絶対王政
「オーヴァン国王、こんにちは。先程、ミハエルくんと天津日高日子波限建鵜草葺不合命《あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと》と一緒にこの星に攻めてきた光の神ルー=ラワダを倒しました」
アリウスが礼と共に王に報告する。
「よくやったウィザード・アリウス。後で玉座まで来い。褒美を上げる。予備の魂くれてやる。新発明のエネルギー源として使え」
「ありがとうございます」
「あの、あなたが王様なんですか……? 大分頭が爽やかですが……? 服装も爽やか……。わたし、ちんどん屋かと思いました」
天馬蒼依達女子4人組の内、アン=ローレンが怖いもの知らずな言い出し方をする。
「あわわ」
アリウスが恐れなき言葉に声を上げる。
だが彼女が嘘をついているわけではなかった。
オーヴァン=フォン=ヴァーレンス。意図的なハゲ(そってる)で服は王様マント以外ふんどし一丁で筋肉を強調しているスタイルだ。
時々喋りとともに大胸筋が上下する。ビクンビクン。
「はっはっは! 確かに俺ほど頭が爽やかなのはいないなあ! これ、毎日そってんの! つるっつるになるように!」
天馬蒼依たちはヴァーレンスの王と話をした。
「そういえば、ヴァーレンス王国ってどんな国なんですか? こう、なんちゃら王政とかいうーの」
天馬蒼依が王オーヴァン=フォン=ヴァーレンスに気楽に尋ねる。
「んん? 絶対王政だぞ。
貴族には俺の元で国の維持する仕事で働け。働かんか? その代わり土地を献上し、給料をやろう。
一応ミハエルもこの形式か? 公爵だしな。
まぁヴァーレンスでは金というものも形骸化してるからな。衣食住全部0ウサギでそろうから。魔法で。金意外に徴収した予備の魂をいくらかやろうっていってる」
「あ、あの。魂って…………そんな気軽に取引に使えるんですか」
「何言ってんのお嬢ちゃん。悪魔に魂を売るって言葉があるじゃん。あれ例えじゃないよ。実際に魂売ってんのよ当人は」
オーヴァンが呆れた顔で天馬蒼依を見る。
「え、ええ~~~っ」
「自分の魂をちょっとちぎって他の――鎧とかに入れると、その鎧を自分のように動かせるんだ。やってる人そこそこ見るけどな…………」
「そんなの、見たことないです…………」
「お前、姿からして水鏡冬華と同じ職だろ? 巫女が何で魂の活用方法知らないんだ」
「いやあっ、水鏡冬華さんは、うちら巫女連中でも間違いなくトップの方ですし……巫女集団で水鏡冬華の名前知らない人いませんよ!」
「ふ~ん…………」
オーヴァンはそう息をついた。続ける。
「で。おまえは優れた商人だ! もっと稼がせてやるから、税金は0でいいから税魂をおさめろ。わたしにな。
っていって、そのものの魂の一部をチョッキ~ンてする。一部なら問題ないからな。健康にも影響ない。
『星の重力に魂を引かれた人間達』は嫌がるけどな。そういう人間たちは、地底に沈んでいって、やがて地底に逃げた堕天使と会う。
ケルトの神々は実際そういう顛末迎えてるしな。
トゥアハ・デ・ダーナ神族(ダグザとか、クーフーリンに恋しすぎてヤンデレ化したカラスの女神モリアンとかだな)はミレー族に押された後、エリンから、フィンディアス、ゴリアス、ムリアス、ファリアスからも姿を消し、妖精の姿になり地底を住処としたから」
「へえ~……」
天馬蒼依は相槌を打つ。
「魂は宇宙を支える力なんだ。それを分かっているから、わたしたちはカネなんて交換券より魂を大切にする。
いざというとき――隕石が星にぶつかる、とか――に民を守れるように魂パワーを大災害封じとして国が貯めておく。
命は力、魂は力なんだ。
天馬蒼依、お前だってそれは理屈でなく感じているはずだ。アリウスがやばいと感じたらお前血相変えてアリウスに触れただろう?
宇宙はそれで成り立っている。宇宙は魂で支えられているものなんだ。
なのに金がどーとかで魂を悪魔に売るのは、それは、それは悲しい事なんだ…………醜い事なんだよ。
隕石落ちてまでいかなくても大震災で社会の機能停止したらカネなんて意味ないぞ?
衣食住くらい作成系魔法でなんとでもなるのに」
「なるほど~(この人格好のぶっ飛び具合からは想像できないほど、考えがまともだわ……)」
天馬蒼依はオーヴァンに感心した。