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太陽よ、ムーンショットを止めろ!  作者: 白い月
超投資戦はまあ適当に こじれた恋心はやさしく……できたらいいなあ
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超投資戦に参加

「その、あの、わたしもついていっていいですか?」

「別に……この国に滞在中は」

「こっこっこの国を出た後も……」

「君にも君の生活あるでしょー、わたしに行動合わせる理由なんて」

「あります。女にはどうしようもない理由が」

 空夢風音がそう遠慮がちに言う。涙を目に貯めて。

 が、遠慮がちなのは口調だけで言葉にはどれだけ断られようがついていくという意志を感じられた。

 というか――

(生霊でましたよ~これ)

 とミハエルが自分の腕にしがみついて体をすりすりこすりつけている半透明の空夢風音をおそるおそる見る。

(恋愛ってすーぐこうなるから、恋愛のない世界に行きたいって思うのよね。

 あと男だけの世界に行きたいとも。

 はぁ~霊感ない人が羨ましい)

「風音さん」

「呼び捨てで構いません」

「風音」

「はい」

「君今つかれていないかい?」

(わたしは今君に憑かれているよ風音。フレッドなら『いいじゃん美人ならいくら憑りつかれようが妖怪雪女だろうが。おっぱいもみがいあるだろ~』っていうんだろうけどな。お前のその気楽さがマジで羨ましい)

 さすがに後半は口の中から出さずにミハエルは風音を見やる。と思いきやフレッドを見やる。

「え、先程寝ましたので疲れてはおりませんが」

「わたしの左腕になにかついていないかい? 霊波動士ならわかるはず」

 霊気を操るものなら見える。そう確信して、ミハエルはそう言った。

「え。……あっ」

 風音は自分の胸をミハエルの左腕にこすりつけている自分と同じ姿をした生霊を見た。

「好きになってくれるのはね。男として大変名誉なんだけど。

 生霊つけるのはやめて欲しいんだ。怖いから」

「すっすすすすみません! わたしそんなつもりじゃ……! 気持ち悪かったですよね! 怖かったですよね! 誤解しないでください!! わたし、男に霊飛ばす女じゃありませんから! 霊波剣士ってそーゆーのじゃありませんから!」

 ミハエルの左腕にしがみついている自分の生霊を、手をかざして吸収しながらまくしたてる風音。

「お願いです気持ち悪い女って思わないでください……怖いって思わないで……あなたにそう思われたら、わたし、立ち直れません……」

「ま、大丈夫だけどね」

「ほんとですか……?」

「何度か憑りつかれたことあるし、女の生霊には。それに恋する女って生霊飛ばしてるものだから。一般人でも、さっきの君みたいに霊波動士でも自覚なく、ね」

「すみません、すみません」

 謝りの言葉を繰り返す風音。

 リィルを見るミハエル。リィルが恥ずかしそうに俯く。

 風音も顔を真っ赤にして俯く。

「まあ、ちょっと超投資戦の事聞いてくるわ。ちょっとまってて。アリウス君とフレッドとクロードとサミュエルは一緒に来て」

 超投資戦に参加するためにファブリスに来たのだ。ミハエルは超投資戦の王都会場に足を進める。

「カイアスも無駄に対抗意識伸ばして」

「資源さえ押さえればって段階は通じないのにね。霊波動と魔法があるこの星では術者が無から作り出せるから」

 10数分後会話しながらミハエルとアリウスたち男グループが戻って来る。

 風音はそのミハエルになぜか恐怖心を感じた。ぶるるっとその場に座り込みそうになるが、今度は耐えた。

(…………え? あれ?)

 なんで自分が一目ぼれした相手に恐怖を抱いているのかわけがわからなかった。

 そのとき、ミハエルの背後に天使の羽が見えたような気がした。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



 魔導船に戻ったミハエル一行。

 ヴァーレンス勢ではないエルフ忍者レティチュも霊波剣士空夢風音も船に乗り込んでいる。

「じゃあ投資戦は魔力貯め石狙いでカスティーリャまで行って投資するよ。船で移動しよう」

 ミハエルがそういう。風音は、

「あの、皆さん投資にここにやってきたのですか」

「まあね。風音嬢はここ住み?」

「いえ、わたしは……呼び捨てで構いませんといいましたが、あなたには身近な関係の呼び方をしてほしい……カイアス王国のルーチアに部屋を借りてまして、今回は十二単の妖怪が暴れているからどうにかしてくれという依頼が報酬やけに高かったので受けて海を渡ってきたのです」

