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DEAR 先輩  作者: 村崎ユーキ
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総務係と生徒会長(1)


 総務係



 それは、賢木高校生徒会に存在する、選挙以外の自由推薦枠で選ばれた一名の生徒が任される役職である。そして、自由選択枠とは生徒会長自らの推薦というものである。


 が、しかし総務係とは名前だけ。

 基本的には雑用。

 つまり、パシリと言っても過言ではない。



 とはいえ、実は選ばれた者は時期生徒会長候補であるという噂も流れている。


 任命されたものにしか分からない辛さがあるが、賢木高校創立時からしきたりのように続く由緒ある役職なのである。




* * * * * * * * *




 私立賢木高校――通称“さか高”は、主人公長戸秀介(ナガトシュウスケ)が通っている高校である。


 現在1年生である彼が本当に行きたかったのは実は別の高校だった。

 なぜこの高校にいるかと言えば、第一志望に落ちてしまったからなのだ。


 彼は特に大きな志望動機があるわけでもなく滑り止めとして受けた賢木高校に、この春から入学していた。入学してしまった。



 この高校は、偏差値が飛びぬけて高いでも低いわけでもない。


 要するに中堅の学校なわけだ。

 そんな高校に秀介は首席で入学した優秀な生徒だった。


 確かに、滑り止めに入学する事になってしまったわけだが、彼に大きな不満があったわけではない。

 秀介は数年前から創設された特進クラス(Sクラス)に所属し、将来は有名大学に受験を目指して頑張ろうと、彼なりに前向きな気持ちで入学したのだ。




 そうは言っても、一つだけ彼にとって言葉で表せないほど嫌なところがあった。

 それが何かと言えばこの高校の生徒会のメンバーの一人だ。



 その人物とは多くの生徒から指示されているも生徒会メンバーからは恐れられている生徒会長。


 滝元美紗緒(タキモトミサオ)その人であった。



 彼女は秀介の先輩で3年生。


 女子からも憧れの眼差しを向けられるほどの容姿と、教師陣からも一目置かれる優秀な成績を修める彼女は、さか校でも一目置かれる存在だった。




 その彼女は、今まさに秀介の目の前にいるお姉さん。腰まで届きそうな艶の在るストレートの黒髪を揺らしながら肩で風を切って廊下を歩いている。


 反対側から歩いてくる生徒は皆、彼女の美貌に魅了され、見惚れながら通り過ぎていくのがわかる。顔だけでなく、腰はしっかりくびれているし胸もほどよく大きく背も高い。

 モデルのような体型に、男女関係なく誰もが憧れていた。



 数ヶ月前、入学したてだった秀介は、いきなり生徒会長である目の前を歩く美紗緒に呼び出されいつのまにか生徒会役員になっていたのであった。



「秀介! もう、ぐずぐずしないで早くついて来なさい! ったくトロいわねぇ。使えない男ってほど邪魔なもんはないわ」


 美紗緒は急に立ち止まって秀介に振り向き、苛立った様子だ。

 つり上がり気味の大きな瞳は黒目がちでとても綺麗だ。

 鼻筋も通っていて、彼女の美貌を際立たせる。こんなに綺麗な顔をしているというのに、性格がキツイことに、秀介は心底残念に感じていた。


 しかも、彼女が振り向いたこの瞬間、何故かタイミングよく人がいない。人目が在るときはニコニコとして笑顔を振りまいているというのに、生徒会役員に対しては人が変わった様に苛々している上に短気な性格に変貌するのだ。



「す……すみません、何せこの書類の束がっ……おっ思いのほかに重いもんで……なんつって」


 その言葉を言い終えた瞬間に、秀介の頭部にガツンと強い衝撃が走る。


「ふおおおおお……! いってぇぇえ」

 その衝撃の原因は明白。風を切って美紗緒の拳が飛んできたのだ。

「馬鹿も休み休み言いなさい。ったく、せっかく生徒会に入れてあげたってのに」

 美紗緒は自分の拳をハンカチで拭きながら冷淡に呟く。

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