夢から醒めるのか、新しき誰かの夢へ向かうのか
「夢から醒めるのか、新しき誰かの夢へ向かうのか」
そんなことを口に出して呟く。聞いているのは水鏡冬華だけだ。彼女は首をかしげている。言葉で聞くほどではないと思っているのだろう。
胸の内の優しいうねりを感じているとどっちかわからなくなる。
冬華の女としての言葉サリサの言葉では伝えない気持ち。どちらもミハエルの心の海に波を立たせるには十分だった。
(しかし、あのケーキ屋のねーちゃんわたしたちの事ずっと見てたな。まぁ女にとってはめっちゃ見たいものかもしれんが――女の告白というものは。
こっちがケーキ買うためにケーキ屋に近づいたら肩ビクーッしてたし。何見てんだよとか言われるのかと思ったんだろうなぁ。
あと、あのケーキ屋爆発すごい近くで起きてたが閉める気配なかったな。内戦状態なのかあの覗き魔ケーキ屋さんが度胸据わりすぎてるのか)
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あれからやはりケーキを買い冬華と2人でケーキをほおばりつつ港町スパロウを後にしたミハエル。
ケーキをほおばりながら霊波動で飛んできたのでもうカイアス王都近くの砦地帯のに南の方ジャコモだ。
上から見下ろした景色に奴隷が調教されていたり奴隷の反乱らしき光景が見えたが、スルーする。
「あれはマリモ……じゃなかったマリナが介入すべき事案だな」
「マリモは地球の北海道よ……奴隷問題に怒ってましたもんねえ彼女」
「そーでした」
彼のほぼ一人事にケーキを食べている冬華が答えてくる
(目の前にある事への対処が必要な時もあるが、これは制度そのもの――そして奴隷の精神の改善が必要だからな)
奴隷じゃないよ。自分の生き方を見つけなさい。
と言っても人の手で保護した元野生動物の鹿を腹減ったライオンがうろうろしている草原へ放り出していいことしたと、
(いやあ、自分っていいことしまくりだなあ)
手を差し伸べたつもりの手前勝手な気分で放置して逃げるような物である。その自分の後ろで自分が置いてきぼりにした鹿がライオンにボリボリ食べられているというのに。背中を向けてみずに、自己満足に浸るアホ。
ましてや、
(誰かの下で余計な事考えず保護されてテキトーにやっていきたい)
こう考える人は意外と世の中に多い。
親がいる時の子どものように。
そういう人種は奴隷という身分がなくなったら困るのだ。毎日生きるために余計なことを考えなければいけない。
奴隷からバズーカ持った武装盗賊なんて変わり身もめずらしくない。
単純に考えて持ってる奴から奪えば食い扶持は稼げる。田畑を自分で整えなくでも他の人が採ったのを、
「うひょ~イモだぁ~、いえ~いニンジンだぁ~、うひゃ~水だぁ~」
ですむ。いるのは野菜を精魂こめて作った正直な野郎を脅す髪型、防具、武器くらいである。奴隷なら、
(わたし奴隷なんです~)
のかわいそう印象が自動的にオプションでつく。お得だ。弱者ムーブでやっていける。
「最終的には奴隷の身分脱却すべきなのはわたしもそう思うよ。
他の星では奴隷の事"派遣"ていうらしいし。
でも人間の精神が問題解決に深く関わっている問題だ。
急いでいい事は何もない。
せいぜい鞭打ちはやめときな~
職場改善しな~
くらいでしょ今止めるべきことと言えば。
大体、考えように寄っちゃメイドも高級奴隷じゃないの? メイドが自立したらわたし一人で屋敷の掃除無理だよ、何部屋あるのよ~。
奴隷の問題は深いって事、ティムくんやエリナ嬢は気づくかな?」
「どうでしょう。その場で人助けしたーで、感動ポルノで感動、満足して帰るんじゃないかしら?」
冬華があまり精神の成長は期待していない口調でそういう。
「目に見えるものばかり、おっていたらそうなるか。『目に見えない所に鍵』はあるのに」
ミハエルが呟く。
「それに気づくには年齢が、足りない、かな~。わたしもそのくらいはがむしゃらに一日中日本刀振り回す日々だったし」
と、冬華。
「がむしん?」
とミハエルが聞く。冬華は新選組の中で明治に一番話した男を思い出した。
「それ永倉さんですよ~、ふふふっ」




