上空100kmで男同士の意地がぶつかる
なんか落ちている。小説だ。
彼が酷い話と思い買う気すら起こらなかったものだ。
とりあえず主人公が強くて女の形をした喋るダッチワイフが秒で惚れる話を書いたら書籍化作家になったー、真面目に練った話は売れないー。
ダッチワイフしか売れないー真面目な方うれてほしいのにーて、インタビューで正直に吐露していた作家のライトノベルだ。
それが戦場に落ちている。
「さて。君はここで待っていてくれ。わたしが魔導ファランクスどんなものか感触で感じてくる」
ファランクスに真正面から挑む金髪貴族。それを聞いてはぁ~とため息をつく水鏡冬華。
「ため息つくと幸せ逃げるって母さん言ってたぞ」
「闇霎様が? そんなひ弱な幸せいらないって次ぎ会った時言うわ」
「うわー……母さんが続いて言った言葉と同じ」
と彼は呟いてから、
「もしも、わたしが倒れたならば、きみが進め。今日も明日も幽霊になって呼ばれたら君の元に来てやる」
「……ばか。幽霊じゃ抱きしめた時体温ないでしょ」
ミハエルは両刃の剣を抜き左手に剣を持ちファランクス隊の真正面にゆっくり歩いて出た。
そして構える。利き足の左足を前に、剣を持っている左手をなるべく力抜いて、腰を落とし、動き重視の構えだ。
ファランクスも構える。ミハエルを串刺しにせんという構えだ。
ミハエルが先に動く。相手の行動を待ちはしない。ファランクスの横にまわる。
だが相手もよく訓練されている。すぐに向きをなおした。
「黒竜閃――夏乱!」
彼は自分を車輪のようにして剣を持ちながらグルグル回転し、槍の隙間をねって接近しようという作戦に見えた。
「中止――冬花」
こちらの剣とあちらの槍が接触した時点で夏乱の動きを止め、地面を蹴ってファランクスの真上にわざと飛ぶ。そうして槍の切っ先を一カ所――自分に集めて冬花の冷気の霊気の動きに強制的に入る。冷気を纏いばらまく冷気の霊気で相手の行動を遅らせつつの回し斬りである。
相手は槍が密集した時に凍結されて槍が使い物にならなくなっている。
「どこまで無視できるか……」
一瞬でも遅いほうが死ぬ。
こちらのペースにはめる。それが大事。それには相手の策略をどこまで無視できるかの丹力がものを言った。
「黒竜閃――秋炎!」
近づいてきた騎馬を炎を纏う乱切りで近寄らないようにさせる。運よく近くの小屋に炎が燃え移った。食料とか入ってる所なら相手の食料にダメージが入る。良い流れだ。
「奥義――辰昇り」
滑るようにファランクスの中央へ移動し魔導士っぽい奴をくし差しにし、串刺しの状態のまま、そのまま天へ飛びあがる。
0.1秒以内に100kmの高さまで飛びあがる。
相手の強さに敬意を払い、100kmの高さでミハエルは喋る。
上空100kmでゆっくり落ちながら男同士の意地がぶつかる。
「さすがだ。気絶すらしていない。そしてこちらの手を抑えて振り切らせなかったな! 胸に空いた大穴を広げないために。貴様、対遠距離の防衛役じゃあないな。お前がリーダーだ。目の光が違う」
吐息がかかるくらい敵とミハエルが顔を合わせて互いが互いの息を感じつつ喋る。
殺し合っている相手とミハエルのおでこ同士がくっつく。鼻先もくっついて2人睨み合っている。
それくらい近い。
相手の顔は凄まじいモノである。くし刺しな上に敵国認定している国の公爵が目の前にいるのだから。
「ミハエル=シュピーゲル! わざわざここまでくるとは! 全面戦争か!?」
「残念ながら、ただの物見遊山だ」
「ふっ! 戯言を!」
ミハエルは奇声を上げながら左手で腰の小太刀を抜いて左逆袈裟斬りに相手を切る。
「オアアァァァァアアッ!」
「ぐっぐぅぅぅぅぅ」
ミハエルは左手の小太刀を腰に収め、そして串刺しの剣を抜く。相手は苦悶の声を上げる。
「イヤァァァァァァァァァ!」
相手は血まみれの形相で、串刺しにされた部分と左逆袈裟で切られた部分から血がとめどなく溢れ、ミハエルを睨みつけ奇声を上げる魔導士、血は限界以上に失っているのにも関わらす気力は十分なようで、自分の周りに何やら光り輝く板を呼び出したかと思えばその板が細かく破れ、それが羽根となって魔導士の周りを包む。
そして無数に散らばった羽根からレーザーが出てミハエルを滅多打ちにする。
「ぐはっ! これは富士山太郎坊、天火明命の天狗の法! 山神楽! 星踊り! 全方位攻撃!
