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第40話「決着の瞬間」


ーーー魔闘術<破岩>


カケルの拳が、暴風竜の胴体を叩く。

衝撃が全身に伝わり、身体の内部が破壊される。

古武術にもあるような地味だが強力な技だ。

無属性魔法インパクトもそうだが、

カケルはこういったタイプの技を好んで使う傾向があった。


大賢者の叡知を使い、魔闘術の創始者であるガルドの記憶に接続した際に、魔闘術のいくつかの技の知識も一緒に取得することに成功していた。



「グギャアアアア!!」


暴風竜が鳴き声をあげる。

と同時に、その口からは大量の血が吐き出された。

呼吸も荒く先程から肩が大きく上下している。

効いている、とカケルは思った。


魔王リエルとの戦い、

聖者の右手による結界、

ボッシュ、ミリアルド、セブンとの戦い。

そしてカケル。


暴風竜は連戦続きだ。

さすがにダメージと疲労は隠せない。

だが肝心の竜鱗はいまだに顔を出さず、

カケル自身の限界も迫っていた。



「しぶと過ぎるだろ・・・」


カケルの魔闘術の限界も近い。

聖者の右手ももう効果は長く続かないだろう。

ここで暴風竜を引かせるためには、

乾坤一擲の一撃が必要である。


暴風竜の怒りを一身に受け、

それでもカケルは戦いを続けていた。


その戦闘を見ていたボッシュは驚いていた。

数日前に修練場でカケルと戦った時とは、

まるで別人のように戦闘能力が高まっていたからだ。

あの魔力の塊を全身に纏う見たこともない戦闘方法もさることながら、驚くべきはその戦闘センスだ。


暴風竜との戦いの最中にも、

動きがどんどん洗練されていっている。

戦ったこともなかった竜族との戦闘に、

今は確実に慣れていっていた。


これが大賢者の叡知の恩恵なのか、

それともカケル自身の力なのか。

どちらにせよ進行形で爆発的な成長を続けるカケルに

畏れに似た感情を抱き始めていた。



暴風竜もまた、

カケルに対して侮蔑以外の感情を抱き始めていた。

もちろん今でも目の前で大賢者を思わせる魔力を振るうカケルが憎い。


だが全身から溢れ出させた濃密な魔力は、

大賢者には遠く及ばないものの、

自らにダメージを与えるには十分な量だ。

人間でここまでの力を持つものと戦うのは久しい。

暴風竜はカケルとの戦いの最中、そんなことを考えていた。


加えてまだ発展途上を感じさせる未熟な戦いぶりに、

カケルと言う人間の成長性を垣間見ていた。

おもしろい、大賢者以外の人間にそんな感情をいただくのは

いつぶりだろうか。



それぞれの想いを胸に戦いは続く。

だが決着の時は唐突に訪れた。


「カケルさん!」


セブンの叫びに、

カケルが上空を見上げると辺りを覆っていた魔力のベールが

薄まってきていた。

「聖者の右手」の効果時間が終わったのだ。


「まずい!魔力が戻ってしまう!」


ミリアルドがそう叫ぶと同時に、

暴風竜の瞳が緑色に輝く。


「グギャアアアアアアア!!!」


翼を大きく広げ咆哮する暴風竜。

途端に、暴風竜を中心に再び風が巻き起こった。

魔力が戻ったのだ。


「くっ!カケル、もう終わりだ!」


ボッシュが叫ぶ。

暴風竜の元に風が集まり、圧縮されていく。

高まり続ける魔力を見て、カケルは危機を感じる。


「ウォァァァァァ!!」


暴風竜が魔力を溜めきる前に。

カケルは残りの魔力を注ぎ込み、

魔闘術を強化した。



ーーーー魔闘術<連雀>



暴風竜の魔法を止めるため、

その身体に連撃を叩き込む。


手応えを感じはするが、

「聖者の右手」の効果が切れた今、

暴風竜の身体は魔力で硬化しており、

打撃の威力は削がれてしまっていた。


そして、暴風竜の口許に魔力が蓄積される。


「・・・死ね。次代の賢者よ」


暴風竜は無意識のうちに、カケルを認めていた。

そしてその意識に呼応するように、

全力かつ最後の魔法を放った。





ーーーー竜魔法<風の咆哮>




風魔法を濃縮した、緑色の閃光が解き放たれる。

レーザービームのように吐き出された魔法は、

地面へとぶつかる。

遅れて轟音が響き、周囲は爆発に包まれた。



・・・

・・




「グルル・・・」


暴風竜イル=バルヴァロは自らの魔法により破壊し尽くされた

岩場に立っていた。

もはや魔力の残存は微々たるものである。

ここまで追い込まれたのはいつぶりだろうか。

最後の瞬間、余力を残すことが出来なかった。

カケルを全力で倒すことに夢中になってしまった。


「・・・しぶとい奴だ」


視線の先にはカケルが倒れていた。

探知魔法を使うと、まだ生命の反応がある。


思うところはあるが、

やはりここで殺すことにした。


暴風竜は身体を引きずるように、カケルに近づく。

気を失っているカケルからはほとんど魔力を感じず、

呼吸も弱い。


暴風竜は初めて大賢者と出会ったときの事を思い出す。

そして今生の別れとなった時のことも。


「もしも貴様が俺を倒すなら・・・」


気を失ったカケルに暴風竜は語りかける。


「・・・もう一度、信じても良かった。大賢者を救えると言う貴様の言葉に耳を傾けても良かった」


そうした想いを切り捨て、暴風竜は牙を剥く。

大賢者の叡知を奪うために、カケルの身を食らう必要があった。


「・・・その言葉、守れよ?」


捕食の一瞬の隙。

カケルは右手に「残しておいた」すべての魔力を込め、

暴風竜の口内に叩き込んだ。


ーーー魔闘術<破岩>


「グギャアアア!!」


予期せぬ攻撃に動揺する暴風竜。

口内に走る激痛に膝から崩れ落ちる。


そして体勢を崩した暴風竜の視界に映ったのは、

一陣の風だった。




「でぇやああああぁぁぁァァァァ!!!!!!」




緑の疾風と呼ばれるミリアルドには遠く及ばないそのそよ風は、

飛び込んできた勢いそのままに、暴風竜の喉元に剣を振り抜く。



度重なる戦い、そして全力で放った竜魔法。

低下しきった体力の末にようやく姿を表したそこは、

竜族の唯一無二の弱点。竜鱗であった。


そしてそのまま受け身も取れずに地面にゴロゴロと転がる。

風魔法を纏い飛び込んできた者の正体は、ルークである。


「ギャアアアアアオオオオ!!!!」


響く暴風竜の鳴き声。

そしてそのまま、暴風竜は意識を失い倒れる。


ズシン、と響く振動。

ルークは自らの心臓の鼓動が大きく鳴るのを聞いていた。


「す・・・ごいなルーク・・・・」


カケルもまたそのまま意識を失った。

吹き飛ばされた岩場に最後まで意識を保ったままでいたのは、

残されたルークだけであった。


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