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【書籍化&コミカライズ】断罪ループ五回目の悪役令嬢はやさぐれる~もう勝手にしてとは言ったけど、溺愛して良いとまでは言っていない~

作者: 長月 おと

【コミカライズ連載中&ノベル全1巻発売中】こちらは商業版のベースとなった短編となっており、一部内容が違っております。ご了承くださいませ。

 

 貴族の令息、令嬢が通う学園の卒業式の記念パーティー――大ホールでは煌びやかな飾りつけがされ、豪華な食事が並び、卒業生と在校生の彩鮮やかなドレスの花が咲き誇る。

学生時代の思い出話を弾ませ、本格的な大人の仲間入りを目前に、より絆を深める明るい門出の日……本来であれば、そうなるはずだった。



「アメルハウザー王国の第一王子であるアロイスが、エーデルシュタイン公爵家が娘シャルロッテに告げる。本日をもってお前との婚約は破棄させてもらう! 身分を笠に下位の令嬢を虐げ、危険にさらした罪は重く。そのような女を妃にはできない!」



 金糸のような輝く髪と、王族特有の赤いルビーのような瞳を持つ王子アロイスが声高らかに宣言した。彼の傍らにはストロベリーブロンドの髪に緑の大きな瞳を持つ美少女が、不安げな表情を浮かべて立っている。

 何も知らない人からしたら、お似合いの美男美女の恋人同士に見えるだろう。


 そして婚約破棄を言い渡された艶のある漆黒の長い髪に、金を溶かし込んだようなヘーゼルの瞳を持つ美しい令嬢――シャルロッテは、ふたりを邪魔する悪女と思うに違いない。

 今もまさに高慢と受け取られかねない態度で、シャルロッテは大きなため息をついたのだから。



「貴様……ここにいるベルツ男爵家の令嬢クリスタに所有物の破壊や盗難などの嫌がらせ、いや罪を繰り返し犯した立場でその態度はなんだ! 彼女は先日、階段から突き落とされそうになるなど、怪我を負いかねない事件もあったのだぞ!」



 アロイスは隣にいたストロベリーブロンドの美少女――クリスタの肩を抱き寄せ、シャルロッテの悪行をあげていく。

 堂々としたアロイスの糾弾に、周囲も彼の言葉を信じているようだ。

 彼は第一王子らしく学園の成績は良く、とても明るい性格で親しみを持たれている立場だ。婚約者がいながらクリスタと特別に懇意にしていたという点以外は、皆が憧れる完璧な王子と言える。


 この時点で、学生と教員しかいない会場からシャルロッテの味方が消えた。


 けれどもシャルロッテ本人の表情は変わらない。酷く疲れた様子で、いかにも面倒だと言わんばかりの怠そうな顔。

 それもそうだ。彼女がアロイスから婚約破棄されるのは初めてではないのだから。



(そう……私は再び死ぬのね)



 シャルロッテは、同じ人生を繰り返していた。今回で五度目の人生を迎えた彼女は、過去四回の人生でも同じく、身に覚えのない罪で婚約破棄されていた。


 一回目、毅然とした態度で反論した。けれども、あるはずのない証拠が次々と持ち出され、覆すことができずに罪が確定してしまった。


 二回目、高位の令嬢にはあるまじき感情を前面に出し、涙ながらに無実を訴えた。私ではないと、誰かに嵌められたのだと。残念ながら、誰も耳を傾けてくれなかった。


 三回目、自分のアリバイを立証するための時間を稼ごうと、一旦公爵家へと帰る希望を申し出た。後日改めて話し合いの場を設けましょうと……それも無駄だった。断罪は強行された。


 四回目、会場からの逃亡を図った。ショックで目眩を起こす演技をして、隙を見て会場から離れようと……もちろん成功するはずはなく、単なる悪あがきで終わった。


 何もかもうまくいかず、シャルロッテは冤罪を被せられ、パーティー会場からそのまま投獄され、じわじわとやせ細り、一か月後に毒を盛られて苦しみながら獄中で死んだ。

 家族との面会もなく、取り調べが再度行われることもなかった。出される食事は腐ってなかったものの、歯が折れそうなほど固いパンばかり。それでいて水は最低限。野菜も肉もない。

 掃除が入ることも一度もなく、床は雨漏りで溜まった水で苔が生えてたまま。水がほとんど与えられなかったのは、床の水でも舐めろと言いたかったのだろう。

 自由に動けるだけ、貧困街に放り出された方がずっとマシではないかと思うような環境だった。

 

 もう繰り返したくない――そう願ってもまた、婚約破棄を告げるアロイスの宣言で前世を思い出す。

 せめてパーティーの前日、いやアロイスの宣言前に記憶が蘇ればいくらか対策を練れるものを、毎回手遅れのタイミングだから嫌になる。



(一切の抵抗ができないような繰り返し方をするなんて、私はまるで用意された悪役ね。アロイス殿下とクリスタ様の真実の愛を成立させるための、単なる舞台装置……つまり今回もきっと私は冤罪で投獄され、死ぬ)



