世界観を簡単に、
21世紀における人類の戦争体系は、テロリズムとの戦いに推移した。
今や国家間における戦争は紛争程度に落ち着き、経済的な制裁をもって他国に攻撃する戦争に変化した。
軍事国家は廃れ、亡国と化し、国としての形態を変え、スタンダードである資本主義国家へ移り変わっていった。マルクス社会主義を唱えた旧ソ連も、経済的効率の悪さから国民を貧困に陥れてしまい、制度を維持できずに崩壊した。
話を戻そう、現代における戦争体系は、テロリズムとの戦いだ。
その時、日本はその新たな戦いに適応できていなかった。20**年における、中東のテロリストグループにおける日本人拉致殺害事件をあの時ニュースを見ていたならば知っている筈だろう。あれは国内のテロリズムではなく外なる世界における、テロリストとの戦いの一例である。
米国で起きた同時多発テロ、二機の大型飛行機がワールドトレードセンターに突入し爆散したその時から世界はテロに対する見方を変えた、ただ単に頭のおかしい犯罪者集団の自殺芸とは思わなくなっていたはずだろう。
その背景がありながら、拉致殺害事件当時の日本だけは違った。日本はテロリストとは会話をしないとの声明をだし、囚われた日本人を開放することを求め、形としてだけ発表。事態の収拾を見守るだけだった。その後、拉致被害者は殺害された。武力で脅すこともなく、取引を受け入れることなく、自国民を見捨てた。
現在、その対テロ戦争後進国である日本は変わろうとしていた。
―20**年― 国会にて秘密裏に通された法案。
「特殊安全保障及び他国における日本国民保護法案」
内容は、他国にて生存する日本人の安全な帰還、その際には自国民帰還のためにはいかなる行為を持っても帰還させることを目的とする法案だった。むろんこの法案は、情報開示制度によって開示される予定ではあるが、それは30年後の話である。