グオリが言いたくない秘密兵器
グオリが何か言いにくそうにしている。
「どうした。陸上を走るガレアスなんて出てきたんだ、もっと変なのでもあるのか?」
ミハエルが言う。グオリは言いにくそうにしていたが、意を決して言う。
「それが………転生してきた輩で信じられないやつが……回転F1と名乗っている輩がおり」
「あーあー、流れ分かってきたぞ~~~それ絶対ろくでもない方向だ」
ミハエルがそういって分かったようなふりをする。
「ええ。わたしもこれ言いたくないというか、あの存在を認めたくないのですが、自分自身を車輪に見立てて絶えず回転する男なのです。う〇こ座りで背広姿で。
「つまりわたしや冬華の黒竜閃――夏乱やさゆの桜閃――夏乱と同じ動きを24時間続けるわけだな。吐くわそんなん」
「ええ。アレ時速500km出てるのと思うのですが、そんな勢いで地面と、どたま擦り合ったら自分の頭ハゲると思うのですが、というか脳みそ無事では済まないのと思うのですが、お構いなしに回転しておって、大陸縦断しているので……あっ、あれですあれ、今日はこの時間に大陸のこの地点横断のようですな」
向こうに回転している男がいる、鉄棒なしで前回りしているといえばわかりやすいだろうか。自分を車輪に見立てているようだ。
「うわ。気持ち悪! 仮想空間ですらわたしやかんでF1って感じで他には板前でイタ車とかだったけどあれはやろうとは思えんな~~~」
(やかんで……? イタ車……? ミハエル卿も混沌の神に魅入られているのか?)
グオリのミハエルに対する警戒度が上がった。
「アレいつもこの時間につっ走ってくるの? 背広回転F1」
さゆにグオリは変態について尋ねられ、は、はぁといった感じで答えた。
「はぁ、十二単のおなごよ、時間は大体の中で何通りかあるもようで」
「ちょっと話しかけてくる!」
「は? 話すってあんな高スピードの奴にどうやって!」
グオリの質問を置き去りにしてさゆは背広回転F1に近寄って行った。
「ねーねー、お話ししましょうよ~目回らない? 君さあ。
なんで自分を車輪にしようと思ったのぉ? ねーねー」
うんこ座りの体系で回転しつつ時速500kmで走る背広と十二単がそれに追いつきながら宙をふよんふよん浮いている。これはまさに――
「怪談そのものの光景じゃない? あれ……」
水鏡冬華が指さして半眼でそう指摘する。
誰も彼女の問いに答えるものはいなかった。
「ねーねー、おしゃべりしましょうよー! そんなに地面と頭こすり合わせて毛根惜しくないのぉ!? それともその速さは頭の毛根を犠牲にしてるって条件でその速さ出してるのぉ?」
「…………」
ドドドドドドドドドド――!
「あっ、おばあちゃん! 妖怪ターボババアまで召喚しちゃったよ! すごいねえ背広回転F1男!」
「…………」
どこからか足を異様に回転し時速500kmで走るおばあちゃんまで加わり、混沌の度合いが増す。
グルグル回る背広回転F1男はさゆに一言も応えなかった。妖怪ターボババアも無言なため、妖怪春女だけが1人でわめき続けるという状況が続いた。時速500kmで。
「妖怪飼ってるの? カイアス王国って?」
その百鬼夜行みたいな光景を見ながら、ミハエルが尋ねる。
「いやぁ、そうではないと思いたいですが…………」
真面目なグオリは、唸るようにそう答えた。




