Y 弁当作ってます
「おまえ、それ自分で作ってんの?」
後ろから突然声がかかり、おれははっと斜め後ろを仰ぎ見た。
「え、あ、はい、そうですけど…」
斜め後ろから浜崎先輩がじっっっくりとおれの弁当を見る。釣られておれもしみじみと自分の弁当を見つめなおしてしまった。
かぼちゃの肉巻きにプチトマト、ポテトサラダとご飯。ご飯のそばに実家から送られてきた佃煮。
いや、そんな大したものは入っていないからやめてほしいんだけど…。
「な、なんかありました?」
上目に見て尋ねると、先輩はふーむ、と腕を組んだ。
「こんなしっかりした弁当おまえが作ってんのか…」
「いや大したものじゃないですけど…。どしたんすか先輩?」
睨み付けるように弁当を見るのをやめ、どかっと先輩が隣の席に座った。ちなみに隣の青木さんは外へご飯を食べに行っている。
「おれ、先月車買ったじゃん?あれの支払いが今月きたんだけどさぁ…」
はぁぁぁ、と深いため息。
「何かしらねぇけど思ってたより随分高くて…」
話の流れはわかった。金欠で手作り弁当にしようか悩んでるってことだろう。
おれの予想通り、先輩は金欠だから昼を弁当にしようと思うんだ、と続けた。
「けどおれ料理全然出来なくて…やっぱ無理かなぁ?」
「そんなことないと思いますよ」
実際、おれももともと料理が得意だったわけではない。必要にかられてやるようになったら段々コツがつかめるようになっただけだ。にしても先輩はおれが弁当作ってるって誰から聞いたんだろう…。
「おれが初めて料理し出した頃のレシピ本あげましょうか? あれなら卵割れたら弁当作れますよ」
「マジか! ありがとう!!」
まあおれにはもういらないし、役に立つならなによりだ。
今日は菓子パンを買ったのだろう、先輩がロールパンを袋から取り出してかぶりついた。
「にしてもおまえは何で自前弁当なの? 別に新人っていってもそこまでお金がないわけじゃないだろうに」
言われておれは苦笑いした。
「いやまあそうなんですけど…やっぱり栄養バランス偏るしおれ1人じゃないんで…」
「あ、そっか。おまえ結婚してんだっけ」