いまいち恋心が女に向いてない気がするんだよね
ここはモンテーロというカイアス王国でそこそこ大きな街の喫茶店。観光客相手にしている店ではなく、地元の人を相手にしていそうな店である。
「いやこんな大人数で入ることはないでしょ」
ミハエルはたじたじとなって言う。でもまあ、集団のリーダーがそういう行動を取ったらリーダーに従うというのもまあわからないでもない。
(なんかすごい集団が来たな……)
喫茶店のマスターが一番驚いてる。そりゃあそうだろう。普段地元の人ばかりの喫茶店に大人数しかもリーダーらしき人物が他国の王に近い人物なのだから。
その次に驚いてるのは喫茶店のバイトの学生の女である。
「生姜焼きお願い、あ、レスカ先にお願いね」
ミハエルがそう注文する。水鏡冬華は、
「わたしホット(コーヒー)。後はー、とんかつ定食で」
サリサは、
「わたしもとんかつ定食かなー。あ、先にカフェオレで。ねえミハエル、レスカってなぁにぃ?」
と注文した。
「レモンスカッシュだよ。母がねこういう喫茶店で注文したのよく覚えてて、今でもわたし真似してるのよ、母さんの。
だからレスカが好きというより思い出を飲んでる感じかなー、気持ちとしては。同じくらい古いらしいレイコーって表現は聞いたことないけど」
「ふ~ん……レイコーて?」
「アイスコーヒー」
サリサが唸るようにそう言葉を繋げる。水鏡冬華はレスカという表現は聞いた事があるので別にという顔でスルーしていた。
別の席でリディアとフローター・クレーヴが話している。
「レスカって聞いた事あるあなたたち?」
「ううん、隊長。はじめてー」
「初耳ー」
「だよね」
「あ、店員さん豚生姜焼き5人前お願いー」
とリディアが注文する。
「あ、わたし野菜カレーで」
と注文した鬼頭千紗はミハエルに対する気持ちは冷めていた。
(気になっている男性→自分のもの、自分の彼ではないというか自分が独占するのにこうも女が寄ってきて、となると厳しさを感じる。いくら自分が美貌を持っていたとはしても、もはや美貌だけでは届かない男だ。ここまでとは思ってなかった)
他の女性と親しくしている→あの子、あの女が好きなのかも。というやきもきに立ち向かっていくには、彼女の精神は幼なかった。
鬼頭千紗と向かいに座っているのは勇者ジェムズとフレデリック=ローレンスである。
(この人らもかっこいいけど……いまいち恋心が女に向いてない気がするんだよね……。お父さん役+彼氏やってくれる人が欲しいんだけど……)
フレッドは生姜焼き定食を注文した。
「かわいい店員さん~俺生姜焼き定食ねー」
勇者ジェムズは、カレーライス。
「勇者カレーライスを注文する! はっはっは!」
「勇者カレーなんて存在しないんですけど……カレーですね!」
「リュディーナはなに頼むの?」
「あ、そうですね…フレッドさんじゃあわたしはオムライスで」
「オムライス追加お願い美人のバイトさん!」
「あ、は、はぁ~い!」
(あの人魔導ビジョンで見たことあるな……?)
