第2話「初の戦闘経験」
初めての冒険者のクエストを2つ受注したクローディア。
その内の薬草集めは、もう終わっている。
後は、モンスター退治である。
モンスターと言っても、初心者向けのアッシドスラッグという大型のナメクジが対象である。
(ナメクジだから、日向にはいないだろうな。探すなら、日陰かな?)
森の中を歩き回るクローディア。
相手がナメクジだからか、気配などは感じない。
しばらく歩き続けていると、木に何かがへばり付いている。
(うっ、気色悪る)
ナメクジ自体、好きではない上に、そのサイズが50cm程ある。
(こいつが、アッシドスラッグだよな?)
自分の知っているナメクジを数十倍にも大きくしたような、少し紫色がかったそれがいる。
こいつは、刺激をすると、酸を吹き掛けて来るそうだ。
酸と言っても、当たって体や剣が解ける程では無い。
肌に直接に当たれば、火傷したようになるそうだが。
(服に当たると、ぼろぼろになるらしいな。余計な出費はしたくないから慎重に)
念の為、クローディアは周囲を観察してみた。
すると、最初に見付けた奴がくっ付いていた木の根本の辺りに、もう1匹いた。
(うわっ、安易に木に付いてる奴を攻撃したら、こいつに酸を掛けられたかもしれない。どうする? 2匹が近過ぎるけど。そうだ、あの手があるぞ)
クローディアは、地面を這っている巨大ナメクジに向かって、左の掌を向けた。
そして、「ファイアスラッシュ!」
そう声を出すと、差し出した掌から、炎の塊が飛び出し、1匹のアッシドスラッグを包み込んだ。
火炎の魔法を使ったのである。
火だるまになり、相手が動かなくなったのを確認すると、今度は、木にくっ付いたアッシドスラッグに切り付けた。
一撃で倒せるか解らないので、切り付けると、さっと身を引く。
予想通り、ナメクジが液体を口から噴き出したが、既にクローディアは、その圏外に逃れていた。
(吹き出すのは、1m位の距離か?)
ナメクジの後ろ側に近付くと、二撃目を加えた。
ぼっとりと、切り付けたナメクジが地面に落ちた。
その後は、全く動かない。
(やったようだな)
念の為、動かなくなったナメクジを突き刺した。
だが、反応は無かった。
(ううっう、嫌な作業だな)
クローディアは、黒焦げにしたのと、切り倒したアッシドスラッグの体をナイフで切り裂く。
そして、その体内から、丸い石のような物を取り出した。
それは、「魔石」だ。
モンスターの体内にある、力の根源のような物質、それが魔石なのだ。
アッシドスラッグの場合は、2cm程の直径の灰白色の物が取り出せた。
魔石は、モンスターによって、サイズや色が違うので、区別が付く。
これを回収し、寄合所に納品すると報酬を貰え、モンスター討伐を受注していた時は、それで達成したと認められるのだ。
アッシドスラッグの討伐数は、5匹で達成なので、後は3匹だ。
(でも、大っきなナメクジは嫌だな。女性じゃなくても、あんなの好きな奴はいないだろうな)
再び、森を彷徨い歩き始めた。
歩き回っているクローディアだが、次の獲物が見付からない。
(ああ、何か、探索系のスキルとか無いと、辛いなこれは。でも、そんなスキルはまだ持ってないから)
少し、疲れたので、小休止だ。
水筒の水を飲む。
(スキルとかも、増えるのかな? 増えるとしたら、それに関連した事をすればいいのか? ああ、スキルの分岐とかも解ればいいのに)
ゲーム内なら、ただ、自分の操作するキャラの成長を眺めていればいいだけだが、こうして自分の生き死ににも関わって来ると、緊張感も違うのだが。
(さて、またナメクジを探すか)
彼女は、また歩き始める。
低木を搔き分けると、その先に泥が溜まった場所がある。
その泥の地表を見てみると。
(おうっ。沢山いるじゃないか)
数えてみると。
(6匹か、多過ぎるだろ今度は)
アッシドスラッグが、泥の中を6匹も蠢いている。
だが、その互いの距離が近い。
(このままだと、1匹を攻撃していると、別の奴に酸を掛けられそうだ)
ならば、ここも呪文を使うしかない。
今度は、右の掌をナメクジに向けた。
「ライトニングスラッシュ!」
稲妻が掌から生まれると、ナメクジを感電させた。
「ライトニングスラッシュ!」
「ライトニングスラッシュ!」
更に、別のナメクジ2匹に、続けざまに稲妻を放つ。
当たったナメクジは、びくりっと痙攣した後に、小さく丸まって行く。
(さて、これでナメクジ共を分断したぞ)
何匹か倒し間隔がばらばらになったナメクジを、短剣で切り付けては、酸を避け、再度攻撃を加える。
(さっきもそうだったが、体が軽く感じる。それから、正確に剣を繰り出している。これは女神様の特訓のお陰かな?)
