霊波剣士
ファブリス王都の大きな飲食店。
ミハエルたちはリディアたちフローター・クレーヴと合流した後、その飲食店に入った。
「フローター・クレーヴのみんなも好きなものたのんでいいよ、秘密の店はいれたお礼ね」
「ほんとですか~? よし、みんな好きなもの食べよぉ~」
リディアの声にフローター・クレーヴの皆が盛り上がる。
「皆さん歓迎ありがとうございます。この空夢風音大変うれしゅうございます」
ミハエルたちの近くの席である一人の女が歓迎を受けていた。歓迎の際に自らを空夢風音と名乗ったその女は、髪は黒のロング、セーラー服を着ていた。
が、その上にミニ浴衣を千早を着るがごとく羽織っており、セーラー服はかなりのミニスカだがミニ浴衣によりパンチラを防ぐ感じのようだ。
そして小太刀を2本腰に下げている。
「ご依頼を受けました通り、十二単の妖怪はわたしが退治いたします。
未熟者ですが、頑張りたいと思います」
正直ぱっと見20歳くらいに見えるが、ずいぶん落ち着いた雰囲気を醸し出している彼女。
だがとりあえず聞こえたので気になるフレーズが出たので注意を払う。
「十二単の女て」
ミハエルがおそるおそる口に出す。
「あのアホ女、何かトラブル巻き起こしたわね!」
水鏡冬華が呆れ半分に愚痴る。
そして携帯魔導端末のメッセージプログラムに何かトラブルの情報が桜雪さゆ本人から来ていないかチェックする。
と、ミニ丈のセーラー服にミニ浴衣を羽織る事でパンチラを防いているであろう(ミハエルはそう勝手に判断した)女がミハエルの所まできた。
(何か用ですか?)
ミハエルは先手で声をかけようとしたが、彼女の顔を見てなんとなくそれはやめにした。
(なんか、この子わたしを見る目おかしいぞ。そうまるで生霊を飛ばしていた時のリィルのように)
リィルの方を見やるミハエル。リィルは笑顔で彼に応える。
のんびりしてるようでいて勘はさえわたっているミハエル。元の子どもからの性格は勤勉化ではあるが、瞬間瞬間は勘で動く。そのおかげで命を拾った事も多い。
「すみません。先程から背中で霊波剣士の気配がするのでちょっと挨拶に参りました」
霊波剣士。ミハエルたちはそんなフレーズ聞いた事はないが、霊波動士の剣使い限定バージョンか? ということで納得しておくことにした。
ここらへんパラレルワールドで定義が入り交ざっててややこしい。
魔術は人間が使うもので魔法が神の御業なんてミハエルやアリウスにしたらなんじゃそりゃ? な分け方を豪語するパラレルワールドの住民もいるし、呪禁こそが神の技といっても理解しない人もいる。
エーテル(イーサ)の呼び方がマナ、魔力、霊力、妖力、サイキック、チャクラ、気と枝分かれしているだけなのに、と説明してすんなり理解してくれるニコラ・テスラのような人は少ない。
だが、とにかく、
(冬華並に巨乳じゃないこの子? セーラー服おっぱいで持ち上げられてお腹隠すには丈足らずにお腹丸出しに近いじゃないか。
うわーもみもみしたーいそして彼女の反応を楽しみたーい。
そして足が男好み。女だともうちょっと脚痩せなきゃって思うんだろうか。太さイイ感じそういう足の子ってお尻も大きいのよね体の仕組み上)
という煩悩丸出しの欲望をすまし顔でムラムラさせていた。ミハエル――おっぱい貴族である。
「どこのパラレルワールドからこの星にお越しに? 霊波動士ならわたしたちのことだけど、霊波剣士何て聞いた事もないぞ。ねえ冬華」
「そうね。霊波動を扱う人を剣士限定にする意味を感じられないわ」
霊気を操る達人の水鏡冬華がそういう。そしてそういいつつ冬華は、ミハエルの足を踏んづける。サリサとフィオラもミハエルの足に攻撃する。しっぽで。
「そっ、そんな。わたしは霊波剣士の名門に生まれて幼いころからその修練をつんだのです……だから、そ、そんなこといわれても困ります」
(この子、男に免疫全くない感じか?)
水鏡冬華はミハエルと話し始めたとたんに顔を赤くして、耳まで赤くしている空夢風音を見てそう思った。
女子高の話で以前聞いた、中高一貫で6年女だけの生活して女子高から大学へ入った途端、男との接し方がわからず、度を越して遊んでしまう、男の虜になってしまう。そんな匂いがした。
男の免疫がない子は、一気に溺れてしまう子がいる。
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地球出身の霊波剣士と名乗った彼女は再度本名を明かした。空夢風音となのった。
身長163cm、腰まで伸びた長髪。顔は穏やかな顔、きつい感じは全く見受けられない顔だ。目も全然釣り目じゃないし。胸は水鏡冬華よりはやや小さいか同じって言えるくらいには爆乳で、黒のミニスカートを翻しながら上品に挨拶した。
彼女はセーラー服に小太刀を複数本下げていて、打刀も持ってはいるがあまり使わない様子に見えた。
(胸のあたり蒸れそうね……こんな海と森の環境じゃ。気をつけないと胸の辺りクサくなりそう)
自分の爆乳を棚に上げておいて水鏡冬華がそういうことを。
「霊波剣士ってなんなんだい?」
再度それを口に出すミハエル。
(霊波動士という言葉なら、知っている。冬華もそうだしさゆだってそうだしサリサも波澄もそうだ。つまり霊気を扱う人をそうひっくるめて呼ぶ。
剣士だけ別に呼ぶ意味って何? と思ったからなんなんだい? がでた)
「空夢家は代々妖怪退治を行ってきました。その道では結構有名なんですよ。うふふ」
「ちょっとー妖怪退治ってわたし殺されちゃうの? こわ~いうんちぶりぶり!」
怖さを何も感じてない感じのさゆの減らず口がさく裂する。
さゆは、食堂の上空でふよふよしていた。
「木花咲耶姫に使える妖怪雪女だよ。なんで妖怪だと邪悪じゃないといけないのよ。半竜は邪悪だけどねおっぱいが大きいという邪悪」
「おい! アホ女!」
メッセンジャープログラムで水鏡冬華はさゆと会話する。
「アホ女じゃありませ~ん! 春女ですー!」
メッセンジャープログラムでさゆは水鏡冬華にそう返す。
「うるっさいわねえ! さゆってば」
と携帯魔導端末にぐちってから、水鏡冬華は、
「ともかく、妖怪って言うだけで全部邪悪と決めつけるのはわたしたちの地球――日本とは違うわね。
こういうのマンデラエフェクト? っていうんだっけ? とにかく風音とわたしたちの日本は同じ世界じゃないわね。並行世界の日本、パラレルワールド」
「わたしも違和感が……。人間となかよしな妖怪なんて見たことありません。妖怪って言えば倒すべき魔物と学んできました……」
と風音も言葉を漏らす。
「あ。名乗りまだだったわね。わたしは水鏡冬華。よろしくね」
「あ、はい。空夢風音と申します」