銃も弓矢も跳ね返す魔導ファランクス
「そろそろ降りよう。カイアスの魔導士に見つかるかも。銃も弓矢も跳ね返す魔導ファランクス、この目で確かめてみようではないか」
「はい――んっ」
ミハエルと水鏡冬華はジャコモ砦のすぐ近くに上空から降りる。水鏡冬華は降りる時にスカートめくれないよう手で抑えている。
それは置いておいてファランクス。弓矢やスナイパーに弱いとされる陣形だが、逆に言えばそれを克服できれば強いわけで。
生憎、火明星には魔法や霊波動での飛び道具の特殊防御の種類が多い。
まず矢返し――これは矢を撃った人にお返しする魔法である。
スナイパーは自分の頭蓋骨がスナイパーライフルの銃弾より硬くないとやってられない。
そして霊波動での防御。霊力かそれ相当の超常現象が籠っていないと霊波動の幕を突破できない。槍なら念を込めた槍をずっと持っていれば良い。
さらに呪禁による防御。使い手は星全体を見ても少ない呪禁だが、これは物理に対する完全無敵みたいなものである。神のみ技そのもの。
呪禁は、原理からして、術の名称、術式や動作に決まったものはなく、言葉も動作も発生する前、つまり心の中で思った時点(または”思った瞬間を起点として時間を巻き戻って発動”する逆因果の性質を持つ)で発動する術である。
呪禁は物理法則を完全に超えた術、
(神が扱う術だから当然だが)
であるため、まっとうで高尚な念やとてつもない怨念で貫く場合を除いて、
{呪禁師には念を込めにくい物理攻撃は効かない}
呪禁師は、「気、霊気、妖気や魔力などを伴わない」物理現象に対しては完全に無敵である。
歴史上、原爆の爆発にさらされてなお無傷だった人の種明かしはこれである。
と、弓や銃弾にとってはかなり条件の悪い星なので、あまりそっち方面の発展はしていない。
銃なんか暴発して自分の手ごと指ごと爆発するようなものは危ない、自分の気を固めてエネルギー波撃つのが早い。
というこの星の考え方の事情もある。
これならリバースミサイルの魔法使いと魔力と気の勝負をして魔力と気どっちか高かった方が我を通せると大変わかりやすい。
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軍事国家カイアスはファランクスを採用している。
魔法使いも多いので飛び道具から守る防御魔法使いも確保しやすいからだ。
そして何より。
星を1発で消しとばすポテンシャルを持った者(ミハエル周辺や神本人含む)、化け物がヴァーレンスによく分布が偏っているため、カイアスでは民の平均レベルでどうにかやっていける戦術が好まれた。
馬は鞍と鐙、騎馬民族でなくても馬を扱えるようにするこの2つは必須だ。なければ馬乗ってる際にお尻が痛すぎる。
尻が死ぬ。あと内ももも。道具なしで乗馬すると。
鞍と鐙は大発明と言ってよい。誰もが騎馬民族のように馬を乗りこなせはしないのだから。
鞍と鐙なしで馬上剣術とか馬上スナイプとかちょ~あぶない。踏ん張り効かないから。あと馬から振り落とされないようにしてる際に内腿も死ぬ。
チャリオットじゃなくても機動戦ができる。
鞍と鐙が騎馬民族単独有利を覆したといっても過言ではない。別に戦争でなくても、馬は魔法のある世界でだって有効に作用している。
飛行魔法、瞬間移動魔法、霊波動、狗法(天狗の術)といった特殊技能がない人々でも長距離移動できるという事は巨大な文明が発展されられるという事だ。
人類の歴史は移動手段と共に発展した、と言って過言ではない。
そして個人が道具もなしに空を飛ぶ手段が結構発達しているとはいえ、一般市民にまで浸透というわけでもないため、やはり大発明である。
ただ、カイアスの鐙は少々特殊である。足を置く部分に天津日高日子波限建鵜草葺不合命《あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと》の顔を掘ってヴァーレンス王国に敵対心を燃やしている。
これは並々ならぬ闘争本能である。カイアスはこの面を見てもとんでもない戦闘民族である。相手の敬愛するものを踏んで戦え! という事なのだから。
ファランクスの話に戻ると、特にヴァーレンスでは1人で特大の力を持っている化け物が多いため、それに対抗するには、個人個人でなく全体で1つの生き物となる事が重要視された、
個人の突出した強さはむしろ邪魔と思う統率者もいる程だ。
装備すら均一で個性は許さない。
もしカイアスに騎馬兵全員分の鞍と鐙が用意できないと仮定した場合どれだけ有利でも、劣等民を一人前に引き上げられる程の効果があっても、鞍と鐙は採用されなかったであろう。
不思議と軍という集団でそのグループ内で下の平均に合わせて集団行動した方が強くなる。突出してつよい人に合わせるよりも。
軍は集団というより固めた個々だ、という考えからきている。
統一規格、というものだ。
しかし、これは"英雄が必要ない"という考えかたである。だから、気に入らない人はすごく気に入らない。
ヴァーレンス王国のミハエルやフレッドみたいな、軍で
「アッチャラアッパアーで個人で引っ掻き回した後で運の神様にもっと常識ぶっ壊してもらおうぜ~ひっかきひっかき、命のやり取り程ぐちゃぐちゃでセオリーなんか通じない運の神様の言う通り」
という軍師関係者の方が稀である。
カイアス王国が掲げてる"英雄は必要ない"は、バレーの試合みたいなものである。
ヴァーレンス王国に多い個性を生かして計算グルグル狂わせようぜ~! とは全然違う。
バレーで超強いワンマンチームは凡才6人チームに意外と負けてる。
まあ、一言でいえば、ヴァーレンス王国とカイアス王国は文化が違う!




