あぶない冒険者
ミハエルたちが飛空艇を見学しに行く少し前。あれから夜が明けて朝の事である。
危ない冒険者と呼ばれる集団がいる。
1人は身長155cmくらいの巫女装束の下がミニスカの袴……というか赤いプリーツスカートで、和風柄のニーハイソックスを履いて肌の露出を抑えつつ色気を出している。刀を持っているので前衛らしい(黒髪の長髪、品行方正そう)。
もう1人は身長165cmくらいの黄色基調で白でところどころ彩った服装で、白のニーハイソックスを履いたミニスカ剣士(銀髪の長髪、やんちゃそう)。
あと一人はヒーラーと一目でわかるような身長155cmのヒーラー(銀髪のボブカット、大人しそう)。
彼女らがなぜそう呼ばれるか。
それは別に危険人物だからというわけでもない。いやある意味危険人物だが。
実力は世間一般的に言えばある。魔力(や霊波動)もあるし。
ミハエルたちみたいな星を1撃で消し飛ばす火力がないが、それはミハエルたちヴァーレンス組が地上の者とはいいがたくなっているとも言える。
何が危険かというと、3人とも実力が小さいころからあって危ない橋を不注意で渡ってきてな~んにも痛い目を見ていないから危機意識が薄く、端から見て危険なのである。
黒髪ミニスカ巫女装束の天馬蒼依は黙っていれば品行方正だが、
「大丈夫ですよ! 今までわたしらこういうのもこなしてきましたし。うまくいきますって。それより依頼達成のお祝い会の準備しておいてくださいね! かっこいい男の方とか用意してくれると嬉しいです、やる気が出ますので」
銀髪、やんちゃそうな黄色基調で白でところどころ彩った服装のミニスカ剣士アン=ローレンは、
「そうだよねー。わたしたち、危険って言われた男たちが逃げる任務も怪我なくうまくやってこれたもんね~♪」
「危ない事もやってきましたけど、わたしたちなら大丈夫です」
ヒーラーのガートルード=キャボット。
その3人と同じ場所、宿屋併設の食堂にいたフレッドは
「あーいうの一番あぶねえべや。女の子3人で冒険者? 薄い本みたいになるぞ、そのうち。帰ってきてわけわかんねえプロセスで3人とも妊娠してましたとかありうる危うさ」
変ななまりまでつけてフレッドが一人ごちる。
と、ピンク色の十二単があらわれた。
「べやってどこの方言」
「知らねっすわーすわー建御名方」
「諏訪だけに」
「そうそう」
「そこの黒髪のおにーさん!」
黒髪ミニスカ巫女装束(膝上30cm)の天馬蒼依がフレッドに話しかけてきた。
「わたしたちの実力を侮っているみたいね」
フフン、と自分を自慢しているような態度で、天馬蒼依。
「はい」
ココナッツジュースを飲みつつ、フレッド。
「いや、はいって……! 剣術勝負でもお兄さんには負けないよ! このファブリス諸島まで女3人で無計画に遊びに来たはいいけど、ちょっとお金足りなくなってきたからこれから依頼こなすのよ! わたしたちくらい実力あると現地でそういう立ち回りしてもやっていけるの!」
「そりゃあ、めでたい」
「んもー! ちゃんと聞きなさいよ!」
地団駄を踏む天馬蒼依。ミニスカでそんなことしたら中身が見えそうである。
「聞いてる、聞いてる」
「全く、顔がイケメンだからってユーナの奴こんな男にほいほいツイてっちゃうんだから」
「え、今俺の部屋で大の字で眠ってるの君の友達?」
「そうよ! って大の字……彼女今日ミニスカートだったと思うんだけど……」
「うん。だからパンツ見えた」
「見るなどスケベ!」
「ドスケベって、女だってそうじゃん」
「なにがよ! あんたほどじゃないわよ!」
「俺がスケベなのは認める。毎日抱く女が違う日々もあったことは認める。
でも了承を本人の口から聞けた女だけだ。
まごまごしてはいの一言が言えないって女も他の男からすりゃあもったいねえ強引に行きゃあ抱けただろうにというだろうが俺はそういう女は一人ホテルに放置して帰った。
恋愛までできる年齢になって、自分の意思を言えないってのは危険だからな」
「ユーナは、はいっていったんだ」
「そこは想像にお任せしま~す」
「なによ! そこ伏せなくていいんじゃない!」
「ユーナ本人から聞けばいいだろうに。起きた後。
そんなに友達の恋が気になるの?」
「なっ、ただ、友達として気にかかるだけよ! あんたみたいな下半身の化け物につかまって泣かされていないかね!」
