悪魔vsアリウス
アリウスがアウトボックスで悪魔の周りを飛びながらジャブを放つ。
ビュン! ビュンビュン! ビュビュビュン!
ドォンドォン!! ドゥン! ドォン! ドドドォン!
左手によるジャブだけではない。
左手の周囲に魔力でこぶし大の魔力球をいつでも出しておいて手数を増やす。アリウスの手だ。
「的が大きいのに……大分体柔らかいね、レギオンでの体は柔らかいのかな!」
レギオン。人間でいう細胞の事だ。悪魔の細胞。ネフィリムの細胞。
ゆらゆらと幽霊になりきったかのような避け方だ。
アリウスが予想した当たり回数より大分低い。
だが相手、ダメージはある。ゆらゆらと幽霊になりきったかのようなのは、当人の癖もあるようだがダメージのせいでもあるようだ。
(スピード……今のわたしより上……)
アリウスの顔が歪む。悪魔のでかい拳がアリウスの左ほっぺにめり込んだからだ。
(奥歯は砕けてない……首も異常はない。よし)
殴られながらも、冷静に把握するアリウス。
魔力の壁も使って、顔のガードを固くするアリウス。
だが。
ドゴォォォン!
悪魔のでかい拳がアリウスに1回めり込む。左ほっぺだ。
ドゴォドゴォドォンドォン!
アリウスの顔が強制的に右を向かされたり左を向かされたりする。
相手の剛腕による右フックと左フックの嵐がアリウスを襲う。
相手が笑っている顔が左右に揺れて見える。普通のフォームでフックを撃っているわけじゃない。アリウスは殴られている最中でそこまで冷静にしている。
右左フックしているせいだけではないだろうこれは。アリウスを煽っている。そして『相手を血まみれにしている事に★性的興奮★』を覚えている顔だ。そんな目つきだ。
(悪魔め)
相手を悪魔だと再認識したアリウスの顔が血まみれになる。
アリウスの白い服が飛び散った血で染まる。
アリウスは痛みを我慢して前にすすむ。アリウスの顔が血に彩られて壮絶に見える。
だが――
前に進んだ先には相手の拳があった。
「ぶふっ――!」
アリウスが意識して出した声ではない。無理矢理だされたのだ。
「死ね」
悪魔の呪詛ともとれる言葉が響き渡る。
悪魔の右フックがアリウスをとらえる。
「はぉおっ!?」
今度もアリウスが意識して出した声ではない。無理矢理だされた声。
アリウスは地面に頭をぶつけ、血をまき散らしながら動かなくなった。
「死んだか。偉そうなこと言っておいてこの程度。これは吸収するまでもなかったな」
そういって、握り拳に親指だけ立てて、それを親指を下の方に向ける。
「ふっははは!」
悪魔は、白く美しい男が血まみれで自分の前に倒れている事に大きな愉快さを感じていた。
「さあ、次はどいつだ。白の男――今は真っ赤だが、がいうには、こいつより強いのはミハエル、お前くらいなんだろ?」
「…………」
ミハエルは10m上空から悪魔を見下ろしたまんまだ。
友達が血まみれで倒れているのに、近づこうという気配すらない。
「お前の名前って、ルーナサ(収穫祭)でいいの? そんな雰囲気がする。ウィッカーマンで人間を燃やして生贄祭り」
ミハエルが仏頂面で尋ねる。
「よく知ってるな、さすが大天使ミカエル」
「質問にはまずはいかいいえで素直に応えろや悪魔。
あと聖書とわたしを結び付けるなって何回言えばいいんだ」