 抵抗は無駄に疲れるだけだと悟ったシャルロッテは、鼻で笑った。



「どうぞご勝手になされば?」

「――っ、罪を認めるのだな?」



 あまりにも尊大な態度のシャルロッテに一瞬驚くものの、アロイスはすぐに勝ち誇った表情を浮かべた。

 正直イラッとするが、指摘するのも面倒だ。



「私が何を言おうと、罪を被せるのでしょう? もういい加減疲れましたの」



 そう言ってシャルロッテはドレスのまま仰向けになって、床に寝そべった。

 アロイスとクリスタをはじめ、会場にいる全員が目を見開き、言葉を失った。


 これまでのシャルロッテは誰もが理想とする淑女の鑑だった。美しい容姿を最大限に生かした表情や仕草は目を引いた。言葉には教養が感じられ、堂々とした話し方は高位貴族の風格を感じさせた。

 高嶺の花、という言葉はシャルロッテのために存在しているのではと言われるほど、彼女は美しく、近寄りがたい完璧さがあった。


 けれども今は、やさぐれた子どものように手足を放り出してしまっている。



(やってられないわ。もう頑張りたくない)



 公爵令嬢として姿勢を美しく保つのも、理路整然と意見を言うのも、気高く表情に微笑を貼り付けるのも、ドレスを優雅に着こなすのも全部無駄。いくら守ろうとしても意味がないことを知っている彼女は、すべてが面倒になり投げだしたのだ。


 周囲から非難、冷やかし、疑念、憐み、興味……様々な視線を向けられるが、シャルロッテは気にすることなく、真上で輝く豪奢なシャンデリアをボーッと眺めながらもう一度深いため息をついた。



「シャルロッテ、貴様何を!? 無礼だぞ!」



 アロイスが問い詰めるが、シャルロッテは首をもたげようともしない。



「だって無駄なんですもの。意味もないことはしたくありませんわ」

「意味もないこと? では弁明もせず、罪を認めるんだな!?」



 なぜ何度も言質を取ろうとするのか。何を言っても有罪にするくせに、回りくどいことをするものだ。



「言ったではありませんか、どうぞご勝手にと。苦しいのはもう嫌だわ……今回はさっさと殺してくれませんか?」



 シャルロッテの言葉に、会場が静まり返る。やさぐれた彼女は、人生を繰り返していることを隠すことも説明するのも面倒になっていた。

 過去に四回も死んでいることなど知らない生徒――貴族の子息子女は、王族の次に高貴な令嬢が死を求めている事実に衝撃を受けた。しかも「今回は」という発言をしたことから、シャルロッテが死を望みたくなるほど苦しい経験を過去にもしていることが察せられる。


 会場の空気が、ガラリと変わった。



「あのシャルロッテ嬢が投げやりになるなんて、相当辛い経験があるのでは?」

「それに何度も無駄なこと、と……抵抗することなく、すぐに諦めてしまうほどアロイス殿下には普段から軽んじられていたのかもしれませんわ」

「しかも自ら死を乞うなんておかしいですわ。生きる気力を失うほどのことをされた証拠でしてよ」

「エーデルシュタイン家は公爵家だ。こんなことできる権力者は――」



 生徒たちの視線が、シャルロッテから第一王子アロイスへと移された。

 疑惑の眼差しを向けられたアロイスは体を強張らせ、唾を飲んだ。彼の隣にいるクリスタは顔色を悪くして、よろめくようにアロイスの胸元に縋った。


 それがさらに周囲の憶測を促す。


 アロイスは完璧な婚約者がいながらも、クリスタに現を抜かした。今このように密着しているように、アロイスとクリスタが人目を憚ることなく逢瀬を重ねていたことは周知の事実。婚約者であるシャルロッテがそれに嫉妬し、犯行に及んだのだと勝手に推察していた節があった。

 しかしシャルロッテのやさぐれた態度を見る限り、嫉妬は有り得なさそうだ。


 なおかつ婚約破棄の仕方もあまりにも一方的で、シャルロッテが恥をかくようなやり方。この国の名門・エーデルシュタイン公爵家への敬意を感じられない。王族だとしても、あまりにも横暴だ。

