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太陽よ、ムーンショットを止めろ!  作者: 白い月
デュポンに救世主を気取る悪魔が降り立った
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わたしが見てるのはあなた個人の物語なのに!

 お昼が過ぎた時間に食堂に着いた。

「今なら混んでなさそうだな」

 ミハエルは、何度も寄った事のある父娘+アルファで経営している食堂へ立ち寄った。

 が、くぐってミハエル一行が席に着いた瞬間――

「わかんないよ! あなたの言ってる事全くわかんないよ! 闇と光が合わさったから何になるの!? 明るいだけじゃん! 聖書とか日本神話とかメソポタミアのギルガメシュ叙事詩ってなに!? わからないよ! ガラルくん!」

 いきなり女の鳴き声が食堂に響く。

 不死男と呼ばれた黒髪の男が口を開く。

「それは、もとからある伝説だから。神話の本見て勉強すればいいよ。アマリア。

 この前ヴァーレンスに降り立った巨人だって、あれフラガラッハとガエ・アッサル使ってたんだぜ!

 アリウスさんも魔光剣で、神話級の武器2つも撃ち落としてさ。

 天津日高日子波限建鵜草葺不合命《あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと》まで出て来てさ!

 ソシャゲのSSRでしか見たことないっつのウガヤ様。

 ウガヤさま八握剣まで使ってさ。フラガラッハvs八握剣だぜ! すげぇよなぁ!

 あの魔封剣て技、神話級の武器すら、フラガラッハ、魔剣アンサラーですらかなわないんだぜ! しびれるぅ~。

 心躍るよなぁ男なら神話を目の前にすれば!

 俺もあそこに肩を並べたいぜ。でも平和なんだよな~冒険者ギルドもいつ行っても下水道掃除しかねえしさ。王が直接出してるから報酬良いけど。

 いきなり光の騎士ルー=ラワダ倒せって言われても、俺には無理だから、もっとRPGのように順序良く成長できるボスが出てきて欲しいな~。

 俺は、この村の教会で行われる運命絶対神プランで良い祝福もらって強くなるぞ~!」

「おい、アリウス、言われてるぞ。そして運命絶対神プランてなんだ」

 ミハエルが小声で言う。

「恥ずかしいよ、やめてよもう!」

 アリウスは頬を赤く染めながら縮こまる。もちろんケンカカップルの男の方に見つからないようにだ。

「男ならドキドキしても無理ねえんだが、そうか女からするとこんな反応するのね……」

 フレッドがのんきな態度でそう反応する。

 アマリアと呼ばれた金髪の女が反論する。

「だから何! わたし女なんだけど! そんな伝説たどって何が楽しいの? わたしが見てるのはあなた個人の物語なのに! そんな知らない伝説聞かされたってわかんないよ! あなた個人の伝説しか分かんないよ! あなたの事しか知りたくないのに!」

「あの、アマリアちゃん。今は他のテーブルにもお客様がいるし……ちょっと落ち着こう、ね?」

薫子かおるこちゃんはあっち行ってて! これは ガラルくんとあたしの問題だから!」

 そう言われて薫子かおること呼ばれた女の子はおずおずと引き下がる。

 向こうのテーブルで食事が来たというのにケンカ勃発で食事が放っておかれている現場を見てしまったミハエル達。

「なんだ? まずい時に来ちゃった? ご、ご飯の味分からなくなりそうな剣幕で怒ってるんだけど。

 向こうのテーブルでケンカ勃発してるんですが?」

 ミハエルが切羽詰まった女の子の叫び(というか音のイントネーションを考えたら悲鳴か)に怯える。

「いやぁすみませんねえミハエル公爵。あのカップルなんか会わないのに付き合ってるっぽくて」

「えぇ……」

 彼女の悲鳴(というか怒声)の迫力に気圧されているミハエル。

「す、すみません。あの子、わたしの友達なんです……。前から相談受けてて……彼氏の言ってることが分からないの、わたしどうすればいい? って」

 と薫子かおるこがミハエルの手に自分の手を重ねる。

 ミハエルはさりげなく手を移動させるが、薫子かおるこの手はそれを追いかけてミハエルの手を握る。

「そうなんだ酒本さかもと薫子かおるこさん」

 ミハエルがミハエルに惚れている黒髪のポニーテールの店主の娘を名前をフルネームで呼ぶ。ミハエルもアマリアの剣幕におされている。

(だって、わたしも中二病かと言われたら、はい! っていっちゃいそうなタイプだもん)

