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ミンチにされてからの異人生再スタート ~剣と魔法は、割と得意です~  作者: 蛙塚遊覚
第1章・始まりの街で始まる。
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第6話「森での狩りの日々」

 クローディアは、何とか4級のクエストを1日に1つはクリアしていた。

それを続けていれば、10日もあれば四等級に昇格出来るであろう。

既に、その半分のクエストは消化済みである。

募集自体の少ない4級クエストを連日受けられるとは、これでも順調である。


元から目立つクローディア故に、寄合所に立ち寄る冒険者らから注目を浴びていた。

幾人かの冒険者からは、パーティーへの勧誘も受け始めていた。

「いえ、私なんかまだまだですから、皆さんの足手まといになっちゃいますよ」

そう言いながら、彼女は全ての誘いを断っていた。

だが、内心、足手まといに自分がなるとは思ってはいなかった。

(寧ろ、あなた達の方が邪魔なんだよね。しかも、人数が増えれば、報酬も分け合うようになる)

別に、性格が悪くて、傲慢になっているからではない。

彼女にとっては、この街は通過点でしかない。

この街で満足しているような相手は、例え数年のキャリアがあっても、仲間になるメリットが無い。

(その考え方が、傲慢なのかな?)

でも、仲間を探すならば、最低限、この街から出たいと思って行動している人物がいい。

残念ながら、そんな人材は、今はいないようだが。


 今日もクエストを受注すると、街の近くの森へと向かう。

この街のクエストの大半が、この森か、その周辺にある原野である。

そこには、獣もモンスターも多く生息している。

今日、受けて来た4級のクエストは、グレイウルフ3匹の狩猟だ。

こいつは、小型の狼で人里近くにも出現する。

厄介なのは、獲物を解体している時に、それを横取りしようと近付いて来る事もあるのだ。

何度か、ワイドホーン鹿の解体中にクローディアも狙われた事があった。

その時は、難無く撃退したのだが。

今回は、その相手が狙いだ。

ただ、連中は何匹かの群れを作って行動を共にしている。

余りに数が多い場合には、手に負えないかもしれない。

今まで遭遇したのは、2,3匹の小さな群れで、その位ならば彼女でも充分に対処が出来る。

(今回は、その程度の群れに2つ位、遭遇できればいいな)

狼の肉は食べはしないが、その毛皮はなかなかに買い取り額も良い。

彼等を狩るのは、人や家畜が襲われないようにする為もあるが、その毛皮に需要もあるのである。


森に入ってから1時間弱。

周囲に何やら気配がある。

木々の間を伺うと、母子のワイドホーン鹿だ。

雌の鹿は、角も小さい。

こちらの気配を察してか、鹿の親子が遠ざかり始めた。

まだ、距離があるので、鹿も警戒がまだ薄いようだ。

と、そこへ何者かの影が襲い掛かった。

小鹿を狙ったようだが、それを母親が後ろ脚で蹴り飛ばした。

逃げる親子の鹿。

襲い掛かったのは、グレイウルフだ。

その狼が親子を追う。

その後をクローディアも追った。


人間の中でも、クローディアの足は遅い訳では無いが、獣達の速度には敵わない。

段々と距離を開けられていたが、逃げる鹿達を前方で何かが襲った。

捕まる小鹿。

最初のグレイウルフが、仲間が待ち伏せする場所に親子を追い込んだらしい。

獣らの足が止まった。

そこへ、クローディアが駆け付ける。

グレイウルフは、3匹。

丁度、クエストの達成条件だ。

小鹿を抑える2匹のグレイウルフと、急に現れたクローディアに対峙する1匹。

クローディアに飛び掛かる狼だが、彼女の短剣が空を切る。

「ぎゃんっ!」

悲鳴を上げて転がった狼。

そこへ容赦なく、クローディアが首に一撃した。

動きを止める狼。

仲間を倒された残りの狼らも、獲物に構っている場合ではない事を悟ったようだ。

2匹で、クローディアを囲もうとしたが、その1匹を彼女の呪文が襲う。

そして、もう1匹に切り掛かる。

2匹同時は難しいが、それでもダメージは与えている。

呪文と剣戟を交互に放ち、狼らを迎え撃つ。


それぞれへの止めは、短剣で刺した。

襲い来る狼らの攻撃を避けながら、確実に一撃を繰り出す。

やがて、狼達は動きを止めた。

戦いが終わり、周囲を見ると、親子の鹿の姿は消えていた。

あの小鹿も逃げ伸びたようだ。

クローディアは、狼の毛皮剥ぎの作業を始めた。


 しばらく休憩をすると、再びクローディアは歩き始めた。

どうせならば、もう少し稼ぎが欲しい。

今日は、まだまだ時間も早い。

それに、まだクリアしていないクエストもあった。

狼の毛皮は、毎度の事ながらバックパックに収納した。

森の中は、静かである。


(んっ? あれは?)