残った、3匹の大ナメクジを全て切り裂いた。
(さてと、魔石の回収か。余り乗り気じゃあないが)
ナイフを弾力のあるナメクジに突き刺して行く。
(うう、まだ、この感触に慣れん!)
薬草の採取に、アッシドスラッグ討伐も終わったので、町へと戻る。
また、城門で兵士らにクローディアは、じろじろ見られたが、今度は、何の咎めも無く町の中に入れて貰った。
「ああ、あの人、戻って来たんだ。良かった」
「別に戻って来たって、それだけだろ」
「どこの宿に泊まるのかな? 食事とか誘ってみようか?」
また、兵士らがクローディアの後ろ姿を眺めていたが、彼女はまだそれを知らない。
寄合所に、クローディアは戻って来た。
受付に、受けたクエストの薬草と、アッシドスラッグの魔石を提出した。
「随分と、集めて来ましたね」
「あの、別の薬草も採取して来たんですが、今からクエストを受注して、それで達成した事にできますか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
別の種類の薬草も提出した。
「今日は、3つのクエストを達成しましたね。報酬は、薬草採取の2つで、それぞれ25シルバー、討伐が50シルバーの計1ゴールドになります」
通貨は、1ゴールド=100シルバーだ。
少々、収入が少ないが、明日からは、もっと働くか。
「それと、冒険者のランクと、受注可能なクエストのレベルの説明をしませんでしたが」
受付嬢の説明が始まった。
冒険者にはランクがあり、誰でも最初は一等級から始まる。
それが、クエストをこなして行く事により、二等、三等とランクが上がって行く。
一等級の冒険者は、1つ上の2級までのクエストが受注可能だ。
ランクを上げるには、1つ上の級のクエストを10回達成する事で、上がれる。
つまり、一等級から二等級に上がるには、2級のクエストを10回達成する必要があるのだ。
「五等級から上は、昇級に試験がありますし、必要なクエスト数も増えますから。それから、四等級からはジョブに付けます。その事は、また等級が上がった時に説明しますね」
今日、クローディアが達成したのは、全て1級のクエストであった。
昇級する条件は、まだ1つも達成してはいない。
(まあ、その辺りは、地道に上げて行こう。でも、明日から2級クエに挑戦だな)
クローディアは、宿に向かう。
宿も、寄合所の紹介で決めた。
「牝牛屋」、それが宿の名前だった。
「二等の部屋だと一晩、50シルバーで、夜と朝に食事が付くよ。風呂は無いけど、湯あみしたいなら、別に15シルバーが必要になるよ」
宿の初老の女将に言われた。
(そうか、最低でも、昼食とか考えると、1日に85シルバーは稼がないと赤字だな)
部屋に移動する。
(うん、広くは無いが、清潔でいい部屋だ。ああ、疲れた。どれ、ステータスでも見てみるか)
クローディアは、確認してみた。
「クローディア・フランツァ」、17歳、女、
Lv.2
種族:天勇人
職業:冒険者(一等級)
ジョブ:無し
HP:150
MP:135
腕力:75
体力:75
知力:80
器用度:85
敏捷性:80
精神力:75
魅力:80
運勢:70
スキル:成長特化、
片手剣:Lv.3
両手剣:Lv.1
刀剣:Lv.1
槍矛:Lv.1
小剣:Lv.2
弓矢:Lv.3
格闘:Lv.2
火魔法:Lv.2
風魔法:Lv.2
地魔法:Lv.0
水魔法:Lv.0
光魔法:Lv.2
闇魔法:Lv.0
言語:天勇語、共通語、
(あれ? レベルとHP、MPは上がったけど、その他のパラメーターとか上がってないな。今日の程度の経験だと、上がらないって事か。まあ、それも明日からだな)
クローディアは、部屋から出ると1階の食堂に向かう。
晩飯も悪くない味だ。
(直ぐに腹いっぱいになるのは、女だからか? 食べ過ぎて、折角のこのプロポーションを崩すのも何だからな。中年のおっさん気分は、もう止めだな)
本作、最初はゆっくり目の展開かと思います。
そんなペースで2つ目の町まで行くかと。
まだ、2つ目の町の話を書いてはいないのですが。
今後とも、よろしくお願いします。