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太陽よ、ムーンショットを止めろ!  作者: 白い月
ファブリスって意外と文化混ざってる?
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クラーケンもつらいよ

「クラーケンが出たぞ~」

 食事も終え、超投資戦に参加しようと考えていた所に、そんな声が聞こえてくる。だがしかしそんな切羽詰まった声ではないように聞こえた。

「のんびりした声だな。クラーケンくらい大したことない感じ?」

 とミハエルはちょいと推察に入るがちょっと考えた所でわかるはずもない。

「クラーケン? あぁサービスカットだな。はやくいかないと」

 という声が聞こえ、男観光客の鼻の下を伸ばした顔が見える。

「クラーケンでサービスカットって何?」

 リディアが疑問を発するが、応えられる人はいない。

「なんか周りの反応を見るに危険ではなさそうだし行く?」

 ミハエルの言葉にフレッドがノッてきた。

「そりゃあ、男なら見逃すはずもないイベントのにおいがするから行くぜ」

「眠たい」

 そう言ったのはサリサだ。

「眠ってくれば? 船戻ってさ。あんたが総毛立たずにそんなリアクションならクラーケン大したことないんだろうし」

 とフィオラがサリサの頭を撫でる。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「いや、離して!」

 空夢風音が叫ぶ。

 そりゃあ叫んでも無理もない状況だ。

 風音は、魔導ランドリーでセーラー服&ミニ浴衣&下着を洗っている時にクラーケンが出たーという叫びを聞いた。

「大変。戦えるわたしが出ないと」

 正義感はそれなりにある彼女はまずそう思った。

 風音は、クラーケンに小太刀2刀を構えて飛びかかったはいいものの、触手の大きさと太さにさばききれず、捕らわれの身となって皆の前に姿を現す羽目になってしまった。

 上空5mくらいだろうか。なぜかクラーケンは適度に高く適度に見やすい距離に調整してくれている感じがする。

「お願い離して!」

 風音の手足は1本ずつ触手に巻き付かれている。大の字で捕らわれている。

 しかも高低差の関係から風音のパンツが下の人々に丸見えである。

「くだらな……男しか楽しくないじゃん……zzz……」

 サリサは立ったまま寝ている。

「離さないなら、彼にパンツ見えないようそのおっきな触手でガードしてくれるだけでもいいから! 彼にずっと見られてると頭がおかしくなる! わたし頭がおかしくなるからやめて! ミハエルさん! お願い見ないで! こんなわたしを見ないで!」

 セーラー服の上にミニ浴衣を着ていようが、ここまで高低差のある状況でパンチラガードは不可能である。

「しかし、目の前にサービスカットがあるなら見るのが男のサガ……」

 ミハエルはそう呟いて見上げる。真剣な顔をして。真剣な顔をしてやることがこれである。

 どうもクラーケンはこちらを食べたり殺したりの意図はないようである。

 というか、食べ物をくれる。

 触手の2つがココナッツミルクパンとココナッツジュースを持ってきた。

「…………そんな、食べ物で許しなんかしないんだから」

 風音は迷ったが、ありがたくいただくことにする。触手はゆっくりと(彼女を下から見上げている人達の邪魔にならないように左右から)風音の口に食べ物を近づける。

 もしゃもしゃ。

 ココナッツミルクパンはとてもおいしい。

 じゅるるるる。 

 ココナッツジュースもさっぱりジューシーでおいしい。

(観光協会とグルなんじゃないのかしら…………このクラーケン?)

 そんな疑念まで浮かび上がってくる。

 別の触手がキャビアパフェを持ってきた。それを、ありがたくいただく空夢風音。器用にキャビアパフェを風音に食べさせてくれるクラーケン。

 別の触手であれ乗りたいってだだっこしている子どもを高い高ーいしているのが視界の端に入った。

 ただココナッツジュースを飲んでいる時に思ったがトイレ大丈夫だろうかという心配が浮かび上がった。さすがにこの捕らえられた状態でトイレまで気遣ってくれるとは思えないし。

(汗かきまくった上にさっきトイレに行ったからトイレは全然大丈夫だけど……)

 ずっと、風音をとらえた姿を、見せつけるようにしている。いやむしろ、ひわいな情景を触手の角度を調整してよりひわいに見せつけようとしている風にすら見える。

 正直、風音には

(このクラーケンえっちな男の人が乗って操作してない……?)

