておこうかしら。



「千年戦争が始まる前にミランダに質問があるのですが、聞いてもよろしいでしょうか。」

「ほぉう。千年戦争を勝ち残ろうとするための質問か。殊勝な心がけだな。うむ、何なりと答えてやろう。」


「何ですか。その下手なハードルの上げ方は。そんな真面目な質問をするはずがないじゃないですか。万能の21種族であるミランダはどうしてアルマジロの姿をしているのか、その理由を聞きたかっただけですよ。」

「うむ。どうでもいい質問であるが、答えてやろう。それはアルマジロの姿が可愛いからだ。安杏里もそう思うだろ?」


「まぁ、そうですね。」



とりあえず心にも無い相槌をしたら、満足そうにニヤリとされてしまった。

確かにアルマジロは可愛いと思うのだが、ミランダはお洒落とは対角に位置するクソ親父のような性格をしている。

ギャップ萌えでも狙っているのだろうか。

私の事を痛い女と言ってくれたけど、ミランダについては相当痛い親父だと言えるだろう。


――――――その時である。

突然、空に亀裂が走り、ガラスが潰れていくような音が聞こえ始めてきた。

更に灼熱の炎が上がっている岩場が、立っていられないくらい大きく揺れ始めている。

私のために太陽神が創世したこの世界が、終焉を迎えているのだと理解した。

生まれて今日まで、『千年戦争』を勝利するために武道を極め、あらゆる知識を学び、暇で暇で仕方がない毎日を過ごしてきた世界であるが、いざ終焉の時をむかえると寂しく感じてくる。

そして気がついたら、太陽の世界から別の世界へきていた――――――


私が空から自由落下をしている。


―――――――地上世界に来たのだと認識した。

うつ伏せになり両手を広げ、目一杯空気抵抗を受けながら空から落ちていたのだ。

遠く下には、果てしなく広がる地上世界が見えていた。

遥か上空からであるが、初めて森を見た。あそこに見えるのは川かしら。

ミランダがフォログラムで見せてくれていた映像と同じ景色だ。

太陽の世界での話し相手はミランダだけであったが、地上世界にはたくさんの人とコミュニケーションをとることになるのだろう。

少し怖い気もするけど、ワクワクの方が遥かに大きい。

自分がゲラゲラと笑っている事に気が付いた。

あら、こんなに笑っているのは初めてじゃないかしら。

というか、体に張り付いているアルマジロの姿をしたミランダがゴソゴソと動いているから、くすぐったいのだ。



「ミランダ。私にしがみついているのは仕方ないと理解していますが、どさくさ紛れに変なところを触らないで下さいよ。」

「変なところとは、何だ。未発達の胸の事か、それともプリっとしていない尻の事か?」


「ミランダは天然なのですか。天然だとしても、次に同じ言葉を口にしたらぶち殺しますよ。」

「天然だ。許せ。」



それ、天然では無いと言っているように聞こえるぞ。

それにしてもなのだけど、先ほどからSKILL『危険予知』が私へ警告を発し続けているのはどうしてなのかしら。

私の思考を読み取ったミランダがその疑問に対する答えをくれた。



「現在、安杏里は時速200km程度の速度で空を落下している。このまま地面に衝突したら痛いくらいでは済みそうにないからスキルが警告を発しているのだろう。」

「ゲラゲラと笑っている場合ではないじゃないですか。痛いくらいじゃ済みそうにないって、私は死んでしまうのでしょうか。」


「安心しろ。獲得しているSKILL『不死鳥』の効果により、死んだとしてもたぶん復活出来るはずだ。」

「たぶん復活出来るはずって何ですか。というか、その前に痛いのは嫌というか、復活する事が前提だとしても死にたくありません。私のサポート係なら、何とかして下さい!」


「アルマジロにものを頼む態度とは思えん言葉遣いだが、まぁいいだろう。今回は初回限定のサービスをしてやろう。」

「期間限定サービス、有難うごさいます。」


「期間限定ではなく、初回限定だ。勝手に期間を変えるんじゃない。」

「まもなく地上へ衝突します。しょうもない否定は結構ですので、早くその初回限定サービスとやらを実行願いませんか。」


「うむ。それでは安杏里の体を少し軽くしてやろう。」



体を軽くしてやるって、それって最強の一つである重量系のスキルじゃん。

さすが、万能の種族といったところか。

ミネルバからは、全種族には与えられている能力値に優劣が無いと教えられていたが、絶対に違うだろ。

戦闘力が最も高い19種族である私でも『世界の加護』を受けている21種族に勝つ事が出来るとは思えない。


ん、あそこ、何かがいる。

私が自由落下する先の草原地帯に巨大な個体が見えた。

体長が5m以上はありそうだ。

全身を装備品でかため、巨大な斧を持っている。

あれは16種族のオークの上位種、オークキングだな。

私の初コンタクトがオークキングなんてありえない。

あれは無視して、出会っていない事にしよう。


草原地帯に着地する頃には落下速度が時速30kmにまで落ちており、怪我をする事なく着地する事が出来た。

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