彼らの野生は冗談抜きで見習わないといけない
ぎゅうううううううううううううううううううううううううううっ!
「いたい! いてえってば! やめてぇぇぇぇぇぇん! ちょっつよすぎ! いてええええええ! 手がおれるぅぅぅぅぅぅぅっぅっぅぅぅぃてええんん!」
ガングロがぴょんぴょん飛び回りながら痛がるが、ミハエルが手を離さないから痛みはやまない。
「おい、おめえ! 育ち良さそうなツラして気に食わねえと思ったら、何してんだこの野郎!」
「えっ、すいません! じゃあ、お返ししますね!」
ミハエルは、手を離し、ジャイアントスイングの要領でガングロの足を掴み他のガングロをなぎ倒してゆく。
フレッドがバックドロップで自分より背が10cm以上高い筋肉ガングロを川に放り投げているのが見えた。
「お前らみたいなうぇーい! は文明人の手法じゃ通じないだろ?
よりけだものっぽく野生動物みたいにどっちが上がでしか判断しないからな。だからそれに合わせた」
ミハエルは軽蔑したまなざしでガングロを見る。
「ふっざけんな! こいつっ…………!」
「おい、もうこいつやっちまおうぜ! 包丁包丁! 女は後で食べるわ!」
「冗談ですむのは刃物を抜くまで!
刃物構えたら殺すぞ! クロード、キミの剣貸して! わたしの今日持ってきたの安物だから教会で折れたわ!」
「は、はい団長!」
パシッ!
ミハエルが投げられた剣の方すら見ずに剣を受け取る。そして剣を抜く。
ジャリリリリン。
鞘と剣がこすれ合う音が聞こえる。
「お、おい。団長って…………」
「教会で折れたって何やってきたんだこいつ…………!」
「ああ…………もしかして、不死身の皇帝……」
ガングロたちがミハエルの顔を見て、ぎょっとした顔つきになる。
「いや~、釣った魚さばこうと思ってたんですよね。人に向けるなんてとんでもない!」
ガングロが急に愛想笑いを始める。
「あ。そ。なら君たちを切り捨てる理由はない」
ジャリリリリン。
ともう一度剣を鞘に収める。
何やらガングロ4人が顔を突き合わせてごにょごにょ話している。
「君たちが強引に女に迫っているって苦情出てんのよ~~。
やるんならもうちょいスマートに口説きな。女が本人の意思で同意してるのならわたしも何も言わないから。
貴族のウサギ狩りとは違うのよ~人間の女口説くのは。じゃあね」
「はい~~~~オタッシャデー」
ガングロ4人は命の確保については賢かった。野生の判断、というやつである。
「彼らの野生は冗談抜きで見習わないといけない」
アリウス、酒本薫子たちの所に戻ったミハエルがそう口を開く。
「ぎりぎりここまでは渡れるだろう、という所は見極めてますからね。あいつら見てると」
クロード=ガンヴァレンが鋭い目つきでいう。
「ああ。引くべきところは引く。そういう判断の良さは学校で勉強してる頭でっかちより賢いよ。ああいうの。
何せ毎日命かけてるって認識強い分賢いからね。野生的な面で。
社会という檻の中の小鳥じゃあ、向こうが悪で他方が正義だったとしてもガングロ4人にかなわないのは当然と言える。そして薄い本へ……」
ミハエルがガングロ4人をある意味褒めた。