おいおい! 星踊りって全方位攻撃は天狗――天照の狗や天照の専売特許だせ!? ぐほぉ!」
「人間、努力すれば、そこまで……行けるのさ! ゲボッ! 宇宙だって……今は鳥や、天狗、鳥神だけの世界じゃ、ない……」
魔導士は血を吐きながら自慢げにそう言った。
バシュン! バシュン! バシュン!
「ぐふっ、ぐぅ……」
ミハエルは360度全方位からビームで滅多撃ちにされてゆく。だが彼の霊気を貫通まではできてない。彼は貫通で穴だらけ、という状態にはなっていない。
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そのころ冬華は。
「空から血の雨が…………、こっちは知らない人、こっちはミハエルさんの血……相当手ごわいわね。これは、でも霊気を探ってみてもミハエルさん急激に弱ってる感じはしないから大丈夫だと思うけど、けど……はぁ、心配かけないでよ……」
そのころ桜雪さゆ(アイスクリーム買って食べ中)は。
「知らない人とミハエルさんの血が空から落ちてる……すごい光景ね。
半竜何やってんのよ、お婿さんをあんな目に遭わせて……わたしが、ちょっかい出しに行かないといけない?」
そのころサリサは(ウンサンギガ(獣人)の奴隷を開放中)。
「空から血の雨が…………あそこ空高く! 高くでミハエルが戦ってる! ミハエルが優勢? 割って入る程じゃあないみたいだけどカイアスの奴もとんでもないのいるみたいね…………ミハエルに取り返しのつかない怪我負わせたら、国ごとぶっ壊してやる……」
そのころフレッドは(近くの酒場で情報収集中)。
「おいおいミハさん苦戦してんじゃねえの。なんだよあの花火は? 命が飛んでるって花火に見えるんだけど?
カイアスの奴らやるねえ。距離的にちょい加勢すんの厳しいし、友を信じますか。冬華ちゃんもいるはずだしな」
そのころマリナ&ティムは。ミハエル組の事は何一つ感知できていなかった。
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ミハエルは天照が得意な技をカイアスの普通の魔術師が使ってきたことに驚きを隠せず、その表情のまま血まみれの相手の顔を信じられないという面持ちで見つめる。だが、これは聞いておこうと思い立ち、
「名を、聞いておこう――貴様ほどの目の輝き、名無しで覚えたまま死出の旅路を見送るのも惜しい。
呪禁――滅功念鎖陣」
「名、名か……ゴボッ!! ゲエッ!! グォォ! 名よりも、俺の技を覚えていってくれ! そして貴様も――!
鳴かぬ蛍が身を焦がす!」
天狗の翼がミハエルを囲み、また全方位からハチの巣にすべく光線を出す。
「最後のが君の技名か…………呪禁は溶けんよ」
滅功念鎖陣のいろはにほへとの一文字ずつが、鎖状になりミハエルをドームで包んで守っている。神の防御方法と全く同じである。魔法ごときでは――
ドシュン――
ドシュン――
ドシュン――
ドシュン――
「呪禁に穴が開いてる……滅功念鎖陣に………死に瀕した際の念の強さは凄まじく強いな…………」
ミハエルは死人の念の強さに目を見開きながら、霊波動で自分を包み込みさらなる防御を纏った。
「さらばだ。黒竜光波!」
ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!
とんでもない大きさの霊波動の大砲が魔導士を包み込み、地表の森を根こそぎえぐりながら地図を変えるんじゃないのかという勢いで地上を走る巨大な列車のように暴れてゆく。黒竜光波で3000m級の山もえぐられ山が崩れて平地に変わる……。
「惜しい男だった……、ペッ、んん血が。
さすがに、ちょい予想外だったな……。
そのままファランクスに黒竜光波撃ってもあの魔導士に防がれてたな……」
自分の黒竜光波で3000m級の山が平地に変わったのを見てもミハエルはその感想を変えなかった。そしてミハエルは霊波動で空から飛んでセーラー服の黒髪の女が待っている地上へ戻った。




