ブエェヘヘヘエ メッセに668件こわい
「あなたユーナの事大事にしてくれるの? あの子失恋したばかりなのよ。今回の旅行は彼女のためでもあるの」
黒髪ミニスカ巫女装束の天馬蒼依がフレッドを睨む。
「いや、ワンナイトラブというかリゾラバでいいって了解取ってるし……ユーナちゃんから」
「…………不潔よ!」
天馬蒼依が怒りマークを顔に浮かび上がらせて無言でフレッドを睨む。
「そんなに睨むなって。起きたら彼女本人に聞けばいいじゃん」
フレッドはそう返す。
「まあまあ、本人たちが了承の上なら」
と、銀髪、やんちゃそうな黄色基調で白でところどころ彩った服装のミニスカ剣士アンが横から口を挟む。
「なんかあなたと話しているだけでわたし妊娠させられそうな気がするわ」
体をぶるるっと震わしてお腹を両手で押さえてフレッドから女の子の大事な部分をガードして、天馬蒼依。
「そんな特殊能力エロゲーの主人公ですら持ってねえだろ。全世界の子宮征服する事で世界征服できるわ。拡声器で俺が喋ることが赤ちゃん爆弾になる」
手をぶらーんぶらーん振って、呆れ顔でフレッドが答える。
(にっこり)
フレッドはアンにスマイルを返しておいた。
(にっこり)
アンはそれにスマイルを明るく返した。明るい女という表現が似合う。
(が、一番危なっかしい女の匂いがする。一番ドジっ子だぞおそらく……)
フレッドが己の女性経験からトラブルメーカーのにおいをアンから感じ取っていた。後ついでに太ももまで丸見えのミニスカから伸びるアンの男好みの太い脚を目に焼き付けておいた。
(あの適度にボリュームある足で大好きホールドされたら迫力あるだろうな。
距離置いて眺めておくのが一番いいよねこの3人組みたいなのは、4人かオレの部屋で寝てるユーナ入れると)
フレッドがそう警戒する。
(ま、ナンパしてる時点でそれは無理なんだけど)
「で、さゆちゃん。何の話してたっけ」
「ヤギの鳴き方の研究の話」
「ブエェヘヘヘエって感じだったと思う」
「いやあの、そこの十二単さん」
天馬蒼依からさゆに声がかかる。がさゆは話に夢中でスルー。
「そういやね。女が最も魅力的に感じる男の人ってなんだか教えましょうか」
「そんなん知ってるよ。何年ミハさんの友達やってると思ってるんだ。オレ」
「じゃあ一緒に言う?」
「たぶんハモるぜ」
『好意を持ってるが、手に入らないと思う男の人』
「ほーらやっぱりハモッたな。ないものねだりとちょい似てるな。わかるんだよミハさん男には愛想良いけど女には愛想悪いからそれでも変にモテてるってとこからして。
霊波動士の空夢風音ちゃんが他にもクロードとかアリウスとかイケメンいるのにミハさんにこだわっておっぱい押し付けたりパンツ見えるか見えないかくらいで自分の太もも見せつけてポーズ取ってるのはそのせいだと思うぜ。一夫多妻制でももう自分が座れるミハエルの嫁の名札がついた席は1つあるかないかだろう、って感じてるからパンツ見えようが何見せようが構わず、愛する男をその手に掴もうと必死なんだと思うよ。望む男を手に入れられなくて10年経っても後悔するなら、パンツだろうが何だろうが見せて射止めてやる。って感じじゃないの? 元々いい所の娘さんぽい雰囲気するから、パンツ見えやすい服装で見えやすいポーズするの違和感感じたけれど、心理読み取れば全然違和感なかったな。特に相合傘のおまじないしまくって、子どもの名前までもう考えてるようじゃ。たまたま部屋の前通った時聞こえてきたけど。
まー、いくら一夫多妻制でも限界てモノはあるからな。嫁多すぎても、ち○こちぎれる。壊死する」
フレッドが言う。