森の下生えのある辺りで蹲る獣達。

2匹のグレイウルフが、獲物を漁っている。

(これは、いただきだな)

こちらの気配には、まだ気付いていない。

まずは、弓で先制だ。

1匹でも倒せると良いのだが。

矢を1匹に集中し連射すると、そいつは、ばたっと倒れた。

もう1匹が慌てて逃げ出そうとしたが、そいつにも連射だ。

2匹目も地面に倒れたが、まだ息があったので短剣で止めを刺した。

こいつらの食べていた物を見ると、ワイルドボアの子供のようだ。

狼の毛皮剥ぎを始めた。


 作業が終わり掛けた頃であった。

(また、何か気配がするな)

もしかして、狼やワイルドボアの匂いを嗅ぎ付けて来た別の獣であろうか?

(これは、作業する場所も考えないとな)

解体した獲物の血の匂いなどが、他の物を引き寄せてしまうかもしれない。

誰かを警戒に立てられないソロの悲しみでもある。

だが、作業をしながらも、クローディアが周囲へ意識を配る事は忘れない。

作業を中止すると、武器を構えた。


何かが、木々の間を縫って来る。

何だか、獣ではないようだ。

寧ろ、人間に近い。

(もしかして、街の人か他の冒険者かな?)

がさがさと枝を掻き分け、こちらの方に近付いて来る。

それも、複数いるようだ。

(まさか、こっちの獲物を横取りするつもりじゃないよな?)

冒険者同士が争うとは、聞いた事は無いのだが。

こちらから声を掛けようかと思ったが、もう少し様子を見よう。

太めの木の裏側に身を隠し、向かって来る相手を観察するクローディア。

枝の間から、そいつの顔が見えた。


(えっ? 緑色?)

そいつの顔が見えたのだが、濃い緑色の肌をしている。

何かを被るとか、塗っているのではなさそうだ。

顔は、猿か大昔の原人か何かに見えた。

身長は、150cmも無い程に低い。

子供の何かなのだろうか?

体には、何かの毛皮を部分的に巻き付けただけである。

そして、その手に木の棍棒が握られていた。


(何だ? あいつは?)

見た事の無い生き物である。

でも、何となく、その姿を見ていると、ある名前が頭に浮かんだ。

(まさか、あいつらは、ゴブリンなのか?)

クローディアに、確証は無い。

だが、あいつらの姿を見た時に、思い付いたのは、その名前だ。

(どうする?)

確か、寄合所のクエストに、ゴブリン討伐もあった。

だが、それは5級からのクエストであるので、まだ彼女は受注した事が無い。

今の彼女では、受ける事のできない上のランクだからである。

でも、ランクが高いという事は、それだけ難易度の高い相手のはずである。

しかも、見た目は大分違うが、初めて見た人型のモンスターである。

今までに倒した奴は、獣やその他の生物を大きくしたような物ばかりである。

それに比べれば、ゴブリンの方が人に近い。

(そんなのと、戦えるのだろうか?)

いろいろと、不安はある。

このまま去れば、逃げ切れるかもしれない。

だが、折角仕留めた、まだ処理をしていない獲物を諦めなければならないのだ。

それに、こいつらと戦うのも、遠い日の事ではない。

(どうする?)


いきなり、奇襲するのが最も良いかもしれない。

こいつらの実力も解らないし、数は向こうの方が多い。

今、目の前にいるのは、2匹だ。

だが、もしも違う物であったのならば、どうなのだ?

相手の反応を見てから、対処するのが正しいのでは?

こいつらが、友好的な種族である可能性も0ではないのだ。

もし、そんな相手を攻撃してしまったら。

ああ、まだゴブリンと出会うとは思ってもみなかった。

ゴブリンだと、決め付けてもいけないかもしれない。

もっと、いろいろと聞いておくんだったな。


悩んだ結果、上策とは思わないが、まずは自分の姿を晒してみる事にした。

そして、こいつらの反応を見る。

こいつらが、逃げるか、友好的な態度を取るならば、こちらも攻撃を控える。

だが、攻撃して来るならば、その時は全力で戦う。

短剣は抜き身で持たないが、その柄には手を置いておこう。

クローディアは、隠れている木の影から、そいつらの前に出た。

「やあ、こんにちは」


一瞬、その緑色の生き物は、驚いたようだ。

互いに顔を合わせた。

小声で、短く何かを言い合っている。

その意味は解らないが、それなりの知性もあるようである。

だが、しばらく話し合っていた奴等の態度が変わった。

そいつらは、クローディアの事を見ている。

顔から段々と下に目線が下がって行き、胸や腰の辺りを特にじっくりと見ているようだ。

奴等の顔が歪んだ。

ある種の笑い顔のようでもあるが、微笑んでいる訳ではない。

卑しい笑い方だ、それはクローディアの事を獲物だと考えているような顔なのだ。

その顔を見た瞬間、クローディアは今までに感じた事の無いような悪寒を覚えた。

(こいつら、俺を獲物として、いや女として見ていやがる)

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