「下半身の化け物って……オレの下半身普通だと思うけれど」
さすがにフレッドもたじろぐ。
「うるさい! 多くの女の子を毒牙にかけたって自分でも言っていたじゃない!」
「聞いたものを自分なりに解釈して飲み込むのが得意そうだねーきみは。
ちゃんとはいの了承は取ってるし、明らかにはいの態度でもはいの言葉すらいえない女は敢えてホテルに一人放置エンドでオレは帰った。これのどこが毒牙だよー」
「でも、だって、あなたが今まで、その、そうしてきた女の子の事考えると……」
「いちいちそんなこと想像するんだ。他人の恋路なんて、きみには関係ないのに」
「うっ、だっだって……」
と天馬蒼依は太ももをこすり合わせる。
「トイレ行きたいの? 気にせず行ってらっしゃい」
とフレッド。天馬蒼依は
「違う! トイレじゃない!」
と反論する。太ももをこすり合わせる動作は意識してやめたようだ。
「おーおー。やってるねえフレッド」
桜雪さゆからも横から言葉が入る。
「いや、眠った途端に足放り出してさ。はしたないから足もって閉じさせようと何度もやってみたが蹴られたんでもう放っておくことにした。
あれだよね。かわいい女の子でもさ。男の目がなかったり眠ってる時とか無意識だとさ。行動おっさんくさくなるよな。ま、気を抜く時間も大事だから」
(はは~ん。これはフレッドの事だから。ベッドに寝かせるだけでまだ味見してないな?)
桜雪さゆはそう確信を持った。
フレッドは男女づきあいでも余裕のある方である。がっつくという真似はしない。むしろ女の方ががっつくイメージである。彼の恋愛事情では。
女の心理を読み取る。もちろん超能力ではく、恋愛経験からの洞察力である。
(あー、会いたい。彼に触れてみたい)
女がそんなことを思っていればフレッドには筒抜けである。
女が好きな人を目線で追いかける癖なんかはさらに男には大バレである。背中を向ければボーナスゲームと思っている女の子よ。一度好きな男の子に勘づかれたらボーナスでも何でもない。男は背中にお灸を焚かれている感じになる。
男がおっぱいに視線を泳がせるのを気づいてるって自慢してる女は、女が好きな男を視線で追いかけてるのも感づかれてる事に気づこう。2つは同様である。
そしてそういう女にはフレッドはやや逃げる。
そうすることにより、敢えて女の妄想を爆発させるフレッドの悪い癖だ。
「会いたいのに、どうして! どうして! そんな時にばかり会えなくなっちゃうの! 気が狂いそうだよ!」
公衆の面前でそう泣き叫ばれた事もあるフレッド。
「フレッド、フレッド、フレッド、フレッド、フレッド、フレッド……」
と彼女一人でいる部屋から呪文のように自分の名前を唱えられたこともある。さすがにその時は、
「あ、やべ、殺される」
と思い、その女の子と会う時は剣を腰に下げていたフレッド。
だが後から話を聞いてみたが、女という種族は好きな人を名前をくり返し言う事で脳内を彼氏でいっぱいにするというリチュアル――儀式を取るそうで、特に一人暮らしの女性なら我慢せず部屋で遠慮なく彼氏の名前を呼ぶらしい。部屋にたった一人きりでも。大好きな彼の名前を叫ぶと天に昇る気持ちになるという。
(全員じゃあねぇんだろうが……)
フレッドはそう付け足しておく、桜雪さゆや水鏡冬華にそう言った特徴は見当たらない。
浮足立って頭がポーっとする、これはかなり女では多いケースだ。フレッドが見た中では。
(恋は盲目、か)
確かにそうかもね、とフレッドは思った。
フレッド以外何も見えてないって感じで転びまくってた女も馬車に引かれそうになっていた女も見た。
「明らかに自分で頭バカになってるってわかるのよ、でも恋すると仕方ないのよ理性では気づいているけど恋心がノンブレーキなのよ。ちょっと頭おかしくなっている状態が通常状態になってる感じ。でも幸せなの」
と説明を受けたこともあるフレッド。
「でも恋愛がうまくいかなくなると、思いっきり外に出る。顔もやつれるし。そういう時期に呪術師なんかみつけちゃうと10中8、9利用しちゃうでしょうね女は」
これを聞いた時、男と女ってちょっと体のつくり違うだけじゃ~ん。
と思っていたのが改めさせたれた。
「女だけ、こう、精神だけ、宇宙の妖怪なのでは……男でんな思いつめるのいねーぞ、いや、いるけど個体数は女性に比べたら少ねえぞ……」