 この婚約破棄は『不自然すぎる』と、誰もが思い始めた。



「皆のもの、決して騙されるな! シャルロッテは同情を引き、罪を軽くしようと画策しているのだ! 本来の彼女は計算高い人間だと知っているではないか!」



 アロイスは流れを変えようと、会場に訴える。

 それに対し、エーデルシュタイン公爵家に並ぶ、別の公爵家の令息が声をあげる。



「ではアロイス殿下、シャルロッテ嬢をこのように貶めるということは、もちろん証拠が揃っているのですよね!? 我々が納得できるように明示していただきたい!」



 待っていました――と言わんばかりの得意げな表情をアロイスが浮かべ、口を開こうとしたが……



「証拠なんて不要でしてよ。私が罪を被るよう、すべて整えられているはずですから意味ありませんわ」

「シャルロッテ嬢!」

「はぁ、豪華絢爛な会場の床も牢獄とあまり変わらないのね。これなら簡素な服でいられる牢獄の方がましかしら……背中が痛いわ」



 令息の悲痛な呼びかけにも、シャルロッテは特段の反応を示さない。代わりに気怠そうに彼女は身を起こし立ち上がった。そしてアロイスの後ろに控えている護衛騎士に向かって、両手首を揃えて差し出した。



「ほら、連れて行きなさい。地下の六番に入れるよう言われているんでしょう?」

「なぜそれを……っ」



 見抜かれていることに驚き、護衛騎士が絶句する。



「だって馴染みの場所ですもの。それで、連れて行かないの? ならここで首を落として……あの牢はネズミも多いし、地下なのに雨漏りが酷いからベッドが濡れているわ。できればそこでは過ごしたくないの」



 シャルロッテは頭を軽く傾けて、切りやすいよう白い首筋を見せた。

 同情を集めるために画策して演技をするにしては、あまりにも投げやりだ。周囲の貴族の疑念はますます膨らんでいく。



「シャルロッテ様が嘘をついているように思えませんわ。ネズミなんて、わたくし見たこともありませんもの」

「過去に牢へ入れられたに違いない。令嬢が牢の状況を知っているなんて異常だ」

「貴族であれば、極刑でない限り普通は質素な客室が牢代わりだというのに……陛下はご存じなのか?」

「きっと過去にシャルロッテ様を牢に入れたのは……そんな権力をお持ちの方は限られているわ」



 シャルロッテが罪を犯したと、もう誰も思っていない。


 代わりにアロイスへの疑惑が膨らんでいく。長年シャルロッテは陰でアロイスから虐げられており、今回の断罪も、横柄な第一王子が意中の令嬢を手に入れるために作られた冤罪なのでは――そう考えれば、すべての辻褄があう。

 彼らの冷たい視線がアロイスとクリスタへと向けられる。アロイスが奥歯を噛みしめ言葉を探す一方で、クリスタはたまらず声をあげた。



「わ、私が嫌がらせをされていたことは事実です! 鞄の中にインクが垂れ流され、教科書もノートも使いものにならなくなったわ。ロッカーには頻繁に脅迫文が投げ入れられ、ときには動物の死体も入れられていたのです。一度のみならず、何度も……何度も繰り返されて……っ」



 翡翠の大きな瞳にたっぷり涙を浮かべ、唇を震わせ訴える姿は痛々しい。事実、そのような嫌がらせを受けてショックを受けない令嬢はいないだろう。



「ついには先日の放課後、階段を下りようとしたら背中を押され……手すりを掴むのが間に合ったから良かったのですが、落ちていたらと思うと怖くて……怖くて……慌てて振り向けば、黒髪の女性の後ろ姿が見えましたの。学園で黒髪の令嬢はシャルロッテ様だけですわ!」



 クリスタはアロイスから体を離し、数歩前に出る。胸元で両手を重ね、心の痛みを訴えながらシャルロッテの前に立った。



「酷いことをされて辛かった。けれども、シャルロッテ様が死ぬなんて望んでいませんわ。今ここで謝ってくださるのであれば、私は許します。ね?」



 聖女のような清らかな微笑みを浮かべるクリスタに、シャルロッテは濁った眼差しを返した。

 前回であればその慈悲に喜び、嘘でも謝罪の言葉を述べていたかもしれない。死ぬのだけは嫌だと……あの苦しみから逃れるのであれば、感謝の言葉も加えて許しを請うただろう。

 けれど、もう遅い。この人生が繰り返すことが分かった今、辛い状況をいかに短くしていくかが重要なのだ。



「許しは不要です。それにしても随分と温い嫌がらせを受けていたのですね」

「温いなんて……っ」

「えぇ、温いわ。男爵家を潰すなんて、公爵家には造作もないことだわ。本気になれば、証拠を残さず暗殺することだって容易いのよ?」



 暗殺という言葉を受けてふらつくクリスタの背を、アロイスが支える。



「シャルロッテ! 貴様やはり非道だ! やはり許してはおけん」

「非道? 暗殺は現実に起きておりませんのに?」



 暗に、クリスタが受けていたこれまでの嫌がらせは『シャルロッテではない』と示していた。クリスタの可憐な訴えで大問題に感じていた事件は、実際に公爵家が講じる手段としては温すぎる。

