君の心で一番きれいな所だと思う
「正直さ」
みんなで歩いて町に戻る最中、フレッドはユーナに話す。
「お前が、『わたしが、あなたの、あなただけの女になりますから』ってゴッドノーサンキューに土下座して言い出した時は心臓ぎゅっーってなった。敵に紛れながら機会うかがっていたが」
「そ、それって、あなたもわたしのこと…………」
涙を流してユーナはつぶやく。だがフレッドは肯定はせず、
「あれって仲間助けようと自分の身を犠牲にしようとしたんだよね。きみは」
「え、えぇ……でも約束守る気なかったみたい、あいつ……」
「そりゃそうだ。ああいうのはルール捻じ曲げておいしい所取りが基本理念だろうからな。だからきみの『わたしが、あなたの、あなただけの女になりますから』はかなりバカな行動だ。もっと自分を大事にしろ、あと責任感じすぎな性格に見える。もっと気楽に生きな。人生何事も大げさに考えない方がうまくいく」
「う……うん……」
ユーナは俯いて目を反らす。
「でもあの時あれができる君は、好きだよ。心がきゅーっとなった」
「えっ」
フレッドを見つめる。自分の手をフレッドの胸に当てる。自然とそんな行動が出たユーナ。
フレッドから出た好きの言葉に涙が溢れる。
ユーナこそ心臓が恋の衝撃でとまりそうだ。
冗談で流すような雰囲気じゃない、ふざけた雰囲気じゃない時にこの人が好きとストレートで行ってくるはずがないとユーナは思い込んでいたから、涙がぽろぽろとこぼれる。
「あのときのお前、愚かではあるが、君の心で一番きれいな所だと思う。俺はそういう愚かさは好きだ。人間的で」
「はい…………はい! あなたのその言葉聞けただけでやった価値あると思えました! ふぅぅぅうぅぅうっ、あ゛ぁぁあああぁぁぁぁああぁ……。わたしもあなたが好き!! あなたがいない人生なんて考えられない!! ふぅぅぅうぅぅうっ。あなたと一緒に歩いている光景がいつも頭の中を支配しているの! それがとっても気持ちいいの! 気持ち良くって頭おかしくなりそうなの!」
両手で涙をぬぐいつつ、ユーナは言葉をつむぐ。
「わたし、あなたの、あなただけの女になります。身も心もあなたに捧げます。あなたになら心からそう言えます」
「ありがとう、ユーナ…………そこまで思ってくれるなんて男冥利に尽きる」
フレッドは、そこで何かをためているような感じになった。
「…………?」
ユーナは言葉に出さず、疑問符を上げる。フレッドは小学生が読むようなお下劣漫画のキャラのような顔を作りながら、
「でもナンパしたいもんね~! 結婚したらナンパできないからしないもんね~! はははっ!」
「ちょっ、なっ、わたし、わたしだってあなたの、そのエッチな欲望を満足させる体って自信はありますけど! 胸大きいし! 顔も女から嫉妬くらったくらいの顔だし! わたしがいたらナンパ必要ないしエロ本だって必要ないし(わたしに甘えてくれば嬉しいし)彼氏の要望に応える準備くらいできてるし、魔導PCにエロ画像溜め込む必要すらないと思うんですけど!?
