この飛空艇はすごいぞ! ココナッツで空を飛ぶんだ!
「この飛空艇はすごいぞ! ココナッツで空を飛ぶんだ!」
夜のカスティーリャに戻ると、そんな声が聞こえた。
と、その声とは違う方向にフレッドと女の姿が。
「お、成功してんじゃんフレッド」
「え、あれフレッドさんですよね……女の人と仲良く話して……あれ、もしかして」
空夢風音があまり口に出したくない風に物申す。
「ナンパ。うまくいったようだからもっと深い事しようとしているな。いつも通りの彼だ」
と、ミハエルが気の抜けた顔でのんびり友人の事を話す。
「不潔です! そんな、街で女の人捕まえて、そんなこと……! 男女の仲というものは、もう少し、こう……」
空夢風音が語気を強めてそういう。
だがフレッドの友達のミハエルからは、風音が予想していたのと違う言葉が出た。
「そうかな。アレも自然な形だと思うよ」
「え……?」
「なんで驚いてんの。地球の日本の江戸時代とか大分あけっぴろげだったじゃん。夜這いはし放題だしさ。フレッドは夜這いしないだけ行儀いいと思うよ」
「そ、そんな、あなたからそんな言葉が出るなんて」
風音は意気消沈したような声でつぶやく。
「なに、もっと顔に似合う、お堅い一言でも言って欲しかったのかい。風音、わたしのこと嫌いになった?」
「いちいち嫌うかどーかの確認とらないでください! 知りません! あなたは嫌って欲しいんですか!? わたしの事嫌いなんですか! あなたの好みだと思いますよ? わたし……」
と胸をミハエルの腕に押し付けていく風音。
「でもこれは本心だよ」
「な、なにが本心ですか」
「そーゆー男女の気楽な接触を禁じる事で出生率は下がるし、互いに気を遣い合うなどという体で不干渉を気取る事で男女の溝ができる。
わたしはそういうタチじゃないからナンパはしないけど、フレッドみたいな強引にはやらない女の了解を取るナンパは男女仲良くするために貴重で必要な人だと思っているよ」
「…………わたしには、よくわかりません」
拗ねたような口調で風音。
「わたしはわかるわ。ナンパされた経験多いからね」
「自慢ですか」
風音が水鏡冬華に食って掛かる。
「まあ、なんにとってもらってもいいけど。でもナンパできる男の方がいざという時、動きが良い。そんなイメージはあるわね」
「…………別に、そんなことないんじゃないでしょうか」
風音は納得しない。
「『色好み』な人は『恋愛をしっかり楽しんでいる人』『気持ちに余裕がある大人っぽい人』よ。男に免疫持たないで暴走する女よりはよっぽどいいわ」
「それ、わたしのこと言ってますか? 冬華さん!」
「別にあなたの事って言ってないでしょ」
「…………」
「そういえばあなたのファッション。真似していい? セーラーの上にミニ浴衣って結構いけてると思うのよね」
「……別に! どうぞ!」
怒りながら、風音はOKを出した。
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アリウスがさっきから消えていたが、戻ってきた。
「いやあ、ごめんごめん。ココナッツで空を飛ぶ飛空艇とやらの情報を掴んできたよ。明日見に行っていいかな」
「いいよ~。じゃあ明日の予定は一番にそれ行きますか!」
ミハエルが言う。
「飛空艇興味ない人は自由行動で!」