 そもそも、何もせずじっと耐えていれば手に入る地位。賢いシャルロッテが中途半端に自ら手を汚し、糾弾される種を撒き、地位を揺るがすようなことをする理由がない。


 シャルロッテが、クリスタを害することは有り得ないのだ。


 周囲は完全に、シャルロッテの冤罪を確信した。

 再び、公爵家の令息がアロイスに投げかける。



「殿下! 嫌がらせの調査をやり直すべきです! このままでは無実の令嬢が罪をかぶり、不当な糾弾をした殿下の名誉も傷つきます!」



 クリスタも恋人に訴える。



「犯人はシャルロッテ様じゃないの? だってインクやアリバイを調べたらシャルロッテ様しか犯人はいないって、アロイス様は教えてくれたではありませんか! 証拠は全てお渡ししていますよね? 真犯人を見つけてくださいませ!」



 周囲のみならず、恋人クリスタからも詰め寄られたアロイスは顔色を悪くした。

 全員が「王子!」「王子!」と答えを求めて声をあげる。

 そんな中、シャルロッテは青い血管がうっすらと浮く細くて白い両手首を揃えて、再び騎士に向けて連行を促した。



「犯人なんて、誰だって良いではありませんか。予定通り私を牢獄に入れるなり、殺せば、アロイス殿下とクリスタ様は障害を乗り越えた絆が認められ無事に結ばれる。他の皆様に火の粉が被るわけでもない。大団円でしてよ。だから、ほら、さっさと終わらせましょう?」



 すると次は「諦めないで」と鼓舞するように、多くの者がシャルロッテの名前を呼ぶ。

 けれどシャルロッテには響かない。



(これまでにない流れだけど、希望を持つだけ無駄。もう疲れたのよ……前回のように派手に逃亡したら捕まえてくれるかしら)



 シャルロッテはドレスの下で、静かにヒールを脱いだ。ひたりと素足を冷たい床につける。あとは、どの窓から飛び降りるか。

 そう思いながら走るルートを見つけようと外へと向けたとき、シャルロッテとアロイスの間で光が弾けた。


 眩しさで一瞬目を瞑り、目を開けたら真っ黒なローブを羽織った美しい若い男が立っていた。青い瞳は全てを見通しているかのように澄み渡り、切れ長。銀糸のように眩い髪は長く、後頭部でひとつに束ねられていた。年は、二十代半ばほどの青年だろうか。

 光から現れた状況に、整った容姿と薄い色素は神聖な遣いのようだ。

 しかし胸元で揺れるプラチナの首飾りは、貴族の誰もが知る魔術師を示しており、会場全体は緊張で凍り付いた。



「魔王……」



 会場の誰かが呟いた魔術師の異名が、静かに響いた。



「はは! 俺もすっかり有名だな。でも念のため自己紹介しておこう。俺の名はヴィム・ギースベルト。察しの通り、昨年とある国をひとりで滅ぼした魔術師だ。よろしく」



 ヴィムは目を細め、天使と見紛うほどの美しい笑みを浮かべた。だが、会場は冷え込んだままだ。


 魔術師は世界的にも稀有な存在で、特別な力を求めて各国は魔術師の獲得に火花を散らしている。中でも大陸一の実力者である天才ヴィムは平民出身のため、貴族のように家に縛れない。各国は様々な条件を出し、彼を手に入れようとしていた。


 競争は熾烈を極め、とうとう昨年、ヴィムの故郷の国王が強硬手段に出た。国と主従契約を結ばなければ、ヴィムの出身地である村を潰すと……家族や友人を人質に取って脅したのだ。

 そして脅した翌日、王宮は更地になった。人間は全て転移魔法で外に出されて死者はでなかったものの、国を亡ぼすには十分な事件だった。当然国王は失脚し。今は隣国が「ヴィムに命令しない、害さない」という条件で、彼の故郷を属国に取り込んで国土を広げた。

 気分次第で国を簡単に左右できる力を、ヴィムは持っている。



「ヴィム殿が、どうしてこちらに?」



 会場内でもっとも高貴な王子アロイスが、恐る恐る質問した。



「先日、ここの国王から学園の講師をしないかと誘われてね。テキトーに断るのも失礼だし、面白そうなら受けようと思ったんだ。俺は面白いことが好きだからね。それで、どんな学園かを知るには卒業生を見るのが一番かと思って、卒業生である王子にも内緒でパーティーを観察させて欲しいと頼んだけれど……来て良かった」