と学生バイトが去っていく。
「で、ミハさん例の聖女について、どー思うよ?」
テーブル挟んで会話をするフレッドとミハエル。
「ん~、さゆが調べてるから彼女の感想聞けばいいんじゃな~い? わたしたちがこの喫茶にいるってわたしたちの霊気感知すれば分かるでしょ
悪魔ヴァラクの気を感じるけどすぐ近くにさゆの妖気も感じる。さゆにまかせておけばいいっしょ」
ミハエルがそう答える。フレッドは、
「ヴァラクそいつどんな悪魔だっけ。レメゲトンに載ってたよな!」
そう聞く。ミハエルは、思い出しつつ答える。
「爬虫類大好きな悪魔だよ。ドラゴンナイトっぽい姿で天使然とした姿を好む! 宝箱のありか言ってくれるから崇めてる野郎は多いね」
「お宝レーダーとして崇めてんのね。ヴァラク」
フレッドは豚生姜焼きを食べつつそういった。
「それで代わりに何もってかれるかわかってんのかどうかね」
「魂吸われんでしょ! あいつら悪魔はみんなそうじゃん」
「まあね、3回悪魔にYES言ったら終わり。芸能界担当の悪魔もいたよね27CLUBのロノウェって悪魔」
とミハエルがロノウェについても言及する。
「ああ、楽器演奏上手くしてやる代わりに死後の魂は永遠に俺のものって言ってくる悪魔じゃん。そいつと契約したら27歳で死ぬってあれでしょ!」
「そーそーフレッド。
大体、地上が荒れてきたらそういう大当たり系悪魔と契約するの増えるのよね。
ここでご飯食べてるヴァーレンス王国侯爵を仕留められたら手柄だなーとか」
「えっ……」
それを聞いてマスターがビクッとする
「心配いらないですよマスター。可能性を申し上げたまでで戦場になりそうな雰囲気はない」
「あまり脅かすのはなしにしてくださいよ~」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
そして皆食事が終わり喫茶店から出ていく。ミハエルが全員の分払う。
「つっても自腹じゃないけどね~。オーちゃんからもらった資金」
オーヴァン=フォン=ヴァーレンスからもらった資金がまだまだ余っている。
魔術師と死闘演じた時財布ぶっ飛ばされなくてよかったーと財布を触りながら思うミハエル。
「マスターおみやげみたいなの1つない? 買うよ」
「え、えぇ? バームクーヘンはありますが……」
「じゃあそれ、3こくらい」
そして。喫茶店のドアを開けて外に出た。
「お支払いお疲れ様~息子さん」
「ちょっと前から妖気近づいて入口で何かまごまごしてるなあと思ったら予想通り」
喫茶店の前でミハエルたちを張り付いて監視してたぽい男が、桜雪さゆに首根っこ掴まれて捕まっている。動物の耳がある男だ。ウンサンギガだ。
そしてその光景をドア開けるたびに目の当たりにしたミハエル一行。
ミハエルは、そのウンサンギガに目線を合わせて会話する。
「カイアスの貴族からの密命?」
「…………」
「意地張ってここで死体になるほど恩がある相手?」
「…………ない」
「だろうね。ケチなツナイ男爵だろ?」
「なっ、えっ」
「ここにございますは10万ウサギ。とりあえずこんだけありゃ食べて行けるでしょ。
奴隷解放運動に行くならバームくん、グオリ将軍と連携しな。しかし今言った両名の勢力以外のチームに加わると宣言するならこの10万はあげない。10万で一時でも食べ物とか服とかベッドで眠って金銭的にも少々余裕をもって少し考えろ」
「ミハエル、それは分の悪い賭け……」
サリサがツッコミを入れる。
「分かってるけど、下の意識が変わらないと国って良くならないでしょ。
国あっての民じゃなくて民あっての国なんだから。
だからと言って広域精神操作で世界中の人間をロボトミーして強引に善行やらせたところで、それ世界をわたしが支配って事になるし、そうしたらルシファーよりエゲツないことやっちゃうじゃん。
目覚めているわたしやサリサで大陸よりでかいエネルギー波で一掃するのが早いけど、そんな手段こそ魔王への道だしな。
それにそのくらいのエネルギー波撃てるのかなり多いしな。この星。伊達に築5分駅から5年言われてないわ。
とにかく下のものにも知らんふりじゃなくて、政治的に参加してもらう。これがアホ貴族が幅きかすの止めるのに大事。ま、その種まいたところで芽吹くのは先になりそうだけどね~」
ミハエル自身うまい手が見つからないといった感じでぼやく。
「というわけでアホな貴族に従わないでちゃんとこの国でどう生きるか考えるなら10万ウサギもってって食べ物食べてからじっくり考えな。
今のように男は徴兵に取られて女はかどわかされるのが正しいとは思えんだろ」
「甘い奴だ!」
「よく言われる。ついでにお人好しなアホとも」
「…………!」
ダッダッダッ……さゆにやられたのか右足を引きずりながら去っていった。
「わたしもここで改心させる手は思いつきません……」
水鏡冬華はそう言ってミハエルの手を握る。
「わたしもわからん。わかんないけど、俺は賢いんだぞな顔して甘くない事ばかりしてれば賢いなんて大人ぶった非情なアホな大人の真似できんし。それはアホすぎて」