どーしていい雰囲気維持しないの! ムードよかったじゃない……! わたし正直、前半の流れだったら……その 」
「男を分かってないな~。どんなイイ女がいようがズリネタは必須別腹! そして抱かれてもいいって思ってる~! あ~らやだぁすーぐ雰囲気にのまれるエッチユーナちゃん! エッチだわこの服の上もピンク頭の中身もピンクちゃん。パンツ見~せて! パンツ見~せて! はい、おっぱい見~せてパンツ見ーせて! ハイ!」
フレッドが拍手しながら煽りまくる。小学生が女の子をいじめるような感じで。プルプルプル……と怒りで震えるユーナ。
「あ、でも前半いったことは嘘じゃないから」
「え…………」
「オレの本心」
「うん……それは信じてるよ」
ユーナが赤く頬を染めて頷く。
「でも、結婚したらナンパできないからしないもんね~! も本当」
「だからそういう欲求はわたしがいるんだから恋人のわたしに全部頼ればいいじゃない! 結婚すれば……わたしを好きにできるよ? ご飯だって食べさせてあげるしお、お風呂も……、ね、眠る時だって、わたしあなたに……」
「え。恋人なの」
フレッドが目を点にして言う。
「え。恋人じゃないの」
ユーナが目を点にして言う。
「あっはっはっはっは! これだから息子さんや息子さんの周りにいると面白いわ………! あはははは! もっとやれーぃ! もっと騒げーぃ!」
上空で十二単が大笑いしている。
二人の周りからも笑い声が聞こえる。
「もおおおおおおおおおお! 笑うなー!」
ユーナが滅茶苦茶な気分で腕振り上げて叫ぶ。
「牛の鳴きまね?」
フレッドが首をかしげる。
「違うわよ!」
ユーナが思いっきり否定する。フレッドにボールを蹴る真似をする。もちろんフレアの膝上30cmのミニスカで思いっきりそんなことをしたら……(以下省略)
「ワンナイトラブって言ったよね? 君頷いたよね。もう夜開けてるんだけど」
「い、いったけど、いったけど、なんかこう、あの時と今じゃ色々変わったと思わない? お互いに。特に今のわたしはあなたの事、本気で……あなたになら抱かれてもいいって本気で……思ってるんだよ? あなたのこと……」
涙をためて、いや大粒の涙をこぼして、ユーナは本心をぶちまける。ユーナはフレッドに手を伸ばす。恋人繋ぎでも要求しているかのように。
「べつに…………」
だがフレッドは敢えて微妙な表情をして見せてこの態度。
「か・わ・っ・た・で・しょ・!?」
眉間に思い切りしわを寄せながら、フレッドのハートに触れたいと思って出した手を胸倉掴む事に目的を変更した手に力をいれて、ユーナ。
「そーかなー」
「こんのやろ殺したい!」
ユーナがしばし生まれつきの穏やかな目をしていたのに、また怖い『心霊スポットよりずっと怖えよお前の目』に戻ってしまった。
「いやーん、殺されますわ~こわいですわ~」
「ふーっふーっふーっふーっ」
鋭い目つきに戻ってしまったユーナの息が荒くなる。だが色気ある方ではない荒くなり方だ。
そして手は恋人繋ぎ……? というよりは、バトル漫画でライバル同士が力比べをしている形になっている。
「こんな、こんな恋人繋ぎやりたいわけじゃないのよ……わたし……これ絶対力比べしてるよね……わたしたち。これ、星を真っ二つにする力持つ二人がやる手がっちりよね」
と汗を流しつつ、ユーナ。
「力くらべそのものだねえ。そしてフレアのミニスカでそんな足の踏ん張り方したらパンツ見えるよ♪」
「うるさい! あなたがまじめになれば済む事なのよ」
「えー」
と、フレッドが少しだけ距離を取って話始める。
「実は俺……鼻から紙テーププヒーって鼻息で伸ばしたりひっこめたりする女しか愛せないんだ…………」
とフレッドがおよよと泣き真似をしつつユーナに紙テープを渡そうとする。
「…………ぜったいうそ! わけわかんないし、ぜったいうそ! 実際にやったとしても笑われて終わりだわ!」
ユーナは怒りの表情で目つきも鋭くフレッドを指さして嘘を看破する。ユーナはフレッドの紙テープ持った手を手ではらった。だって鼻の穴に近づいていたから。
「あははははっ!」
頭上から笑い声が降ってくる。いわずもがな十二単の笑い声だ。
「上うるさい! 周りもうるさい! 笑ーうなー!」
だが笑い声はやまない。
「そんなに愛して欲しいの~?」
「だ、だから、わたしは最初からそう言う事言ってるじゃない」
「じゃあいうよ~? ユーナちゃん好きリーナ♪ ちゅきちゅきしゅきリーナ♪」
ふざけた顔で、フレデリック。
「前半のかっこいいあなたみたいに、『真面目に愛して!!』 愛して!!」
ドン! 右足で地面を思いきり叩くユーナ。ちなみにフレアのミニスカ履いてるのにそんな行動したからユーナのパンツが丸見えだ。だが彼女は怒りでそれを知覚できない。
フレッドの愛の言葉で、ユーナに増えたものがある。ユーナの顔の怒りマークである。