「お金欲しかったの? 地獄、地球よりは地獄の沙汰も金次第って要素は少ない星だけど」

「お金欲しかったというより人と触れ合いたかったって感じですかね。行動範囲広げて」

 と風音は胸の辺りを抑えて(心臓がどうとかいう話ではない)、

「その、恥ずかしいのですがひとりで料理する時、最近、独り言が多くなったなって感じて、一人暮らしだからダレも聞いてくれる人なんていないのに、料理番組に出てるのかと勘違いしちゃいそうなほど1人で話してる自分に気づいちゃって……。それで誰も聞いていないって認識してしまうとなんか地味に落ち込んだりして」

「ひとりじゃ耐えられないタイプね」

 水鏡冬華が口を挟む。それに風音が頷く。

「ルーチアってわたしたちもつい最近までいたよ~。ニアミスしてたのかもねわたしたち」

 とフローター・クレーヴのリディアがいう。

「はい。高校の時は気づかなかったのですが、どうもわたしはそうっぽくて。人間って会話や音があると安心できる生き物なんだなあって思って……」

「あ。わたし静けさを好む人間でもあるから君とわたし合わないかもねえ」

 とミハエルが言う。

「そ、そんな! わたし、じゃああなたの前ではできるだけ静かにしたいと思います」

「別にわたしにあわせろなんていってないよ。もっと自分にあった男見つけてくっつけばいい話」

「わたしはあなたがいい。あなたがいい…………最近一人暮らしが寂しいって思ってきちゃって、この時に誰かいて欲しいなって時に横を振り向いても誰もいない事実にちょっと泣きそうになったり、会話したり、手を四六時中繋いでくれる人を欲しがっちゃったり、寂しさを紛らわす相手が欲しかったり、そんなときにあなたに一目惚れしたんです。

 わたし、ついこの前まで恋なんてわたしにはまだ縁遠いんだなあどころか、男の人にも負けない! なんて余裕ぶっていたのに、あなたの顔を見た瞬間腰が、腰が抜けて」

 そこで風音は大きく息づきする。

「それに、この星一夫多妻制じゃないですか。いいなって男の人見つけても先に女に取られてた! ってあきらめなくてもいいんですよ! 不倫って言われるケースも少なくなりますからね。

 確かに地球出身のわたしもここは天国と思いたくなりますよ。この火明星ほあかりぼしは」

一目惚れという言葉にひっかかったので、ミハエルは次のように爆弾を落とした。

「一目惚れっていわゆる守護霊同士が恋してる状態だから、それ君の恋じゃない事は霊波動士なら一番最初の方で学んでるよね。

 それに君堕天使と接触したね。後頭部に堕天使の気配がする。羽根も、もちろん霊体の半透明の羽ね」

 空夢風音は、そのミハエルの言葉を聞いたとたん頭をハンマーで殴られたようにゆらぎ船の甲板に両手を突いた。

 そして涙を流しミハエルに訴えかける。

「ひどい…………ひどい、ひどい、ひどい……わたしの事が嫌いならわたしを

嫌いってはっきり言ってください! わたしあなたを諦める努力しますから!

 女の子の初恋を、恋を否定する事ないじゃありませんか!! うぇえええええええぇぇぇぇええぇ…………これは、わたしの、初恋です! あなたへの恋心です! 他の誰のでもない、わたしの初恋です! あぁああああぁぁぁあああああ! 恋心まで否定されるなんて! ふぅえええぇぇぇえぇぇぇぇ!」

  ずずーっっと鼻水の音まで出して大泣きする風音。

「むううぅ。じゃあ嫌い」

「こんな流れで即嫌いって言ったって本心じゃない事くらいわかります! わたしをバカにしてるんですか!?」

 目から大粒の涙をこぼしながら、鼻水までたれながら、風音が吼える。

「それはそうだね……」

 ミハエルは、ためしに言いたかった、ラブコメによくある、

『そんなにわたしのことが~~なら~~っていったらどうなの!?』

 を実際に即言うというのを、この機会に行ってみた。まぁ当然それで事態が好転するわけなく。

「ん? 霊波動士の修行積んでいるなら当然序盤の序盤でならうことだよな? なあ冬華。あれぇ」

「まぁ、そうなんだけど…………あなたかなりまずい言いだし方したわよ。女心をちょっと考えないと……霊波動士だからって事実そのまま受け入れるとは限らないのよ」

 こめかみを抑えながら、水鏡冬華はうなる。

「えぇ……」

「さすがに風音がかわいそう」

 と風音の嗚咽で完全に目がさめたサリサまで言う始末。

「わたしの風音に対するいじめよりきっつい一撃が息子さんから出ましたよ……しかも悪気がないと来てるからタチが悪い……後頭部アイスピックで不意打ちで刺されたくらいの衝撃かな……女にとっては。そりゃ一気に泣き出すわ女なら」

 桜雪さゆはさすがに風音に同情した感じでモノを言う。

「いえ、こういうときはきっぱりという時です。わたしはミハエル様の行動を支持します」

 とメイド長のレアが言う。

「めんどうなことになる一番まずいセリフを……」

 フィオラが恐る恐るいう。


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