 そんな疑問が浮かんでくる。

(それなら人々ののんびりムードも納得……納得できないです! こんな! こんな辱めを好きな男がいる場所で、晒されるなんて!

 好きな男に格好良いわたしを見せたいのに、どうして、彼に、昨日からパンツばっかり見せちゃうのぉ! 泣きたいです……!

 パンツじゃなくてかっこいいわたし! 見せたいのはパンツじゃなくてかっこいいわたし!)

 と、そこにひよひよと桃色に輝く半透明の触手がやってきた。10本。手の指の本数だ。

「助けてあげるよー」

 さきほどメタメタに喧嘩してわたし的好感度最悪の妖怪春女だ。

(でも、辱めエンドレスなこの状態から助けてくれるって言うなら、好感度上方修正してもいいかもしれません)

 そんな風に思っていた風音だったが。

 ぴらっ。

 桃色の触手が風音のスカートの前部分をめくる。

「あの、そ、操作難しいんですか?」

「うんー、ごめんねー」

「じゃ、じゃあしかたないですね。は、はやく、スカート元に戻してわたしを助けてください。

 彼にこんな姿ずっと見られちゃうの頭の中がぐちゃぐちゃになりそうで、正気を保てなくなるほど恥ずかしいので…………」

「うんー。そいえばパンツ変えた? さっき見たパンツと違うけど白なのは同じだけどさっきよりは大人っぽい……何ィ、わたしの言葉気にして急いで着替えたの? そんなに気にしなくていいのに~」

「気にしますよ! そりゃあ、あんだけ言われたのですから……」

 さゆが空飛べることを風音は知らない。彼女がクラーケンくらい膂力で勝てることを風音は知らない。

 さゆがいたずら好きな妖怪って事は知っていたが、彼女はそれを甘く見ていた。

「う~ん」

 うんうん唸るだけで、なかなかさゆが助け出してくれない。ピンクの触手は風音の体を撫でたり通り過ぎたりするばかりである。

「あの早くしていただけると嬉しいと言いますか、もう、彼にこんな姿下から見上げられて、そろそろわたし正気保てなさそうなんですが…………」

 といいつつビクッ、ビクンとさっきから太もも無理矢理動かしてパンチラ防御できないか風音は足に力をこめ続けている。

 だが、このクラーケンは霊波動や魔力をある程度封印するという特技、触手の牢獄(ジェイルテンタクル)を持っており、相手の超能力の出力を1/5x触手で巻き付いた回数にまで弱らせる。

 今の風音の場合両手両足で4なので、霊力1/20である。

 撒きつかれた相手は、弱まったパワーで脱出できなければ助けてもらうしかなさげである。

「あほがみぃ~るぅ~豚のけーつぅぅぅぅぅぅぅぅ~~! 助けなーいもんね~! そのままサービスカット息子さんに見せ続けて興奮で頭沸騰するがいいわ! 恥ずかしさで暴走した恋心で頭沸騰させなさいー!」

 お尻ぺんぺんをしている桜雪さゆが見える。

「~~~~~~~っ!」

 風音は叫ぶ!

「こっのいたずら好きの妖怪め~~~~~~! あなたなんかを少しでも信じたわたしがバカでした! お前なんか豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ~~~!」

 顔を真っ赤にして空夢風音は思いっきり滅茶苦茶に叫ぶ。滅茶苦茶に体を動かすが、触手はほどけない。

「あああああぁぁあぁぁぁぁああぁ! ほどけない! ちくしょう! なんでわたしの恋はまともな流れにならないの!?」

 口調までかわって、悔しがる風音。

「パンツ見せびらかしながら怒鳴られたって全然怖くないもんね~~!」

 桜雪さゆは下からにこやかに笑ってそう返す。


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