恋で目覚めるテレポート
「ちょっと、ユーナ消えたんだけど!」
天馬蒼依があわてふためく。自分の横にいたユーナが思いつめた表情をしていたと思ったら魔力に包まれて消えたのである。
「ユーナ自身が何かしたのでは……テレポートとか。フレッドさんの所へ」
ガートルードがそういう。
「恋がきっかけで瞬間移動覚えたの!? それってすごーいロマンチック!!」
両手をパンと勢いよく合わせて、はしゃぐ天馬蒼依
「たぶん魔力の出方からして、それっぽいんじゃないかな~」
ガートルードが自信なさげにつぶやく。
「わたしも瞬間移動覚えないかな。んんん~サミュエル君サミュエル君サミュエル君サミュエル君~~!」
印を結んで好きな男の子の名前を呪文のように唱える天馬蒼依。
「くううっ! 無理だー」
蒼依が悔しがる。
「まぁまぁ、すぐに恋でテレポ覚醒するんだったら男に逃げられる女いなくなってるって!」
と、アン=ローレンが苦笑いをする。
「とりあえず、ここでユーナ待とうよ。戻ってくるって」
アンのその言葉に従い、蒼依とガートルードは待つ。
と――
緑の魔力の楕円が現れる。中からユーナが出てくる。
「ごめん。何も言わずに行っちゃって」
ユーナが謝罪と共によちよちと出てくる。どうやら下半身が動かない様子だ。
「どうしたの!? まさか、テレポートに失敗して……! 救急隊呼んだ方がいい?」
アンがその可能性を思い浮かべる。
だが、ユーナは、
「違うの! 大騒ぎにしないで! 恥ずかしいから! そういうんぢゃなくて、とんだ先でフレッドと会えたんだけど」
「うんうん」
「会えたんだけど、そこで彼にキスされて」
「おー」
「そしたら、なんか、上半身と下半身が違う、別人みたいになっちゃって」
「ええ?」
アンの相槌も戸惑いが強くなる。
「それ、フレッドのキスで腰が抜けたって事じゃ……! あわわわわわ、すごい威力のキス……! わたしが食らったら、意識飛ばされそう……!」
ガートルードが顔を赤く染めて、遠慮がちに指摘する。
「そう…………多分そうなの。今幸せな気持ちでいっぱいだもの、わたし。
上半身は自分の意思で動かす事ができる、でも下半身は力が入らない。
でも今幸せな気持ちなの。ちょっとキスしたくらいでわたしをこんな風にした彼絶対追いかける」
とりあえず、ユーナの抜けた腰が治ってからカイアスのルーチアに戻ることにした4人。