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異世界召喚された時に希望職業を聞かれ、つい医者と答えてしまった  作者: 木常
序章 給料とか考えたらやっぱ医者だよね?
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003 神様との会話 2

採用が決まってからの面接はいいですね。 恵理さんも緊張していないようです。

 神様の話をまとめると、こういう事だった。


 新しく行く世界では、世界が滅ぶくらいの何かが起こりつつあるらしい(詳細は全く教えてもらえなかった。プンプン) 神様自身が解決すればアッという間なのだが、世界にあまり干渉しないという方針を変更したくない、更に言えば、住民が自分の手で解決していくところを見てみたいという事みたい。 それって、言い方変えれば実験? 異世界の人を送り込んだら住民が解決って事にならなくない?という質問には答えてもらえなかった。 この神様、けっこう理不尽です。

そして私達は、2か月後の修学旅行のバスが大事故を起こして全員死ぬ事が確定しているらしい。 その運命を変えられないのかって、かなりしつこく頼んでみたんだけど「無理、確定事項」の一点張り。 政治家や警官や裁判所だってもうちょっと柔軟性あると思うわ。


 それから神様は、私に何になりたいか聞いてきた。 自分の世界ならいろいろな職業について知ってるけど、異世界がどういう風に出来ていて、どんな職業があって、どんな社会の仕組みなんて分からないのに答えようがないから、私は今の希望をそのまま伝えたわ。


 「強いて言えば医者になりたいと思っています。」


 「ふむ、医者とは、こちらの世界で言う治療師の事じゃな。」


 「治療師がどんなものか分かりませんが、医者とは病気やケガを直す職業です。」


 「それなら安心されよ、立派な治療師になれるように取り計らっておく。」


 「ちょっと待ってください、その治療師というのはどんなものなんですか?」


 「主に魔法や時には魔法薬を使って怪我や病気を治すのじゃ。」


 「どんな怪我も病気もですか?」


 「治療の難しい、時には不可能な病気もあるので、"どんな病気も"とは言えん。怪我も無くなった腕が生えてくるようなものは無理じゃ。せいぜい傷がふさがるくらいじゃな。」


 「どんな病気なのかは分かるんですか?」


 「そうじゃなあ、一つの治癒魔法でだいたい良くなるから、病気の種類なんて知見は広がっておらぬようじゃな。」 


 「それじゃダメですね。」


 「は?」


 神様でも「は?」なんて言うんだ、ちょっと可笑しくなって少し吹き出しちゃった。気づかれたかな?


 「だって、どんな症状か、原因が何かが分からなければ治療出来ないじゃないですか。その場しのぎの対処しても、原因を絶たなければ再発するかもしれません。」


 神様が少しポカンとした顔をしているのを幸いに、私は畳みかけるように続けた。


 「医者の仕事っていうのは、一つには予防です。怪我や病気の原因を特定して、それが起きないように、関係機関と連携します。対策は主に行政や民間企業などの医療とは別の機関がやる事が多いので、医者は主に専門家としてのアドバイスをします。 それから診断です。人間の5感全部使って、視診・触診・打診・聴診などを行う能力が必要です。嗅覚なんかも重要だし、場合によっては第六感っていう閃きなんかもとても重要です。患者から症状を聞き取る問診も重要で、コミュニケーション能力も必要です。 それから、診断には様々な機器を使います。 聴覚の補助をする聴診器をはじめとして、顕微鏡、超音波、内視鏡、それからX線を使ったレントゲンやCTスキャン等で、より詳しく診察します。 血液や尿や幹部の切片を採取して化学的生物的に検査したりもします。 これらの機器や検査の利用は、やはり大勢の専門家が必要です。 それから治療です、症状に合った薬を選ぶ知識も必要になりますし、手術を行うこともあるので手先の器用さもあったほうがより良いです。 これら道具や薬も専門家が必要です。 また、手術室や無菌室などを備えた病院、患者を移送する救急車や救急ヘリなど、例を挙げればキリが無いのですが、こういった関係機関と連携して、万全の医療システムを構築し、その中核となる医者になりたい、これが私の希望です。」


 神様のポカン具合が5割増しになっていた。


 10秒ほどの沈黙があってから、神様の目に光が戻ってきた

 

 「おかえりなさいませ。」


 「これ、ワシをからかうでない。 いや、ちょっと間が開いたのはな、お主の話が半分以上分からなかったので ちょっとお主の世界の神様の所まで行って病院とやらを見学してきたのじゃ。 なるほど、ワシの世界の治療師とは全くの別物だという事が分かったわい。」


 「今行ってきたんですか?」


 「そうじゃ、今見てきたのじゃが、なかなか良く出来た世界じゃ。ああいう物をワシの世界に持ち込むのも面白かろう。 是非頑張って欲しいものじゃ。」


 「あ、いきなりOKですか? てっきり断られるかと思いました。」


 「まあ、いきなりは難しいからのう、見たところ、どうやら医者として独り立ちするのは30歳くらいのようじゃの。そのくらいまでには、ある程度医者と呼べるものになれるように環境を整えておこう。」


 「ありがとうございます! あの、環境っていうのは?」


 「ま、それはおいおい分かるじゃろ。 あと、医者に必要そうな能力、6感をフル活用じゃったかな、それと手術が出来る手先の器用さ、治療の知識や患者の事を覚える記憶力、観察力、検査の器具や機械を作ったり直したりする計算力と応用力はそなたの能力に埋め込んでおこう。」


ちょ!それって、現世で欲しかった! その能力持って今の学校生活に帰りたい!


 「ところで、これは余談なのじゃが、やはりお主が医者になりたいというのは、世の為人の為、命を助けたいという信念なのかな?」


 「あー、それは・・・えっとー。」


 「どうしたのじゃ、恥ずかしがらずに言っていいのじゃぞ。」


 「いやー、2年生になる時に、希望する大学の調査があって、そこで私まだ何も考えてなくて・・・。」


 「ふむふむ」


 「とりあえず儲かる職業って考えたけど、最近じゃ大会社も潰れる事あるし、アメリカとか中国とか北朝鮮とかもどうなるか分からないし、かといって公務員も無いなと思って・・・」


 「ふむふむ」


 「何か手に職をって考えた時に、あ、医者になっておけば給料もいいし食いっ逸れは無いかなあって・・・」


 「うむ、ちょっとだけ聞いて損をしたような気がするわい。」


 「見ての通りの一般小市民なので、そこはご勘弁を」


 「まあ良い。 これからそなたは新しい人生を始める。 ひょっとしたら、また会う時もあるかもしれんがこれで最後かもしれん。 何れにしても、そろそろ時間じゃな。 さらば、賢き子よ、達者で。」


  「あの・・・ところで神様・・・」


 

そこまで恵まれた能力は別に要らないからって言いかけた私を遮って、神様はスーッと光に溶け込むように消えてしまった。  5感をフル活用じゃなくて6感? 観察力に記憶力? 手先が器用? そんなの私じゃないような・・・。


そんな事を考えている間に私も光に包まれて、その空間から溶けていった。


誰かの手に包まれる、息が出来ない。 誰かが私のおしりを叩いた。 私はおもいっきり声をあげて泣いた。むしろ鳴いた。


 「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」

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