表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミンチにされてからの異人生再スタート ~剣と魔法は、割と得意です~  作者: 蛙塚遊覚
第1章・始まりの街で始まる。
8/41

第5話「冒険者らの事情」

 森で、ワイドホーン鹿を狩って来たクローディア。

その他のクエストも無事に終了させ、街へ戻って来た。

寄合所に入る前に、バックパックに入れて来た鹿を取り出し、中に引き摺って入る。

「ああ、クローディアさん、お帰りなさい」

アンナに出迎えられ、今日の報酬を受け取る。


「クローディアさん、もしも獲物の解体とか知らないようでしたら、このワイドホーン鹿で試してみませんか?」

アンナの勧めで、獲物の解体を習う事にした。

確かに、解体の方法を覚えておけば、獲物を切り分けて必要な部分だけ持ち帰る事も出来るだろう。

それに、野外で狩りをした時に、調理するにも知識として知っておくのは無駄ではない。

アンナに教えられた、案内所の解体場へと向かった。

いつも行く案内所の建物の裏手に、小さな別棟があった。

そこの1階に、大きめの机や流しのある場所が解体場であった。


中年の男性職人が出迎えて、クローディアに解体の流れやコツを教えてくれる。

「慣れれば簡単さ。姉さんの持って来た鹿は後でやるとして、まずは小さな奴から教えてやろう。」

そう言うと職人は、テーブルの上に少し小さめのワイルドボアを乗せた。

そこで、獲物の血抜きや、解体方法、皮の剥ぎ方なども習った。

一度で覚えられる訳でもないが、これで、一通りの流れは解かった。

続いて、今日の獲物の鹿の解体を始めた。

「まあ、後は、数をこなすだけだよ」

職人には、そう言われた。

(そりゃ、そうだよな)

それでも、職人の教え方が上手かったのと、クローディアの飲み込みの早さもあるのか、何とか1人でも出来そうなレベルにはなっていた。

(これも、ステータスの効果なのか?)


 それから、クローディアは、3級のクエストを積極的に受け、順調にクリアして行った。

狩りをした後は、獲物の解体にも挑む。

自分で解体するのにも慣れて来たし、自ら行う事でその報酬も増えていた。

そのまま獲物を丸ごと街に持ち込むのではなく、解体し肉と皮に分けるだけでも、報酬が1割は増えていた。

そんな日々が続き、ついに三等級に昇格した。

これで、4級のクエストまでの受注が可能になったのである。

「おめでとうございます。順調に上位のクエストをクリアなさっていますが、それでも昇格のペースが早いですね。流石は、クローディアさんですね」

アンナも驚いていた。

クローディアにしてみれば、大した事でも無いのだが。

でも、街の多くの初心者冒険者らは、そうは行かないのだ。

彼女よりもキャリアが長くても、等級が低い者もいるのだ。

二等級に上がるのにも、1年以上掛る事も珍しくない。


クローディアも、このシューレス市で冒険者として活動を始めて気付いた事があった。

それは、この街のギルドに、高位の冒険者がいない事である。

昇格の為に試験のある五等級以上の冒険者が、数える程しかいないのだ。

この街の冒険者の9割が、四等級以下の冒険者なのだ。

それは、この街が初心者向けの場所であるのもある。

ここでは、周囲に強力なモンスターはおらず、難易度の高いクエストがほぼ無いのだ。

だから、より上位に進みたい冒険者は、他の街に去って行くのだ。

だが、残された者らが、必ずしも冒険者に成り立ての者とも限らない。

冒険者になって、10年を過ぎても四等級止まりの者も少なくはないのである。

彼等は、敢えて上の等級に昇格しない者なのだ。


冒険者は、華やかな職業でもない。

途中で、諦めた者も少なくはないのだ。

だが、クローディアは違った。

彼女には、もっと上に進みたい願望があった。

どうせ、武器も魔法も使えるし、冒険者になったのだ。

その高みを目指すのは悪くない。

こんな形のある成果が出せるなんて、元の世界の仕事では滅多に無かったのだから。

その遣り甲斐のレベルが違うのだ。

(もう少し上の等級、五等級に上がったら、他の街に行ってみるかな?)