「え。空夢風音ちゃん子どもの名前まで……息子さんの子ども自分の体に宿して産む気満々じゃん! ミハエルさんからは冷たくされている段階なのに! 恋は盲目とは言うけれどこのレベルは見たことないわ。男に免疫がないお嬢様育ちだと恋にブレーキ効かなくなるのね~。
そいや、トラブルか何かで幼馴染との恋愛が絶対に結ばれないのとか物凄く後ろ髪ひかれるらしいね。わたしあの時ああしておけば、○○君をこの手に抱きとめておけたのに、どうしてあのときあんな、あれさえなければわたしの隣に○○君が居て2人の間にわたしと○○君の子ども(顔は旦那様似の男の子か旦那様の特徴を受け継いでいる女の子なら目に入れても痛くない)がいたはずなのに、って10年経っても思い悩むらしいよ」
さゆも話にノッている。
「愛を伝える手段って5種類くらいあるよな。言葉、贈り物、恋人への奉仕、触れ合う、後は時間」
フレッドが愛の武器5つを提示する。
「フレッド時間武器に使うのうまいよね。会う時間と会わない時間てのをうまくつくって、女の子の恋愛感情爆発発狂させてるじゃ~ん。繁華街でこの前女の子泣かしてるの見たよ~どうして会えないのわたしたち! 運命の神様はわたしたちに嫉妬しているの!? ってめっちゃヴァーレンスの街に響いてた叫び声が、それ余裕のある男にしかできない策略よ! ベタ惚れ男にはできない余裕的策略」
さゆはフレッドの恋愛に対する余裕さを褒める。
「アレ大変だったんだぜ? あの時間を武器に作戦、効果があり過ぎで、あのあと魔導携帯端末見たらメッセに668件はいってるし。の、呪いだー! って一人の部屋で叫んじゃったよ! 魔導携帯端末持つ手が震えたね。
既読無視する男の心理ってなんですか? 教えてください
(普通に眠かっただけで携帯手に持ったまま寝ました)
わたしってもうあなたにとってはいらない子なんですね……
(騎士団の会議中にこれ。会議中に無理ですわ)
あなたから何かないとわたし発狂しそうなんです! 今わたし泣いてます……。あなたの返事がないから泣いてます……。わたしの涙を止めることができるのはあなただけです……。
(オレも盗賊団討伐でカイアスから船できた盗賊と戦闘中に滅炎剣と滅氷剣ふりまわしている最中にぴろんぴろんいってそんなメッセが来て泣いてます!)
何でも良いくだらない事でもあなたと話せるなら嬉しい。いいからお話ししよう。ね? わたしとお話ししよう。
直接会いたいならそう言ってくれればあなたのためなら、時間なんて作りだしますから。
とか668件溜まっててドーしようか迷ったね」
「あの……十二単さん? わたしの声聞こえてますか?」
「ブエェヘヘヘエ」
「いや、ヤギの物真似で応えなくていいから。ていうかヤギ? それ…………てそうじゃなくって妖気感じるんだけど……」
「当たり前じゃん。ジャンが革ジャン着てるくらい当たり前じゃん。わたしは木花咲耶姫に仕えている妖怪だよ?」
ジャンが誰かは言っているさゆにも分からないがそれでも言う。
「ジャン? 誰それ? え……木花咲耶姫って妖怪置いてるんだ。ていうか妖怪って悪い物じゃないの」
「ジャンは革ジャンの神様。で、あんたも~? なんで妖怪ってだけで悪者扱いされないといけないんだか。
ていうかさっき地上に、このファブリスに降りたよ木花咲耶姫様。すぐ帰ったけど。霊気感じ取れなかったの姫様の? 霊気感じ取れないって事はアンタの霊気よわよわねー」
「ぐっ、わたしたちは強いのよ! 男なんかよりも強いもん!」
「性別にこだわってる時点で……」
「なによ!」
「ブエェヘヘヘエ」
「だからそれホントにヤギの鳴き声え……?」
天馬蒼依はちょっとヤギの物真似に引いた。