 胸の内でそう呟く。

「適当に話し合わせておけばいいわよ! 男の子はそういうの好きなんだから。って言ったんですが、思ったより重症みたいね……」

「少女に公衆の面前で涙ながらに叫ぶ。

 こんな思いをさせる。それだけの業、重ねてきたのは誰だ。

 わたしも持っている、中二病か…………。

 でもわたし、神話とか呼んで古代の神の性格的難儀な部分を把握してヴァーレンスの防衛に役立ててるつもりなんだけどな~。

 光の騎士ルー=ラワダだってこの前ヴァーレンスに侵略しに来てたし……古代の神って侵略好きなのよね……遊牧民族だからかな? 遊牧民族歴史的に見ても侵略してるから。逆に農耕民族はそうでもない。

 ケルトも土地にこだわらない民族だったし。天火明命あめのほあかりどのは全然違うが。

 でも争いはしないけど嫁は13人まで増やしたな大国主ってあだ名の時に……天火明命あめのほあかりどの。

 『私の愛しい大国主よ。あなたはハンサムな男だから、若草のようにあちこちに若く美しい妻をお持ちです。

 でも私は女ですから、あなたのほかに夫はいないの。

 どうかあなたの手で、私の白い腕をそっと触ってください。そして手を握って下さい。わたしのお酒をお召し上がり下さい』

 と歌が残っているし。男の性質だって神話勉強すれば分かるんだよ。天照でさえ嫁13人でこんな歌読まれるくらいにヤリチンだったのだから」

 ミハエルがうめく。

「いや、わたしは理解できるから。深刻に考えなくてもいいわ。ミハエル」

 水鏡冬華がささやくようにミハエルに言う。

「言ってみれば、わたしやあなたには日本神話の血が流れているから。竜神闇霎(くらおかみ)の血が流れているのよ。お互いに」

 そして薫子かおるこの手をどかし、自分の手をミハエルの手に重ねる水鏡冬華。

「わたしが理解してあげるから……ね」

 そう色めかしく囁き、体重をミハエルに預けてくる、絶世の美女水鏡冬華。彼女の大きなおっぱいがミハエルの腕に当たる。

「はい…………」

 その雰囲気に気圧され、ただ相槌を打つ。

「あの……ご飯食べたいんだけど……」

「腕もう一本あるでしょ。なんならわたしも腕フリーな方で食べさせてあげるから」

「離してくれないのね……」

 ミハエルは泣く泣くもう片方で食事をとった。

「そういえば」

 とミハエルが食事をとりながら酒本さかもと薫子かおるこに聞く。

「は、はい! なんでしょうかミハエルさん!」

 顔を真っ赤にして酒本さかもと薫子かおるこがミハエルを見る。彼女の瞳孔は、ミハエルを見る時だけ開いている。つまり、酒本さかもと薫子かおるこはミハエルに対し恋の蛍である。

「あのね、わたしたち今回このデュポンの街に運命絶対神プランてのがなんなのか探りに来たんだけど、薫子かおるこちゃん知らない?」

「あ。知ってますよ。今日行こうかなって思ってたところなんです、わたし。案内しましょうか?」

「頼める? ありがとう! 料理もうまいし君にはお世話になりっぱなしだねえ」

 ミハエルが感謝を述べる。

「いえ、そんなぁ…………」

 と太ももをもじもじさせる薫子かおるこ

薫子かおるこちゃん、運命絶対神プランで何しに行くの? そんな叶えたいことあんの?」

「は、はい! あります! 女なら共感すべきであろう願いです!」

「恋ですか」

「はい。恋です………」

 耳まで赤くして、太ももをもじもじさせる薫子かおるこ

(神頼み、か。恋を。女ならするのかな~)

 とのんきにミハエルは思った。

「じゃあ、ご飯食べて少し経ったら行くけど案内頼める? 薫子かおるこちゃん」

「はい! もちろんです! あなたの頼みなら!」

 薫子かおるこは腕まくりして腕にこぶを作って(女だからかほとんどこぶできなかったが)任せて! の意思表示をする。

 あなたの頼みなら!

 薫子かおるこの発言タイミングで湿っぽい目線と心をミハエルと薫子かおるこに投げかけたのは、サリサ、フィオラ、水鏡冬華、空夢風音そらゆめかざね水野陽夏みずのようか東雲波澄しののめはすみである。

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