まずは、そこを目標にしよう。

その前に四等級に昇格するには、5級のクエストを10回クリアする必要がある。

だが、この街では5級以上のクエストが極端に少なくなる。

毎日、そのクエストが張り出されるとは限らないし、他の冒険者も欲している事もある。

次からの昇級は、難しいのかもしれない。


 朝、寄合所にクローディアは来た。

掲示板をチェックしていると、(おっ、あったな)

5級のクエストの張り紙を見付けた。

内容は、「ワイルドボア1頭の狩猟」である。

ワイルドボアは獣ではあるが、今まで戦って来た様々な相手に比べて、体力も力も桁が違う相手である。

こいつは猪で、先日の解体場での作業で、その姿も見ている。

多くの場合、数人の冒険者で受注するクエスト内容である。

クローディアは、悩んで末に、それを受ける事にした。


「お1人で、大丈夫ですか?」

受付嬢のアンナもやや心配している。

「まあ、何とかするよ」

「そうですね。クローディアさんならば、大丈夫かもしれませんね。でも、無理はしないで下さい。ペナルティもありますが、ダメだと思ったら逃げてくださいよ」

「解っているよ。無理はしない。安心してくれ」

クローディアは、街を出ると、近隣の森へと向かう。

さて、初の5級のクエである。

狩場は、ワイドホーン鹿などがいた森の奥である。

実は、ワイドホーン鹿を狩っていた時に、その痕跡は何度か見掛けていた。

牙を研いだであろう抉れた木の幹、泥浴びをしたと思われる小川の畔の泥地。

そんな所で、ワイルドボアの痕跡を幾度も目にしていた。

ただ、その時は、スルーしていただけだ。

今回は、その痕跡を見付けたら、それを追う予定だ。


その他にも、受注したクエストを途中でもクリアした。

流石に4級の物は受けてはいないが、3級の物を幾つか受けていた。

少なくとも宿代位はそれで確保しておかないと、ワイルドボアの狩りを失敗した時には、赤字になってしまうからだ。

かと言って、4級の大物と同時に達成出来るかは、微妙だ。

それに、4級の大物まで狩って、その上でワイルドボアまで持ち帰ったら、どう思われるのであろうか?

仕留められても、それを全部、1人で持ち帰れば、怪しまれてしまう。

本当は、バックパックに数頭を仕舞う事は出来るのだと思うのだが。


森の中を随分と進んで来た。

途中、何匹かの獲物を狩っている。

小物は、既に解体し、肉と皮に分けてバックパックに入れてある。

バックパックは不思議な物で、中に入れておいた他のアイテムと混ざったりはしない。

だから、獲物が血で濡れていても、他の物が汚れたりはしない。

(けど、液体をそのまま入れられるかは解らないな。それをどう取り出したら良いのかも解らないし)

今日は、あと、ワイルドボアを狩猟すれば、全ての受注が終わるのだ。

だが、まだ、その痕跡さえも目にしていない。

(獲物って奴は、探し始めると何故か出て来ないよな)

それが、不思議なのだ。

探してもいない、或いは、今日は既に狩り終えた物ばかりに出くわす。

時として、追加で倒す事もあるのだが、もう今日はいいだろう。


やっと、木の幹に牙を研いだ後を見付けた。

クローディアの膝の高さ辺りの幹が、何かで抉ったように傷付いている。

この木の裂けた傷は、まだ新しい物だ。

そいつが通ってから、それ程の時間は経っていまい。

他には、痕跡は無いだろうか?

近くには、小川もある。

そこに、蹄の付いた足跡を見付けた。

(これは、ワイルドボアの物か?)