 愉快そうに、ヴィムは肩を揺らして笑った。冷え切った会場で、彼の存在は異質だ。

 あれほどまで「王子!」「シャルロッテ様!」と叫んでいた生徒たちは、今はかかしのように黙って立っている。



「さて、今回の件に俺が関わっても良いかな?」



 そうヴィムが問いかけたのはアロイスではなく、シャルロッテだった。

 彼女は予想していなかった事態にわずかに驚くものの、やはり心は諦念の気持ちで占められていた。



「ご自由にどうぞ」

「例えば、君を魔法審問にかけても?」

「それも、勝手になさってかまいません。ヴィム様のお好きなようにしてください」

「うわぁ、恥じらいも何もないのか。面白いね」



 ヴィムは無邪気な笑みを浮かべると、指をパチンと鳴らした。すると彼の隣にここアメルハウザー王国の国王が召喚された。



「ヴィム殿!?」

「やぁ陛下、立会人を頼んでもよろしいですか? 一緒に陰から見ていたから、状況はご存知ですよね? 真か偽りか、今から調べます」

「――良いだろう。余も、真実が知りたい」



 国王の発言から、この断罪劇を最初から知っていて止めず傍観していたことが分かる。



(元々この婚約も、王家がエーデルシュタイン公爵家の首輪を繋ぐためのもの……娘の失態で公爵家の権威を落とせれば、比較して王家が優位に立てる。だから過去四回とも陛下は断罪を止めなかったのでしょうね。ヴィム様が介入しなければ、おそらく王家の権力のために私を……っ)



 今世になって初めて知る情報に対し、じわじわと懐かしい怒りが湧いてくる。シャルロッテのヘーゼルの瞳に小さな光が戻り始めた。



「おや、顔つきが変わった。シャルロッテ嬢、それでは良いかな?」

「えぇ、いつでも」

「では、悪魔を召喚しよう――おいで? アルファス」



 そうヴィムが囁いただけで床に闇の大穴が空き、黒い大きな狼が出てきた。



 《ヴィム、呼んだ?》



 人の言葉が通じる、上級クラスの悪魔だ。会場の空気はますます冷え込む。

 ヴィムは子犬を扱うように悪魔の頭を撫でる。



「証言の真偽を判別して欲しい。相手が嘘をついていたら、呪って良いよ。そして苦しみの感情は君のおやつにすればいい」

 《そういうことなら。で、誰の真偽を見抜けばいい?》

「この令嬢だ。ではシャルロッテ嬢、君は男爵令嬢クリスタに危害を加えたのか否か答えて」



 会場にいるすべての者が固唾を呑んで、シャルロッテの答えを待った。



「私は、一切の犯行に関わっておりません」

 《真実だ。この女は嘘をついていないよ、ヴィム》

「らしいね。シャルロッテ嬢、もうひとつ質問をするよ。君こそ、アロイス殿下に蔑ろにされてきた?」

「えぇ、私の言葉はいつも届きませんわ」

 《真実だ。ねぇ、ヴィム。全然おやつが食べられないじゃん!》



 生徒たちは、シャルロッテの無実が証明されたことの喜びを静かに噛みしめた。

 そして「ぐるる」と唸って不満を訴える悪魔を宥めながら、ヴィムが言葉を続ける。


「アルファス、まだ対象者は残っている。で、陛下……()()()()()、シャルロッテ嬢は無実だ」

「……では余に届いたアロイスからの報告書や証拠が嘘というのか?」

「じゃあ、ついでに聞いてみるか。そこの小娘、次はお前だ。嫌がらせを受けたのは事実か?」



 ヴィムに指さされたクリスタは、体をビクッとさせて、慌てて答えた。



「わ、私は嘘はついていませんわ! 本当にいじめられて、身の危険を感じてきたのです!」

 《真実だ。この女も嘘はついていない》

「なるほど。つまり嫌がらせの犯人はいるというわけだ。調査したのはアロイス殿下か?」



 ヴィムの視線がアロイスへと移される。



「そうだ。私がクリスタから相談を受けて、調査した」

 《真実だ》



 悪魔が真実の判定を下し、アロイスは肩の力を抜いた。



「殿下、まだ質問は終わりではない。その調査は公平な立場で行ったのか?」

「もちろんだ」

 《嘘だ》



 その瞬間、服の上から彼の右腕に黒い鎖の模様が浮かび上がった。呪いが発動したのだ。アロイスの顔が引きつる。

 けれどヴィムはそのまま質問を続けていく。



「はじめからシャルロッテ嬢に罪が被るような調査をしていたのか?」

「違う!」

 《嘘だ。ふふ、美味しいな》



 次は左腕に呪いの鎖模様が浮かぶ。



「嫌がらせの犯人を知っているのか?」

「し、知らない!」

 《嘘だ。いいぞ、いいぞ♪》



 悪魔が喜び、アロイスの首元にぐるっと囲むように呪いが浮かぶ。アロイスの顔面は蒼白で、体がガタガタと震えはじめた。



「ヴィム殿! ここは一旦王宮に話を持ち帰りたい!」



 国王がそう進言するが、ヴィムは鼻で笑った。



「では、最後に一個だけ。犯人は――アロイス殿下か?」

「……も、黙秘する」



 アロイスは顔を俯かせるが、ヴィムは許さない。



「悪魔の尋問に拒否はペナルティだ。嘘と同じく呪いを追加になるが、本当に黙秘でいいのかな? ちなみに殿下は嘘をここまで三回重ねている。四つの呪いが溜まると、俺でも呪いが解けなくなるから気を付けてくれ――さぁ、真実を告げるか、嘘を告げるか、黙秘するか選んで?」



