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ミンチにされてからの異人生再スタート ~剣と魔法は、割と得意です~  作者: 蛙塚遊覚
第1章・始まりの街で始まる。
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第7話「人型モンスターとの決闘」

 クエストの達成の為に、街の近くの森に来たクローディア。

目的のグレイウルフを狩猟し終えたのだが、その解体中に謎の生き物に遭遇した。

猿か原人を思わせる、緑色の人型の生き物。

彼女は、直感的に、それがゴブリンであると思ったのだが、初めて見る相手であり確証はない。

試しに、そいつらの前に自分の姿を見せる事にしたのだが。


クローディアの事を嘗め回すように見て来る緑色の人型の生き物。

そいつらが、一歩、彼女に近付いた。

思わず、一歩、クローディアは下がった。

だが、その行動が弱気に見えたらしい。

そいつらが、手にした棍棒を振り上げて襲い掛かって来た。

(くそっ、やっぱり敵だったか)

クローディアは、短剣を抜いて防ぐ。


奴等は、棍棒でクローディアを直接に攻撃しようとするのではなく、短剣を叩き落とそうとしているようだ。

やたらと、彼女の右手を狙って来る。

そして、もう1匹が彼女の体に組み付こうとして来る。

何となく、こいつらの意図が見えて来た。

(こいつら、俺を押し倒そうとしてるな)

その後に起きる事も、大よその想像が付いた。

だが、そんな事は、まっぴらごめんである。

(こいつらに、抱かれるなんて、想像するだけで気分が悪い)


クローディアの短剣が、1匹を切り裂いた。

そいつは、弱者と思っていた相手からの反撃に驚いたようだ。

だが、それで動きを止めるとはね。

すかさず、必殺の一撃をお見舞いしてやった。

倒れる緑色の奴。

そして、追い縋るように迫る、もう1匹も切る。


不意に気配を感じたので、クローディアは下がった。

死角から一撃を受ける所であった。

2匹かと思った緑の奴が、もう1匹いたのだ。

仲間を倒されたので、あいつらも油断はしていない。

再び1対2の対決に戻った。

戦ってみて、そんなに強い相手ではない事は解った。

だが、数で来られるとマズイ。

まだ、奴等の仲間も周囲にいるのかもしれない。

それを探るには、目の前の2匹がいて集中は出来ない。

今は、逸早く、この2匹を倒すだけである。


奴等の武器は、棍棒だ。

だが、それはただの太い木の枝と侮れない武器である。

その攻撃は、確実にこちらの防御を破れる威力がある。

短剣も下手な使い方をすれば、叩き折られる可能性もあるのだ。

こいつらは、幾つものゲームでお馴染みの、あの低レベルのモンスターなのであろう。

だが、実際に戦うと、案外やり難い相手なのだ。

(こいつらは、決して強くはない)

けれど、奴らには、数という武器もあるのだ。

戦いを長引かせるのは、不利だ。

いつ、向こうの増援がまた来るのか。


意外に、こいつらの連係も上手い。

タイミングを合わせて、左右から棍棒で襲って来る。

それを避ける為に、数歩下がった。

すると、奴等は食い下がって接近して来る。

更に、こちらの剣を狙ったり、足元も狙って来る。

(案外、攻撃のパターンが多彩だな)

それが、他の獣らと違う所かもしれない。

だが、僅かにタイミングのずれた所を、こちらからも反撃する。

当たりは浅いが、確実に傷を負わせて行く。

こいつらは、防具らしき物は装備していないので、体のどこを攻撃しても、ダメージが残る。


向こうは2匹と数は多いが、クローディアの方が少しづつ優勢になって行く。

棍棒の連続攻撃は恐ろしいが、その動きは決して早くない。

二倍の攻撃も、集中すれば避けた上に、攻撃も出来る。

とは言え、早く、片方を片付けて楽になりたい。

必然的に、短剣を当て易い正面に見て右側の奴への攻撃回数を増やす。

短剣での切り付けも、鋭く入れてやる。

何度も切り付けると、そいつの体がぐんにゃりと曲がるようにして、地面に倒れた。

(よし、残るは、1匹だけだ。)


