ハローベトナム
ー20**年 5月 ベトナム 某ホテル一室にてー
20代前後半から30代前半の若くて、筋肉質な男達12人がホテルの一室にてミーティングを行っていた。
そこにいる人種は、日本人だけでホテル側から見ればただの団体客にしか見えないだろう、ただ違和感があるとすれば欧米人と遜色ない顔つきの日本人が多い団体ってだけだ。
「状況説明、横山よろしく。」
年齢と階級が一致しない、20代後半の男性がハキハキと声を上げると、横に座っていた体格のいい男が持っていたパソコンをテレビに繋げる。
「大まかな概要は、出国前に三ツ矢さんから説明を受けただろうが、再度口頭で説明する。質問は最後に。」
見た目の割に丁寧な口調で男たちに語りかけた。
「攻撃目標は、北ベトナムに位置する急進改革派 呼称を、便宜上Bと呼称する。」
急進改革派、法的な手続きを経て権利を獲得するのではなく、如何なる手段を使ってでも、即時に権利を獲得しようと企む派閥。武力行使を前提に権利取得など、テロ行為以外何者でもない。国家の癌。
「今後作戦に際して、三つの段階に細分化。情報収集、偵察、攻撃の三つ。攻撃作戦開始は今日から2週間後。」
もしこの作戦が、本来の形で行われる作戦であれば実行部隊と情報収集行為は乖離していたはずである。殺す事だけを訓練された実行部隊と、情報戦に強い要員に分け、其々の得意にて作戦を完遂するのが本来の形だ。
「作戦決行時間は情報収集後再度告知。1週間の内に、敵人員数、装備の程度、基地の規模などの情報を集めてくる様に。」
このXと呼ばれる部隊は、苛烈な状況下における任務遂行能力、数十ヶ国語を話し、多様な知識を持つ、いわゆる天才のみで組織された統合型部隊。
自衛隊にも、特殊作戦群なるものはあるが、特選群は国内のあらゆる有事に向けて対策組織された部隊であり、性質的には特殊部隊の色が強い。
「一応、入国前に米国から提供された。情報はあるが、小規模な犯罪組織は大きな組織と違ってモノ、カネの動きが活発で情報が腐りやすい。情報のアップデートの為に現地での収集活動を行う。」
統合型部隊とは、CIAの様な情報収集能力、米軍デルタフォースの様な、攻撃能力。この二つの機能性を兼ね備えた、少人数精鋭の集団である。世界に遅れをとった、対テロ後進国、日本が生み出した部隊である。
「以上。質問?」
男達は、黙ってモニターを見守っていた。そんな中ひとりの男が手をグーにして、顔の横に挙げる。
「東、質問を許可。」
「調査に対しては、個々に裁量権が与えられたと考えても?」
「無論、個人個人に裁量権は認められている。各自自由に行動する様に」
「付け加えて、自由活動だが、攻撃作戦まで殺害は無しとする。」
「以上、解散してよろしい。」
解散に声が掛かった瞬間、男達は部屋から出る。
短いブリーフィングだが、短い説明と注意事項だけでやる事は各自完全に理解している。ある者は、その足民間人として現地に馴染み込み、ある者は武器ブローカーとの接触を図りに行動していた。
Xの隊長である三ツ矢は、ブリーフィングが終わるとすぐに、都市近郊にあるバーに足を運び。隊長自らも諜報活動を行っていた。