闇霎に抗議する水鏡冬華
「闇霎様。あなたを恨みます」
水鏡冬華は雲の上に来ていた。神に会うために。
水鏡冬華の前にいるのは闇霎。黒竜神である。今は人間変身しているが。
おまじないの神様である、呪禁道の第一の使い手である。
水鏡冬華もミハエルも彼女から呪禁を学んだ。
「何。いきなりこわい。自分の瓜二つの子に言われるとこわいわね~」
「あなたが縁を結ぶおまじないを強く自分の息子に唱えたから、あなたの息子女まみれになってますよ。わたしだけ縁結びすればいいのに」
「目ぇ据わってる、目ぇ据わってる」
闇霎が自分の巫女に恐れをなしてちょい背中をエビみたいに反らす。
「だってぇ~~~~。仕方ないでしょ。うちの子孤独癖つよいもん。あのまま放って置いたら一生独身貴族よ。母としてそれは回避したいのよ。
母としては、わたしの大事の息子が恋愛でアップアップ溺れている所を雲の上から観察したいのよ」
「それは、わからないでもないですが」
「でしょー」
「でしょーじゃないです闇霎様! あなたのおかげであなたの息子の嫁の数10人超えましたよ! このままだと20人いくんじゃないですか!?」
「あら、大変ね」
「たいへんね、じゃなぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁい! わかってるんですか! あなたのおまじないでこうなってるんですよ!」
水鏡冬華は自分の上司の黒竜神に怒る。自分とドッペルゲンガーかと思うくらいに似た黒竜神に怒る。
「ちなみにわたしの大事の息子にストッキング好きの特徴つけさせたのわたし。
人間として死ぬ前にわたしの大事の息子とデートしたとき――確かあの子が13歳の時ね、親じゃなくて恋人と出かけるファッションでわたしの大事の息子ならパンツ見られてもいいわって思ってパンツ見えるくらいのミニスカでチョコレート色のストッキング履いて張り切ってわたしの大事の息子とのデートに臨んで、わたしの大事の息子にストッキング好きの特徴つけさせたの。
わたしの大事の息子はわたしのストッキング越しのパンツで性癖獲得したのよ。
征服感が最高だったわ。わたしがパンストと下着を見せる事で、わたしの大事の息子の精神をこうも征服する事ができる。
わたしの大事の息子の性癖をわたしが操作してる事のね」
人間として下界に降りていた時も、それができるくらいの不老、息子と並んでも『兄弟?』といわれるくらいの不老の超美人だった闇霎。そしてその闇霎に瓜二つな水鏡冬華も言わずもがなである。
「だからなんじゃっちゅうううううぅぅぅぅぅぅぅううんじゃあぁぁぁぁぁああああぁぁああ!」
両手をわなわなさせて水鏡冬華は自分と瓜二つの黒竜神に叫ぶ。めちゃくちゃに。
「なんじゃっちゅうんじゃあって、あなたも恩恵にあずかってるじゃない。
あなたもセーラー服+パンストでわたしの大事の息子にエロエロで迫ってるくせに。わたしの大事の息子にパンスト足でカニばさみして、首に両手まわして迫ってるのちゃんと雲の上から見――――」
気楽に、闇霎は言ってのける。
「あーーーー! ああーー! あああーーーーーーー! ああああーーーーーー!」
顔真っ赤な水鏡冬華は恥ずかしさのあまり言葉すら忘れて、あの行の一番最初の言葉を連呼する事で恥ずかしい事を言っている自分の上司の竜神の言葉をかき消そうとした。
「…………」
けーらけらけら、というような顔でニヤついている男が一人。天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊《あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと》がニヤついた顔で闇霎と水鏡冬華のやり取りを見ていた。
「父上。笑いすぎ」
と注意したのは天津日高日子波限建鵜草葺不合命《あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと》だ。そういっているウガヤすらぶふーっ! と噴き出すのをがまんできていない。
「ウガヤ。笑いすぎなのはあなたも同じですよ」
ぷーくっくっく! と笑いを我慢できていない水色の十二単を着た女が注意する。瀬織津姫だ。