残り1匹になると、気が楽になった。

逆に、あちらは不利を悟ったようである。

少し、下がる気配を見せた。

だが、逃げ失せる事は難しいと、こいつも悟ったようだ。

クローディアは、逃がすつもりはない。

どちらも、助かるには、相手を倒さなければならない。

彼女にしてみても、見逃す素振りを見せれば、こいつが逆襲して来るであろう。

場合によっては、こいつらの仲間が近くにいるのかもしれない。

こいつも、クローディアを倒さなければ助からない。

後ろを見せた途端に切られる。

互いに、そう考えていた。


相手の数が減り、クローディアが積極的に攻め始めた。

緑色の奴は、防戦が増える。

それでも、たまに棍棒を繰り出して来た。

その棍棒を避け、時に鋭く突きを入れ、また切り裂くクローディア。

奴の頬を軽く引き裂いた。

傷口から溢れ出る、緑色の血液。

その色が赤くはない事が、クローディアを怯ませないのかもしれない。

ここで、赤い血を見れば、まだ慣れない彼女の剣が鈍ったであろう。


クローディアの圧倒かと思ったが、緑色の奴も必死だ。

先程までの数の優位など、失われてしまった。

今、この強敵を倒さねば、自分の命が無いのだ。

その必死さが、そいつに通常以上の力を与えていた。

だが、そこには実力差がある。

クローディアの目には見えない能力が、その人型モンスターを遥かに上回っているのだ。

武器の棍棒を叩き落とされた緑色の奴。

(やられる)

そう感じたはずだ。

相手の武器を地面に叩き落としたクローディアが、一瞬、呼吸を整える為に停止した。

(次の一撃で決めてやる)

そう彼女は思っていた。


その時、何を思ったか、緑のモンスターが、両手を突き出しふらふらと前に出て来た。

まるで、自ら切られるような動きなのだが。

その意外な動きが、更にクローディアの停止時間を延長させた。

(何だ? 何のつもり?)

その手が、何故かクローディアの腰の辺りに軽く触れた。

(んっ!!!)

何かを感じたクローディアが、数歩下がった。

ある種の身の危険を感じた気がしたのだ。

それは、何か相手が切り札の攻撃手段を持っている訳ではない。

その手から伝わって来たのは、雄が雌を求める本能のような物を直観的に感じたのだ。

(こいつ、こんな状況でも?)

ある種の生への執着なのであろうか?

死を前にして、こいつの頭の中に子孫を残そうという思いが、微かに感じられたのだ。

何故、そう彼女が思ったのかは解らない。

一瞬、躊躇った。

だが、ここで止めを刺さなければ餌食にされるのは、自分の方なのだ。

意を決し、前に踏み出した。

そして、短剣を横に薙ぐと、奴の頭を5m程飛ばした。


 思わぬ相手と戦い、少々混乱した。

周囲を素早く警戒し、近くに何もいない事を確認した。

先に仕留めた解体中のグレイウルフの毛皮を剥ぎ取ると、緑色のモンスターの魔石も取り出した。

緑色の今まで見た事の無い魔石であった。

(こいつら、ゴブリンだったのかな?)

まあ、この魔石を寄合所で見て貰えば解かるであろう。

今日は、もうクエストも終えている。

後は、街に戻るだけだ。

少しでも稼ぎになるかと思い、こいつらが持っていた棍棒3本も持ち帰る。

体を調べてみたが、他には珍しそうな物は持って無い。

いや、1匹だけ、何かの小骨を革紐で繋げた首飾りを着けている。

これも一応は、回収して行こう。


森の中を歩き、街へと向かう。

勿論、周囲を警戒しながらだ。

また、何かに出会うかもしれない。

大分、歩いていると、また薬草集めをする年少の冒険者らに出会った。

その多くは、武装も貧弱なままだ。

ふと、思い付いたクローディアは、先程奪って来た棍棒を彼等に進呈した。

「えっ? いいのお姉さん?」

本来ならば、同業者に施しなどすべきではないのであろう。

でも、こんな棍棒でも、彼等の役に立ってくれれば。

まだ、こんな装備も手にしていない者もいるのだ。

「これ、どうしたの?」

「ああ、それはさ」

彼女は、緑色のモンスターと戦って奪ったと伝えた。

「それ、ゴブリンだよ。凄いね、お姉さん。冒険者になったの、僕らよりも後だよね?」

そうか、やっぱりゴブリンだったのか?

突き返されるかとも思ったが、棍棒を受け取って貰えた。

彼等の薬草集めを手伝い、一緒に街に戻る事とした。


城門を少年少女冒険者らと共に潜った。

彼等も、クローディアに懐いてくれたらしい。

「奇麗なお姉さんが、この街の冒険者になってくれて嬉しいよ」

そんな事を言ってくれた。

(はは、悪くないね、こう言われるのも)

クローディアは、少し照れていた。

その様子を城門を守る兵士らが見詰めていた。

「いいな。俺も今から冒険者になろうかな?」

「給料が決まってる訳じゃないから、大変だぞ、お前」

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