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相性に負けたんじゃない  作者: ももいろ珊瑚
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続、相性に負けたんじゃない

 

 僕と彼女の恋もそうだった。


 結婚するとかしないとかではなく、取り敢えず永遠と錯覚させるのが恋なのに、いや錯覚させてくれるものと考えていたのに、僕たちは出逢った時から、別れの準備をしていたような気がする。




 僕たちは、彼女の部屋で最後の晩餐をした。


 陰気な別れは嫌だと言う彼女の提案で、すき焼きを食べながら明るく別れようと、いうのだ。


 実に……彼女らしい。


 世の中に明るい別れなんぞ、存在するのかと思っていた僕だったが、すき焼きがぐつぐつ煮える鍋を挟んでの二人は、すべてが滑稽だった。




 焼酎をロックで飲みながら、 彼女が言う。


「ねぇ、今、思い出したんだけど、すき焼きって、お肉のそばにしらたきを入れると、お肉が堅くなっちゃうんだよね?」


「初めて聞くよ」


 日本茶を自分で入れながら、僕は答える。




 しらたきのカルシウムの成分が、

 お肉の蛋白質を堅くするのよ


 “相性”って奴だな


 そうかな?


 じゃあ何だい


 タイミングの問題じゃない?

 お肉が煮えてから、しらたきを入れるとか、

 しらたきが煮えてからお肉を入れるとか


 なあ……そういうのは、疲れないか?


 ええ、疲れたのね、お互いに_




 そして、ご馳走様と別れの言葉を、一度に言うのは初めてだった。




 「明日の朝、これにうどんを入れて食べる」


 彼女はそう言ったけど、別れた恋人と最後に食べたすき焼きの残りは、どんな味がするのだろう。


 玄関口で交わした、僕たちのキスは、焼酎の匂いと、少し濃い、関東風のわりしたの味がした。


 そして彼女は僕に、すき焼きの残りの牛肉を包んで持たせて、


 何も返さなくていいから、サヨナラ。


 と言った。彼女とは本当にそれきり。


 それにしても、変わった女だったが、




 僕たちは相性に負けたんじゃない!



これにて完結です。


とある友人に宛てて書いたものです。


『いいわけじゃない。某恋人のはなし』というシリーズに纏めました。

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