 アロイスはすっかり血の気が失われた顔をゆっくりとあげ、瞳孔が開いた赤い目でヴィムを見つめた。何か、何か策はないかと。

 でも、返ってくるのは心底楽しそうな、ヴィムの微笑だった。

 

 次に愛しい恋人のクリスタを見つめる。彼女は怯えるように体を強張らせ、距離を開けるように後退った。


 そして助けを求めるように父親である国王へと視線を移すが、失望したように瞼を閉じ、息子からの助けを拒絶した。


 それからシャルロッテへと向けるが――そこには軽蔑に満ちた眼差しを向ける無表情の彼女がいた。


 最後に周囲を見渡すが、誰もがもうアロイスを見放していることが手に取るように分かった。







「――……私が、すべて仕組んだ」

 《真実だ》

「うっわ、つまり邪魔な婚約者を切り捨てるために、愛しい人に嫌がらせをしたアロイス殿下の自作自演ってことだね。あはははは! とんだサイコパスじゃないか! さすが王族はやることが傲慢だ」



 ヴィムは愉快そうにケラケラ笑っているが、青い目は冷え切り、憎悪の念をアロイスに向けていた。

 この天才魔術師は故郷の件もあって『王族嫌い』で有名だ。このままでは自国にも被害が及ぶと危機感を抱いた国王がすぐに動く。



「ヴィム殿、アロイスにはきちんと処罰を下す。どうか矛を収めてくれないか?」

「……仕方ないね。でも、ひとりの令嬢が死を覚悟するような件だったんだ。よーく考えてくださいよ?」

「約束する」

 《真実だ》



 国王の返事に納得したヴィムは指をパチンと鳴らし、アロイスを呪いから解放した。

 アロイスは膝をつき、天を仰いだ。放心した彼の姿にはもう、皆が憧れた王子の風格はない。



「じゃあ、早めに頼むよ。すぐに動けるよう、王宮に送ってあげましょう」



 そうしてヴィムは手を横に薙いだ。光のカーテンが国王とアロイス、護衛騎士たちを包み込み、転移させた。

 会場は煌びやかなまま、ときが止まったように静寂が支配する。

 シャルロッテは聞こえる自身の鼓動を確かめるように、胸元に手を当てた。



(私、今度は助かったの?)



 そう安堵しようした瞬間、体がふわりと浮いた。気付けば、ヴィムに横向きに抱えられていた。



「ヴィム様!? これはなんの真似でしょうか?」

「あなたを俺のものにしようかと」

「ご冗談を!」

「自由に、勝手に、好きなようにして良いと言ったのはシャルロッテ嬢だ」

「確かに言いましたが、そういう意味ではございません!」

 《真実だ》

「残念。でもこんなに面白い女に出会ったのは初めてだから、手に入れたくなったんだが……一度助けただけでは無理か?」

「駄目です」



 銀髪の美丈夫が、子どもっぽく唇を尖らせ拗ねた。他国の王宮を吹っ飛ばし、魔王という異名を持っているとは思えないほど可愛らしいが……すっかり人間不信に陥っているシャルロッテには効かない。



(それにしても令嬢としての醜態を『面白い』と捉えられるなんて想定外だわ)



 以前なら「無礼者!」と突き放しただろうが、ヴィムはシャルロッテの冤罪を証明し窮地を助けてくれた事実があるため無下にもできない。むしろお礼はしたいくらいだが、ヴィムのもの――また誰かの支配下に置かれ、命を握られる覚悟は持てない。


 何て答えたら……そう色々と考えている間に、空気が変わった。瞬きしている間に、エーデルシュタイン家のシャルロッテの私室に転移していた。



「――え?」

「今日は引き揚げて、出直すことにするよ。王家の動向も見守りたいしね。シャルロッテ嬢、明日から楽しみにしていてくれ」



 そうしてヴィムはシャルロッテをソファに下ろすと、あっという間に部屋から消えた。

 なぜヴィムがシャルロッテの部屋を正確に知っているのか。それに彼の言う「楽しいこと」には不安しかない。心配しながら迎えた翌日――国王とともにヴィムは公爵邸を訪れた。


 今回の件は、すべてアロイスが企てたものだった。男爵令嬢クリスタの可愛らしさに落ちた彼にとって、婚約者シャルロッテが邪魔だった。

 しかしシャルロッテは完璧な令嬢で、嫉妬のカケラも見せない。それもアロイスにとっては面白くなく、クリスタの味方を演じつつ、シャルロッテを堂々と排除するために、側近を使って嫌がらせを起こしていた。


