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第27話 「初めての護衛」


それから5日。

午前は魔力変質を中心とした基礎訓練、午後は戦闘訓練、

そして夕食後はまた魔力変質の訓練という生活を送るカケル。


ちなみに戦闘訓練に付き合ってくれているのはセブンである。

彼女もまた、ボッシュやリエルに負けぬほどの武力の持ち主であった。


「ハァァァァ!!!」

上空へ飛び上がり、獲物を叩きつけるセブン。


「うおぁぁ!」

転がるようにその攻撃を避けるカケル。



セブンの振り下ろしが決まると、カケルがいた地面が轟音と共に破壊される。

魔力を纏ってはおらず、シンプルな怪力だけでこの威力だ。


ちなみに彼女の両手に握られているのは掃除用の竹ぼうきである。


「ったく、何をやっておるか。戦わずして強くなれるか」

リエルは苛立たし気にその戦闘を見ていた。


カケルはもう何度も何度もセブンに打ちのめされていた。

テトラとの修行では魔力を使い果たし倒れると言うことはあったが、直接的なダメージで疲労困憊となるのは初めてであった。







だがその一方、厳しい修行の成果は確実に出ていた。



「・・・」

座禅を組ながら目を閉じて魔力を練るカケル。


カケルの魔力変質は安定的に成功するようになり、

魔力が魔法になる直前の状態を保つことが出来るようになった。

自転車に乗れた時のように、一度コツを覚えてしまうと

次からは簡単に魔力変質が出来るようになってきた。


そんな姿を見たリエルとセブンが話す。


「・・・リエル様」


「うむ、こちらの方は驚くべき物覚えの良さよの。予定より早いが次に進むとするか」








「いいか、よく見ておれ」

午後の戦闘訓練は取り止め、カケルはリエルの目の前に座っていた。


「魔力変質はただの基礎、ここからが魔闘術の難しいところじゃ」


ここまででかなり難しかったんだがな、とカケルは思う。


「魔闘術は全身に魔力を纏い、それを攻撃手段に変える技じゃ。そして・・・」


リエルが魔力を練る。

相変わらず恐ろしく濃密な魔力だ。

だがその魔力は魔法に変質することなく、

そのまま濃度を増していく。


「魔力は魔法になるその瞬間、炎の魔法であれば熱を帯び、氷の魔法であれば冷気を纏う。そして

魔闘術は・・・こうじゃ」


リエルが力を込めた瞬間。

リエルの全身を魔力が覆う。


「これが魔闘術じゃ。魔法になるまえのエネルギーを身に纏うことで、術者の思い通りに魔力を使えるようになる。例えば・・・」



そう言ってリエルは自らの拳を、地面へと叩きつけた。

地面はそのまま陥没し、リエルの拳を中心に地割れが起きる。

近距離に座っていたカケルはそのまま後方へと吹き飛ばされた。


「今のは魔法ではないぞ。ただ破壊の力が魔力により増幅されただけじゃ。これが究極の脳筋、魔闘術。理解したかの」


リエルは魔力を霧散させると、もとの状態へと戻った。


「とんでもない力だな」


カケルは目の前の幼女が破壊した地面を見つめる。

ただ地面を殴っただけにも関わらず、

そのえぐれ具合は昼間のセブンの攻撃より遥かに深い。


たしかにこれならば、自分は強くなれる、とカケルは思った。


「理解した顔じゃの。よし、分かったら早速特訓じゃ。昨日よりも厳しくなると覚悟せよ」



すでに体力的には限界を向かえているカケルではあったが、

熱望した強さへの扉が目の前に開かれているかと思うと、

気力が満ちてくるような気がした。


三人の訓練は更にし烈なものになっていった。



・・・

・・



ルークは一人、ギルドの掲示板を見ていた。


昨日、大賢者のコカトリス亭にカケルの使いだと言う女性が現れた。

その女性はメイド服に身を包んだ、不思議な雰囲気のする女性であった。


