第41話 迷いの理由
「さて、集まってくれたのは他でもない先の暴風竜討伐についてあんたからも話を聞きたかったからだよ」
カケルはギルド本部でマスターのカレンと向き合って座っていた。
「あぁ、とは言っても戦いのことはあまりよく覚えていなくてな。ボッシュやミリアルドさんに聞いた内容の方が正確だと思う」
「それで構わんさ、当事者から話を聞くのが大事なんでね。面倒だと思うが割りきっておくれ」
「俺は全く構わないぞ」
カレンからは暴風竜の戦闘に関する流れと、覚えている限りの状況を質問された。
すでに他のものからも十分に聴取していているようで、
特に気になるような点も無かった。
聴取は30分ほどで終わり、カレンが書記係に合図すると
彼はそのまま席を立ち二人きりとなった。
「ふぅ、ありがとうよ。これで後処理も終わるだろうさ」
「大変だな、あとすまんが俺のことは・・・」
「分かってる。王都の方にはなるべくあんたの事は目立たないように報告してあげるよ」
「ありがとう、気を遣わせてすまんな」
「いや、でもそれ自体はあまり意味がないと思うね」
「どういうことだ?」
「あんたはこの街じゃもはや有名人さ。小賢者なんて呼ばれてるが皆あんたの事を知ってる」
「だがそれは・・・」
「本質的な理解じゃない、だろ?言いたいことは分かる。だがあんたが引き継いだであろう力を狙うやつらはどこにでもいるんだ。そいつらにとっては同じじゃないかい?」
「やはり・・・知ってたのか?」
「そういう所も心配な理由だよ。今のはカマをかけただけさ。」
「・・・そうだったのか。ボッシュとミリアルドさんからは何も?」
「あいつらは結局私にも何も言わんかったさ。もちろん私はボッシュとミリーが子供の時からの付き合いだ。あいつらがどんな事をしてるかも知ってる。だからあいつらとの関係性を見れば一目瞭然だよ」
カケルは静かに目を閉じた。
「そういう甘さも含めて、あんたにはまだ成長の余地がありそうだね。英雄と言われて戸惑ってるかも知れないが足元を疎かにするんじゃないよ」
「まともに会話するのに、厳しいことを言うな・・・」
「ハッ!あたしにとっちゃギルドに所属したやつは全員あたしの子供みたいなもんさ。親が子供の心配するのは当たり前さね」
カケルはその優しさに救われるような気がした。
「さぁ、聴取はこれで終わりだよ。街も次期に元通りになる、精進しな!次代の賢者」
カケルはそのまま部屋を出た。
・・・
・・
・
カケルは一人歩いていた。
なぜか大賢者のコカトリス亭に帰る気にもなれず、
かといって街中を歩けば人に誰かしらに見られてしまう。
そのため、今は城外の森の中を何をするでもなく歩いているのだ。
「どうしたもんかね」
悩みながら歩くカケルの前に、
突然懐かしい顔が姿を現す。
「あら、カケルちゃん。なにかお悩みの顔ね」
突然声をかけられ驚くカケル。
そこにいたのは、賢者の塔の管理者ワルツであった。
「少し見ない間に成長したようね」
ワルツがカケルを見て言う。
「あぁ、色々あったからな」
カケルは自嘲気味に笑いながら言う。
「悩んでいること、当ててあげましょうか?」
カケルは無言でワルツの目を見る。
「何をどうしたら良いのか、分からなくなったのね」
カケルはその言葉にも無言で答えた。
ワルツの言葉は的確にカケルの心を突いていた。
ロロを助けるためには、大賢者の叡知のコントロールが必要不可欠だ。
だがそれはカケルが考えていたよりも簡単な事では無かった。
まただからと言って大賢者の叡知を使用し続ければ回りに迷惑がかかる。
暴風竜の襲来が、その最たる例だ。
この世界に執着もなく、ただ強くなりたい、
ロロを助けたいと言う漠然とした目標に、
カケル自身が納得できなくなってしまっていたのだった。
「ワルツ、俺はどうすればよい」
「そんなの知らないわ」
ワルツは冷たく突き放す。
「あなたが何をしたいのか、どうしたいのか。しっかり考えてご覧なさい。そうしないと貴方、腐るわよ」
そう言ってワルツは街の方へと歩き出した。
本当にそれだけ言いに来たのかよ、カケルは思った。
それから日が暮れて、夜になってもカケルはその場で
自らの気持ちを考え続けた。