足跡の先へと向かう事にする。

木々を掻き分けて進んで行くと、

(いた。あいつだ)

森の中、地面を掘り返している小柄なワイルドボアが1頭いた。


体長は2mを切っているので、まだ成熟しきってはいない個体であろう。

だが、ワイルドボアには違いない。

距離にして30m弱。

初手は、ショートボウで行こう。

弓を構えると、照準を付ける。

狙いを固定したら、連射で3発の矢を連続で放ち、後は、切り込むつもりだ。

あいつが、逃げ出す素振りを見せたら、呪文も使って足を止め、止めを刺す。

クローディアは、そこまで描いて行動を開始する。

最初の矢が放たれた。


狙いたがわず、放たれた矢は次々とワイルドボアの背に刺さる。

3本の矢が突き刺さり、奴はやっと周囲を伺う。

普通なら、この森でワイルドボアを狙って来る相手などいない。

その油断を突いた奇襲である。

素早くクローディアは、弓からショートソードへと武器を交換する。

まだ、距離があるので、1発ライトニングスラッシュだ。

矢に続く呪文の攻撃を受けたので、猪の方でもクローディアを認識した。

そして、その身に向かって走り始める。

意外に素早い動きではあるが、彼女の回避には合わせられない。

体も牙も掠りもせずに、クローディアの横を走り去るワイルドボア。

しかし、擦れ違う時に、ざっくり短剣で猪の体が切られた。


クローディアの短剣も、魔法で威力が上げられた物だ。

刃は少しばかり小さいが、充分に獲物にダメージを与えられる。

その痛みが、余計にワイルドボアの闘志を掻き立てるが、そのまま突っ込めば繰り返しになる。

幾度も、短剣で猪は切り裂かれた。

(あんまり、攻撃をしちゃうと、あいつの皮がぼろぼろになってしまうな)

クローディアには、猪を倒した後の事を考える余裕も生まれていた。

幾度か、切り付けているい内に、ワイルドボアは力尽きて地面に倒れ込んだ。

(流石は森の王だな。手強かったよ)

始末した猪の解体を彼女は始めた。

皮と、体の部位を幾つかに切断して、バックパックに仕舞う。

あれだけの重みのある数々の獲物を入れているのだが、中に入れてしまえば、重さは感じなくなる。

来た時と、変わらぬ鞄の重さしかない。

クローディアは、仕事を終え、街へと帰り始めた。


今日は、依頼を受けた数はそうは多くはないので、街へは早く帰れる。

だが、ワイルドボア1頭を狩れば、昨日までの収入の倍近くの報酬となるはずである。

帰る途中、また、薬草類を集める少年少女冒険者らを見掛けた。

彼等の方が、冒険者としては彼女の先輩である。

クローディアがこの仕事を始めたのは2週間程の事ではあるが、彼等の多くは既に数ヵ月のキャリアがあるのだ。

だが、彼等は初期の資金が少なく、まともに装備も整えられない。

防具らしい物を身に付けている者はほとんどいないし、棍棒でもあれば、武器は良い方なのだ。

棍棒も決して弱い武器ではないのだが。

その武器も、店で買うのではなく、手頃な木の枝から自分で作り出した物が多いのだが。

彼らが、今のクローディア並の装備、それも魔法の掛っていない物であっても揃えるのに、数年は掛かるであろう。

しかも、見て確認した訳ではないが、ステータスも彼女程に恵まれてはいないはずだ。

(まだまだ、自分の事は鍛えて行かないといけないが、今でも他と比べたら充分にチートだろうな)

それに、彼女には、この街の冒険者で終わるつもりもない。

(鍛えれば、遥かに強くなれるはずだ。何と言っても、俺の能力は上限が無い。この世界で、最強を目指す事だって夢じゃないだろうな)


彼等、若き冒険者らに迫るウォーターリザードがいたが、そっとクローディアは始末した。

(別に同情じゃないさ。これも、稼ぎの足しにさせて貰うから)

大トカゲの体を切り裂くと、その魔石を取り出した。

そして、周囲に危険が無くなった事を確認すると、再び街へ向けて歩き始めた。

少しばかり、投稿済みの前の話を修正しました。

まだ、改修は途中の段階ですが、女神の名前なども決めています。

もし、よろしければ、再読してみてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