メイド長の姿をした犬
ミハエルと冬華がリィルの相手をしている時ミハエルの部屋に侵入する姿があった。
侵入というかメイドの格好をした女で、だが掃除に来たというわけでもなさそうだ。
「いない……ミハエル様がいない……」
持ってきた紅茶を魔導PCもおいている机に置きながら、机の椅子に座ってじーっと待つ。
「ミハエル様がいない…………」
そう呟いてミハエルの魔導PCを勝手に立ち上げる。
「ミハエル様がいない…………」
再びその言葉を漏らしながら、ミハエルのエロ画像宝庫を無遠慮に漁り始める。
「ミハエル様が今こういう女性が好み…………」
そう呟いて、プチ記憶媒体にミハエルのエロ画像(2次元)宝庫のデータをコピーする彼女の名はレア。
カイアス王国である貴族に逆らい奴隷の身分に落とされ、ひわいな事を要求されそうになったくらいには美人であったが、武術もなんとなく覚えた上に、運動能力も良い上に魔法でさらに運動能力を底上げしていたので、カイアスを自力で脱出。船に密航してヴァーレンスに着いて雨に打たれて家もなく服もぼろぼろよれよれで破れて雨に打たれっぱなしになっていたところをミハエルに拾われた。
それが彼女が15歳の頃。6年前。今は彼女は21歳である。
前のメイド長がそろそろのんびりすごしたいというので21歳にしてメイド長を務める。が、仕事をする能力はあるのだが仕事をしたがらない。
それでも、ミハエルに拾われた当時は真面目に彼に仕えていた。
だが、仕えているうちに彼が決まり(一般社会的なルール、時間厳守)を大事にせず人の心の精神衛生が一番大事だろ~人はシステムの奴隷じゃないんだ腹決めてシステムに逆らおうぜ心優しくのんびり生きていこうぜ、と大らかな性格と分かっていくうえで今の
「厚かましく腹さすれとわたしを気持ち良くしろという人間の家族になれ切った犬スタイル」
になっていった。微妙にお腹にも肉がついた。というか、痩せ気味だったのが栄養をちゃんと取れるようになったので、痩せ気味から健康的な肉付きになった。
今は、ミハエルが恋しくなった時、非常アラームを鳴らしてミハエルを呼びつけだっこをせがむ程に厚かましくなっている。ちなみにこの行動はミハエル家では有名で、非常アラームが鳴っても今は誰もまともに相手しない。ミハエル以外は。
一度ミハエルがトイレ中にこの発作が起きた時があり、ミハエルがトイレから出てくるまで非常アラームを手にもったレアがトイレで待ち伏せしていたこともある。
だがこれでひどく顔見知りである。知らない人がいると顔がこわばりやすい。
ミハエルが最初に彼女にあった雨の日も、彼女の顔はこわばっていた。右手には短めの剣も持っていた。おそらく周りに信じられる人が少ない環境で育ったのだろう。
だから来客のご案内などは他のメイドの方がむいていたりする。
メイドグループからは前より厳しくなくていいわ~なんて声も上がっているが、ちゃんとやらないと家追い出されるわ! と反面教師的な立場にもなっているという珍妙な事態だ。
いざレアが仕事を始めるとその速度は速く、予定よりも早く終わってしまう。そして今みたいにミハエルに向かって構ってモードでまとわりつく。
構ってモードでまとわりつく彼女の振る舞いがまるで犬のようなのでミハエルだけならず、水鏡冬華やサリサなどミハエルの嫁連中からも犬ににてるよね? 呼ばわりされている。
表情はあんまり変わらない彼女。なので遠くから見るとお人形さんに見える。
でも病気とかではなく、感情を表に出さない癖がついているだけで、くすぐられたら大笑いが止まらなくなる。
「…………あ。おかえりなさいませ。ミハエル様」
「ただいま。って家の中にはいたけど。まーた人のPC勝手にいじって」
「じゃあ、なにを家の中で」
「嫁が一人増えそうです。君もちょっとだけ話したことなかったっけ? リィル=エリンて子」
「ああ、あの人……すけこましですね。どうするんですかここに偉大なる嫁帝国でもつくるんですか」
「あのね。いやすけこましに見えるのも無理ないから甘んじて受け取るけども。
てかなんだその帝国。女だけの国って建築途中で海底に沈んだ地域にあったよね。
海底都市マリーローズあたりの。瀬織津姫が怒ってブレスぶちまけた所。
あの子、リィル冷たく引き離したら生霊となって家ごと呪い背負わなきゃいけないから結婚で呪い封印できるならそうするんだよ。
は~、家に呪い起こさないように行動するとなかなかえらいことになるな。
恋愛って呪いに変わりやすいからなぁ
ヤマトくんや出雲建はあんなに嫁もってよくやっていけたなぁ」
「……それって付け入るスキ大きくありませんか? わたしと結婚しないと呪うぞ~って迫れば誰でもミハエル様と結婚できるじゃないですか。きりないですよ。
ミハエル様が幽霊に憑かれやすい理由改めて分かりました。
冬華様は色情因縁ついてるんじゃない? なんて言っていましたが、ミハエル様はもっと根本の問題です。
そのやさしさ、生きている人間だけじゃなくて動物や幽霊なんかにとっても魅力的です
わたしもそのやさしさに付け込んであなたに抱っこして欲しい時に非常アラーム鳴らしてますし」
「それはやめてくださーい。もう非常アラーム鳴っても君がアラームで遊んでるとしか思わなくなってるからね皆。
でも今さら冷たくなれと言われてもな……」
「あなたのやさしさは危険なんです。女にとっては、ふしだらなやさしさです」
「やさしさにふしだらとかあんの…………?」
「あります。わたしが今そう思いましたから」
と部屋のドアがまた開く。女の手が見える。
「あ、またいるレアが。ホントあんたって人間になれた犬みたいよねーこの前なんてミハエルのベッド自分の物のように占領してたじゃないずっと前に飼っていた犬と同じ行動なんだもん。生まれ変わりじゃないでしょうね?」
と、呆れた顔の冬華がミハエルの部屋に入ってくる。




