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太陽よ、ムーンショットを止めろ!  作者: 白い月
ファブリスって意外と文化混ざってる?
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表へ出ろ 裏に出ろ 東にでろ

「ほい。ついたよ~バランス崩しそうになったら言ってね! 支えてあげるから」

「はい」

「大丈夫みたいだな。腰抜けただけならそろそろ治るでしょ下半身も動くようになるはず」

「はい」

「汗ちゃんと拭いて、水、ちゃんと飲みなさいね。せっかくの美人が台無しだよ。拭くもの持ってなかったらわたしの上げるから」

「わ、わるいですそんな」

「いいよ、ハンカチ1枚くらい」

 とミハエルはズボンからハンカチ1枚取り出して風音の手に握らせる。と、そんなミハエルの手を風音は両手で包み込む。

 言わずもがな、ハンカチを受けとるには片手で十分である。

「洗って、返します」

 とウルウルした瞳でミハエルの手を両手で包み込んで、そう答える風音。

「いいよ、君が持っておきな」

 とミハエルは気楽に言う。

「そんな……」

  と自分の手にある彼のハンカチとミハエルをかわるがわる見つめて、ウルウルした瞳でつぶやく風音。

 とそんな時に風音はミハエルのハンカチにある物がついているのに気づいた。

 ミハエルの髪の毛である。

(……あ。おまじないに使える……。大事にとっておかないと。彼の髪)

 それには目もくれず、というより気づかずにミハエルは近寄ってきたさゆと話した。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「じゃあ、そゆことで~」

 さゆは、ミハエルに耳打ちした後かき氷を持ったままお店の外へ出る。

 海だしそこらへんに合った建物の作りとして壁は少なめである。いわゆる海の家に近い。

 そして、空夢風音そらゆめかざねに自分の討伐を依頼していたテーブルの人達にふざけているのがまるわかりの変な顔を向ける。

「男にパンツ見せビラかし女に頼らずに、アンタらが直接きなさいよ! 風音は面白くもないパンツ見せて男誘惑するので忙しいからさ!」

 テーブルの人たちは、居心地が悪そうにさゆを無視して食事をとる。

「くっっ。面白くもないパンツって何ですか! わたしは、わたしは、パンツみせびらかす…………つもりじゃ……ヒック……ふぇぇ……」

 風音が悔しさで涙を流す。鳴き声も少々漏らす。

 だが、桜雪さゆの今の『おちょくり』ターゲットは風音ではない。

 ので彼女は無視する。

「表へ出ろ」

 さゆが妖怪退治依頼人へ出てこいと挑発する。手振りでカモーンとしながら。

「表へ出ろ……! 表へ出ろ…………! 表へ出ろ……! 表へ出ろ……! 表へ出ろ」

 桜雪さゆが変な顔をしながらしつこく言う。

「表へ出ろ表へ出ろうるっさぁ~い! アンタその芸やってわたしたちまで仲間だって思われるでしょーがー!!」

 答えたのは、妖怪退治依頼人の皆ではなく、水鏡冬華だった。当然表からテーブルまで聞こえる声で表へ出ろといっているので水鏡冬華たちにも聞こえる。

 ミハエルのテーブルの皆は皆笑いムードである。

「ふふふっ、うふふふふふふ!」

 表へ出ろ連呼がリィルのツボに入ったらしい。笑い声を我慢できずに漏らす。食べていたスパゲッティを口から吹き出しながらこぼすリィル。

「表へ出ろ……! 表へ出ろ…………! 裏に出ろ! 東にでろ! 表へ出ろ! シルブプレ? 分かりますねシルブプレ? 裏に出ろ! シルブプレ? 東に出ろ! シルブプレ?」

「ゃかましいんじゃーーーーーーーーシルブプレまでつけちゃってもう!」

 水鏡冬華がツッコミを入れる。

 無視を決め込んでいる妖怪退治依頼人の皆に負けず、桜雪さゆは表へ出ろ! にシルブプレ? をつけ始めた。かき氷を食べながら。

「結局どこ出りゃいいのでーすか~? 表? 裏? 東?」

 流れでミハエル一行として食事もおごってもらっている忍者エルフのレティチュは疑問の声を発した。

「そんなんあの春女に聞いてよ。シルブプレ?」

 水鏡冬華にまでシルブプレが伝染してしまった。

 と、妖怪退治依頼人のグループが席を発つ。

 だが、さゆに応じるわけではないらしいのは雰囲気で分かった。

 妖怪退治依頼人たちは桜雪さゆと目を合わせようともせず、無視して立ち去ってしまった。

 さゆも深追いはせず、

「表へ出てきた! けどそのままオルヴォワー? テーブルの食事まだ残ってるよ? ボナペティ!」

 さゆのそんな言葉にも答えず、妖怪退治依頼人のテーブルには俯いたままの空夢風音1人だけぼつんと座っていた。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「ノリわる~いなー」

 そう呟くさゆ。

「いや、アンタのきついノリについていける人ってごくわずかだから」

 水鏡冬華が半眼で呟く。

「でさ。あの集団堕天使の糸ついてたよね。だからさゆは妖怪退治依頼人の方をターゲットにしたのよね?」

 と、水鏡冬華が桜雪さゆに聞く。

「そうそう。霊力あれば見える精神操作の堕天使の糸にすら気づかないんじゃあ霊波動士としてはまだまだねぇ~風音も。ま、堕天使側も見えにくく細工はしてたけどねえ」

 隣のテーブルで食事もせず俯いてる空夢風音に聞こえるように、さゆは大きな声で言う。

「ねぇねぇ? 真の敵誰か分かったでしょ? だったらわだかまり水に流してさぁ~手取り合わないわたしたち? シルブプレ?」

 とさゆが握手を求める。

「あなた、どの口で、そんなこと…………うぅぅうっ、シル、しゆブプうレじゃない! しゆ、しゆぶぷりぇじゃない、あほ! ばか! うぇえええっ」

 泣きじゃくりながらさゆの手をペシンと叩く風音。

 風音はさゆの顔を見返した途端悔しさが蘇ってきたのか口をへの字に曲げてフルフル震わして大粒の涙をこぼし始めた。そして泣きながら反論しているので口がうまく動かない。

 余裕な態度でいて男にも負けないって表には出さずとも腹の内では思っていた女の、公衆の面前でプライドをへし折られた恨みは深い。


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