勇者ジェムズ
「勇者ジェムズ様、勇者ジェムズ様! バリーの街付近でミハエルを見かけたというしらせが女とその女の父から報告が入りました!」
「ふっ、まあそうあわてんなって! 俺がここにいるんだぞ!
俺はここにいる!
この勇者ジェムズがここにいるのだ! そして俺がいるこのチームは俺が選んだ最強チーム! 俺がいるこの砦は最強の砦! これを信じないでどうする。最強がいくつ重なっているんだ。不死身の皇帝など恐るるに足らん。兵を率いているわけではないのだろう、兵なしで公爵だけで何ができる」
「や、あの、うちらの中で唯一ヴァーレンスにの化け物どもに対抗できそうな稀代の魔術師が率いる魔導ファランクスがその一人に敗北を喫しているのですが、あの人カイアスでようやく出てきたヴァーレンスに対抗できる怪物だったのに……」
「はっはっは! 聞こえんなぁ! 君たちまずは自分の力を信じ、砦の防御力を信じろ! 城門さえ無事なら平気だ」
「ゆ、勇者ジェムズどの……あのヴァーレンスの奴ら、道具なしに空飛べるんですが……空を魔力の結界で覆うといっても空で通せんぼするには地上で通せんぼより大分しんどいです……」
「…………はっはっはっはっ!」
「…………」
勇者ジェムズの高笑いがその場に響いた。
響いただけだったが。
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ミハエルがうめいた。
「何あれ」
眼前にあるのは、砦がヤドカリみたいに動き回っているという事実だ。
(おっぱいの圧力がすごい)
ミハエルは、腕にくっついて離れない鬼頭千紗に聞いてみる。
「アレ君のとこの名物?」
「知らない! です! あんなヤドカリ!」
「…………まあヤドカリであんなの見たことないわな」
フレッドがのんびりとした口調で言う。
「空も薄ーく結界貼ってあるわね。通せんぼというより検知器扱いだろうけど」
と水鏡冬華が結界を見てそう判断する。
「国がさ」
ミハエルがため息交じりに言う。
「?」
水鏡冬華が言葉を発さずに顔で?を表現している。
「国が傾いたり奴隷解放運動とか南北戦争過渡期にとかなると、まぁエネルギーの切磋琢磨とか暴発で平時では見られない珍しい現象出てくるのよ。目の前のヤドカリもその1つだな。人間もぶっ飛んだ人が露出しやすい。
あのヤドカリも大したからくりだと思うよ。実用性はともかく」
と言いつつ鬼頭千紗を見る。
(左腕からはなれて欲しいな~わたしそっち利き手なんだよ~)
彼からはぶっ飛んだ人ぽくみえるからだ。あの狂った家庭環境でまともでいられるはずがない。
「ふふふっ」
見つめられている千紗は、好きな男が自分を見ている事に気分をよくして頭をぶんぶんこすりつけてミハエルの左腕をがっしり離さないている。
(千紗。手足が伸び切っただけの子どもに見える。体だけ大人でも心はガキ臭いのよ――それで体使ったら男が甘く接してくれるなんてことは覚えてるから子どもの方がましね)
と水鏡冬華はその光景を半眼で見つめている。
「ヤドカリディフェンスすげえぜアレ? そのうち羽生えて飛ぶんじゃねえの」
フレッドがそんなことを言う。
「やめてくれ。言霊で実現しそうだ」
ミハエルが左うっとうしそうに感じながらそうぼやく。
「どーしよっか」
桜雪さゆがのんきに聞いてくる。
「とりあえず一発、いっとく?」
そう言って左手を掲げて(彼女は右利きだ)春雷を撃つ準備をする。
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ヤドカリ――もとい動く砦(さゆの身長30倍分の大きさ)はさゆの春雷一発で粉々に砕け散った。
「あ。砦に動く機能つけたぶん弱くなってたのかな耐久。あ、あそこから中にいた人出てきてる。コントみたい」
「あんたねえ、わたしたちにとってはエネルギー波1発の力押しなんだけど、向こうからしたらそれが命運を分ける致命的な一撃なのよ」
「ぶっぶー」
よくわからない返しを水鏡冬華にする桜雪さゆと、その2人を驚いた視線で見る鬼頭千紗。
「ヴァーレンスの人ってあんなエネルギー波誰もが撃てるんですか?」
「はい」
ミハエルが答える。
「よくこの星壊れないですね……」
「……はい。まあこの星銀河で築5分駅から5年言われてるし」
駅から5年は宇宙トラベルの船が怖がってなかなか火明星に来ない事から言われている。
当たり前と言えば当たり前の感想をもらい、ミハエルははいをくりかえすしかなかった。
「それに暴走起きたら神本人が止めに入るしな。意外とそこはバランス取れてる」