彼女によると、カケルはとある魔導師に師事し修行を始めたらしい。

修行が終わるまでは帰れないが、暴風竜の討伐までには街に戻るとある。


それだけであればカケルが誘拐されたのではないかと心配するルークだが、

彼女がカケルの直筆と思われる手紙も持参したため、

大人しく帰りを待つことにしたのだ。


そして今日はカケルが居ない間に、

ギルドの依頼クエストを試してみようと一人ギルドに来ていた。


「採取に調査・・・3日でクリア出来そうな依頼はないな」


暴風竜の討伐まであと4日。

手頃な依頼がなく、ルークは頭を悩ませていた。

その時、ある人物が後ろから彼に声をかけた。


「こんにちわ、ルークさん。どうされたんですか?」


ルークがその声に驚き振り替えると、

そこにはギルドの受付嬢のリリスがいた。


「リ、リリスさん、いやギルドの依頼をと思ったんですが・・・なかなか丁度良い依頼がなかったんです」


「そうですか、確かに今は手頃な依頼はすべて受注されてしまっていますね・・あとは長期の依頼しか残っていないかも知れません」


「そうですか・・・仕方ありません。それでは今日も森に行って、採取と狩りをしてきます。」


「・・・あ、待ってください。ひとつだけさっき入った依頼があるのですが・・・」


「それは、どういったものでしょうか」


ルークはリリスに依頼の詳細を聞くと、二つ返事で受注を決め、その依頼主のもとへと向かうのであった。




・・・

・・



「君は・・・そうか、受注してくれたのは君だったのか」

ルークはロリリアの騎士団駐在所でミリアルドと向き合っていた。


「申し訳ない、普段はこういった仕事は騎士団の役目なのだが・・・暴風竜討伐の準備で人手が足りていなくてな。冒険者の力を借りる羽目になったと言うことです」


「いいえ、構いません。それより僕は護衛に混ざればいいのですね?」


「あぁ、その通りだ。近くの村へ向かう商人から護衛の依頼があってね。人員が足りないため力を貸してくれると助かるよ。近くの村へは往復で二日もあれば十分だと思うから」


「はい、任せてください」


「ありがとう、君とは縁があるね。また帰ってきた後に少し話そう」


ミリアルドは他の騎士を呼ぶと、ルークを紹介し自らは部屋へと戻っていった。

忙しそうだな、とルークは思った。






「君、護衛任務は初めてかい?」

商人の馬車に揺られていると、隣に座った若い騎士が話しかけてきた。

ルークより少し年上だろうか、まだまだ新品の鎧が光っている。


「はい、先日冒険者になったばかりで。まだ森で討伐などを繰り返しています」


「そうなんだ。僕の名前はトーレス。見ての通り新米騎士さ。お互い駆け出し同士頑張ろう」

そうしてにこやかに握手をする二人。


「まぁ僕らみたいな駆け出しにも出来るような任務、あまり大した稼ぎにはならないと思うけど」


ロリリアの街の周辺には強力な魔物や盗賊はいない。

それは日々、ミリアルドを中心とした騎士団が討伐、

見回りなどを行っているからで、

近辺の商人は安心して商売をすることができている。

このあたりがロリリアの街が発展し続けている要因のひとつでもある。


普段は滅多に護衛任務など発生せず、

あったとしても騎士団の数人で事足りるのだが、

荷主の商人が暴風竜の噂を聞き付け心配した挙げ句、

護衛を依頼してきたと言う背景だ。


「どちらにせよ、異変が起きない限りはのんびりした旅程だ。気長にやろう」


トーレスはそう言うと自らの道具袋を開けて、

剣を本格的に手入れし始めた。


のんきな人だな、と思いながらもルークはその言葉にすこし緊張を解き、馬車の振動に揺られながら睡魔と闘うのであった。



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