 国王も騙された証拠品は、シャルロッテの婚約者であるアロイスであれば容易に準備できるものだった。インクや脅迫文に使った箔入りの紙は、婚約者の義務で予めシャルロッテに贈ったものを一部を手元に残して使用。階段から落としたのは変装で誤魔化した。

 あとはシャルロッテの予定を調べておき、アリバイが証明しにくい日時を選んで嫌がらせをしていたのだという。


 アロイスが国王にあげた報告書をシャルロッテも読ませてもらったが、見事な出来だった。信用している息子から受け取ったものだからこそ、より信じ込んでしまったのだろう。


 だからといって、許せるものではないが。


 それも国王は分かっているため、正式に謝罪するために自ら公爵邸に足を運んだのだろう。彼は深々と頭を下げ、詫びとして慰謝料とシャルロッテが望むものを用意すると約束してくれた。

 ちなみにアロイスは王位継承権剥奪の上、地下牢の六番にしばらく投獄することにしたらしい。

 それにはシャルロッテも驚きを隠せなかった。



「陛下、極刑になさるつもりですか?」

「そうではないが、シャルロッテ嬢をどのような場所に入れようとしていたか、本人に反省させようかと。六番には最低一か月……反省の色が見えなければ見えるまで投獄したのち、簡素な客室に生涯幽閉とする。そして予算は王都に住む平民の生活水準へと落とす。アロイスの処分に関しては、これで納得してくれると助かる」



 想像していた以上の厳しい処遇だ。間違いなくヴィムの介入が影響を及ぼしている。とにかくシャルロッテを陥れたアロイスが彼女と同じ苦境を味わうと知り、少しばかり溜飲が下がった。


 恋人だった男爵令嬢クリスタは、辺境の修道院に入ることになった。彼女も巻き込まれた被害者ではあるものの、学園内では身を引くそぶりも見せず、アロイスと口付けをしているところまで他生徒に見られていたため傷物同然。

 問題を処理するように男爵家から追い出された。


 そして問題はここからだった。



「ヴィム・ギースベルト殿より、シャルロッテ嬢に求婚したいとの申し入れがあった。余としてはアロイスの件もあり、シャルロッテ嬢には良き次の婚約者をと思っているため、ヴィム殿の申し入れを受け入れは歓迎なのだが……」



 言葉を途切り、国王はシャルロッテの表情を窺った。

 国王としては天才魔術師ヴィムを、国に留めておける正統な理由を手に入れるため、この婚約を進めたいのだろう。

 前回は公爵家の首輪を繋ぐため、今回はヴィムの首を繋ぐためにシャルロッテを利用しようとしている。彼女は心底うんざりした。


 けれどもここで断ったらまた邪魔者として、次はアロイスではなく国王に立場を揺るがされるかもしれない。今回の事件だって、見放したのだ。次もあり得る。

 過去四回の苦しみを思い出したシャルロッテの息が浅くなっていく。



「国王、今後王家はシャルロッテ嬢には無理強いしないという俺と彼女の父親――エーデルシュタイン公爵との約束を反故にするのですか?」



 低く不機嫌なヴィムの声が部屋に響き、国王がハッとしてシャルロッテから視線を外した。



「ヴィム殿、そういうわけでは」

「しかしシャルロッテ嬢の顔色が悪い。目線で圧力をかけているように見えたのですが……俺は求婚することを認めろと言ったが、成立させろとまで頼んでいない。馬鹿王子で失敗しているのに、また権力を笠にきて自分の都合を他者に押し付けるおつもりか?」

「いや……シャルロッテ嬢、誤解させてしまったようだな。王家としては一切強要するつもりはない。ヴィム殿本人の努力と、シャルロッテ嬢の気持ちに委ねる」

「ということだ、シャルロッテ嬢。求婚がまだ受け入れられないのなら、試しに恋人から始めてみないか?」



 国王を黙らせるほどの相手なのだ。ヴィムが最大限に譲歩してくれていることを理解しているシャルロッテは、ぎこちなく頷いた。



 それからヴィムはシャルロッテに会うために、ほぼ毎日エーデルシュタイン家に通うようになった。来るたびに花や菓子、リボンやハンカチなどの贈り物を渡してくれる。そして数時間お茶をしながら言葉を交わし、時間が来れば紳士的にさっと帰っていく。

