ゴエティアがサタンという名の神を気取ったAIパソコンの操作説明書
「運命絶対神プランはサタンのプランだよ
ゴエティアがサタンという名の神を気取ったAIパソコンの操作説明書」
「あの、ミハエルさん」
天馬蒼依がおずおずと手を上げながら口を挟む。
「どしたん? トイレ?」
「いや、違くって……! トイレ言われると、ちょっと行きたい気はするけど……。新約と旧約の神の違いって何ですか?」
「ああ、わからない人のために説明しておくか。
旧約→自然災害を起こす自然の擬人化と思われがちだが、気象改変兵器を使うものを仮に神と呼んだものだ。多神教から一神教に変化した洪水と牛の神がベース。
新訳→旧約の神にエジプト、バビロン補囚から太陽信仰の影響を受け性格が丸くなる。DV親父がやさしいパパになった感じだな」
「ふ~ん。なんかイメージ良くない。好きくないですね~、そんなDVオヤジ。それ、愛情とは違くないですか? 好きくない~~!」
天馬蒼依が足でトントン、トントンとリズムを刻みながら言う。
「まあ日本の神に比べるとね~。多神教はやさしい神多いから。八百万の神々。
太陽信仰→太陽の光は全てにそそぐため平等、正義を意味し病気回復祈願の対象に。
あと地球では、エジプトのラー、アッカドのシャマシュ(ウトゥ)、ゾロアスター、ギリシアのアポロンとプロメテウスの神話などが太陽神か。
叙事詩のウトゥは英雄を助ける慈悲深い神として伝わっている。
ギリシャは分類分けが好きでアポロン→太陽と医療、プロメテウス→火と自己犠牲精神になった。
厳しく災害を起こす旧約神より人に親身な太陽神にすがりたいっていうのが人間心理じゃない?」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(あーもう、うっせーなーよくわかんねえ神話とかききたくねーっつーの。
ミハエル。不死身の皇帝と言われる人物。
俺は運命絶対神プランで生まれ変わるんだ! ミハエルよりモッテモテになる! 女ども! 俺の運命神プランに選ばれた遺伝子拝めばくれてやるぜ!!
俺が勇者となる! 神となる!)
そそくさと足を滑らせて、男が聖堂の奥に進む。
「グリンくん。あとつけて」
水鏡冬華が指示を出す。
「はい。以前ルシファーに憑りつかれていた自分の経験からして、運命絶対神プランって相当危ないですよ、自分の性格も改変されてゆく……」
汗を1粒たらして、グリンが忍び足で男を尾行してゆく。
聖堂の奥の部屋のAI――コンピューターのサーバに見える――を触るガラル=エン=ペイン。
触れた途端。
「あなたは勇者の素質があります。今からわたしがあなたの素質を目覚めさせましょう! あなたは今日から勇者です! 祝福をお受け取りください!」
「いっやったーーーーー!」
子どもみたいにはしゃぐガラル。
ガラルの体が黄金に輝く。
「これがおれ! 金色に輝くこれがおれ! これでミハエルなんかより強くなったぜーーーー女入れ食いだーーーー!」
欲望が駄々洩れなガラルだった。
「今の人生に絶望してる奴! 俺が、勇者の俺がレールを引いて安全な人生を保証してやるから心配すんなよ。
レールしかれた方が生きるの楽だろ!?
かわいい女の子は俺の、勇者の恋人って就職先用意してやるよ! 俺の遺伝子毎日くれてやるからなぁ!」
「これはまずいな…………早く水鏡さんに伝えないと」
グリンが急いで聖堂に戻る。
アリウスがグリンに話しかけた。
「あの部屋に張り付けたウィザードアイで一部始終見てた。証拠映像も魔術でとったからあいつはもう倒しちゃおっか」
「は、はいアリウスさん。でも僕ではあれは敵わない……」
「ひとりじゃなく、みんなでかかればいいよ。僕ら全員いるんだし」
「そ、そうですね」
と、その時――――
ブワァァァァァッ!!!
攻撃性のあるオーラが奥の部屋から聖堂にまで襲い掛かってきた!
さすがに皆慌てる。
「あいつ! 自分のオーラの制御の仕方もわかんないの!?」
サリサが呆れたようにわめく。そして襲い掛かってきた黄金のオーラを霊気を纏った手でかき消す。
「ちっ、これじゃあ赤ちゃんに危険なおもちゃ渡したようなものじゃない!!」
フィオラが舌打ちしてうめく。そして彼女もサリサと同様に襲い掛かってきた黄金のオーラを霊気を纏った手としっぽでかき消す。
「きゃあああああああああ!」
悲鳴が上がる。薫子の悲鳴だ。
「いたい…………いたいよぉ!」
薫子に黄金のオーラがまとわりついた後、薫子の右腕が血に染まる。
右腕が動かないようだ。
それを見て、ミハエルの目つきが一気に変わった。怒りが支配する。