 経歴や派手な魔術、断罪劇での道化師のような言動から、もっと強引にことを進めるかと思っていたので若干拍子抜けをしている。


 だからといって、控えめというわけではない。



「やっぱり美人だよね。顔もだけど、所作が本当に綺麗だ」

「髪型変えた? 今日はいつもと侍女が違うから? なんだ……俺のためだと思ったのに」

「そのお菓子、好きな味だろう? どうして分かるかって? きちんと見ているんだから、好んでいるかどうかくらい分かってくるって」

「眼の下、隈できてるぞ。無理するな。今日は帰る――詫びは、次回のお茶会の時間を長めにしてくれれば良い」

「この国が嫌なら、好きなところへと連れ出してやる。あなたのためなら新しい領地も屋敷も用意しよう」



 今日までの約一か月間、こんな感じでヴィムはあの手この手でシャルロッテを甘やかしている。

 十年以上婚約者がいたが、相手はアロイス。愛も何もなく、政略的義務感で繋がっていただけ。

 つまり、このような甘い態度で異性に接せられたことは初めてで、さすがの彼女も意識せずにはいられない。しかも命の恩人であり、見た目は最上級。目の下の隈だって、ヴィムを意識し始めたことが気になって眠れなかったのだ。


 このままでは、好きになってしまうのは確実だ。それはシャルロッテにとって、恐怖の芽生えだった。


 ヴィムは『面白い女』だから、シャルロッテを好いてくれる。断罪劇では投げやりになり、やさぐれていたから物珍しく目に映り、面白く感じたのだろうが……本来の彼女は、典型的な貴族令嬢だ。いずれ彼が見慣れ、飽き、面白味を感じなくなったら捨てられる。


 政略的でも十年以上隣で過ごしてきた人間だって裏切るのだ。会って間もない男性が、一生愛してくれるはずはない。



「ヴィム様、まだ私に飽きないのですか?」



 そろそろ新鮮味が薄れてきた頃だろうと思い聞いてみるが、ヴィムは笑みを深めた。



「まさか! むしろどんどん興味を引かれているよ。一目惚れした相手が、俺を意識し始めているって手ごたえがあるのに、どうして飽きる?」

「一目惚れ?」

「あぁ、言ってなかったか。卒業パーティーで好みど真ん中のシャルロッテ嬢を見つけて喜んだのも束の間、王子の婚約者と知って撃沈。しかも話の流れでは悪女だったし、手に入らないのならそのまま放置しようと思ったら、あなたの予想外の行動に釘付けになって、もう夢中だよね」

「は、はぁ……」

「そして運よくお見合い相手になって会うようになれば、反応がとても可愛いときた。どんなプレゼントでも大切そうに受け取る仕草とか、口説いたらわずかに泳ぐ視線とか、笑みを向けたら耳が赤くなるところとか、俺の行動で変わるところが本当に面白い。もっと色々な表情が知りたくて仕方ない。飽きるどころか、俺は深みにはまっていっている最中さ」



 想像以上にベタ惚れの言葉をもらい、シャルロッテは顔を真っ赤にさせた。

 ヴィムは蕩けるような笑みを浮かべて、彼女の両手を握った。



「ちなみにシャルロッテ嬢は、結婚相手に何を望む?」

「……信頼と安寧です。私を害することなく、見放すことなく、一生ずっと守ってくれたら嬉しいなと思いますが……それが難しいことも知っています」

「そうだな。しかしその信頼さえ得られれば、俺のものになってくれるんだな――アルファス!」

 《呼んだ?》



 狼の姿をした悪魔が召喚される。



「アルファス、真実の契約をしよう。俺が約束を破ったら、魂ごとくれてやる」

 《するする! で、条件とする真実は?》

「ヴィム・ギースベルトは、愛するシャルロッテ・エーデルシュタインを幸せにする努力を一生続けることを誓う」

 《言葉に偽りなし! 真実の契約成立だ!》



 止める暇もなく、ヴィムは契約してしまった。そして悪魔は喜び、すぐに姿を消した。

 たまらずシャルロッテがヴィムに掴みかかる。



「悪魔と魂の契約をするなんて――」

「これであなたは俺を信用できるし、安心だな?」

「――っ」



 無茶苦茶だ。けれど魂をかけてくれるほど、自分を本気で愛してくれていることは嬉しくて――シャルロッテは一歩、前へと踏み出すことにした。



「きっと私はあなたを好きになります。ヴィム様、幸せにしてください」

「もちろんだ! 愛してるよ、シャルロッテ」



 好意を受け入れると決めたあとの、「愛している」の言葉はとても甘美に聞こえた。

 シャルロッテは気持ちに素直になり、とびきりの笑みを浮かべた。

 ヴィムの青い目が大きく見開かれる。



「あなたの笑顔は、こんなにも素晴らしいのか。可愛い。あなたは本当に可愛い」



 ヴィムは宝物を閉じ込めるようにシャルロッテを抱き寄せ、何度もつむじに口付けを落とした。


 こうしてやさぐれ令嬢は魔術師に愛され、五度目の人生を幸せに過ごしたのだった。


 END

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