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第25話「闇の格闘術」


場所を変えて、リエルの城の中庭へと移動した3人。

リエルとカケル、それからメイドさんも一緒だ。


「では、まずは貴様の実力が知りたい。何でもいい魔法を使ってみせよ」


リエルにそう言われ、カケルはいつも通り<身体強化>、<加速>、

<魔弾>、<衝撃波>などの無属性魔法を披露する。


一通りの魔法を使いリエルをみると、

不思議そうな顔をカケルに向けている。


「ほれ、どうした。次は属性魔法じゃろ。火柱でも氷でも構わん見せてみろ」


そう言われ、一瞬動きが止まるカケル。


「あ、あ~・・・その」


カケルはリエルに属性魔法が使えないことを説明した。


「なんじゃと!? 次代の賢者が属性魔法を使えないなど、ありえるか!いいから魔力を練ってみせよ」


カケルは言われるがままに、以前ロロに見せたときと同じように属性魔法を発動すべく魔力を練る。

当然、魔力は霧散し魔法に成るまえに消えてしまう。


「どういうことじゃ!」

「どういうも何も、言ったとおりだけど・・・」

「ほ、本当なのじゃな。本気で属性魔法が使えんと・・・・。どれ」

リエルは再びカケルの顔をジッと覗きこんだ。

一瞬だけリエルの瞳が朱色に染まったように見えた。


「これは・・・封印が施されておる、のか?」


「分かるのか?」


「いや、妾でもわからん。しかし魔法発動時に機能するような類いの封印が施されておるのは感じる。こんな魔法は初めてみた。しかし一体なんのために・・・むぅ」


そう言うとリエルはなにかを考え込み、

ブツブツとひとり呟いている。


「やっぱり難しいのか」

強さを求めここに来たカケルであったが、

属性魔法を使えない以上、向上は難しいかと感じるところもあった。


「待て待て!妾が教える以上、諦めるのは早いぞ!戦う方法なぞいくらでもある、少し考えておくから待っておれ!」

慌ててリエルが言う。


「と、とりあえず次は組手じゃ!組手。貴様の実力を見せてみよ!」


「組手?」


「もちろん貴様と妾じゃ、ほれ。さっさと準備をせんかい」

そういうとリエルはシュッシュと言いながらシャドーボクシングのような行動をする。


実際、リエルの魔力は感じるものの目の前の幼女と戦うのかと想像すると、

どうにも気が進まないカケルであった。


「ほれ、どうした!遠慮しておるのか?雑魚は雑魚なりにせいぜいもがくのじゃ、ど阿呆」


訂正。

一瞬で目の前の幼女をボコボコにしてやりたい気持ちになったカケルであった。


「ハ・・・」

<身体強化><加速>


「む、やる気になったか。遠慮なぞ本当に不要じゃぞ」

カケルの魔法に呼応するように、リエルも魔力を纏う。

今度はしっかりとリエルの瞳が朱に染まったのが見えた。



望み通り全力でやってやる、とカケルは大地を蹴り

目の前の幼女の顔面に拳を放った。


だが、その拳は少女に届くことなく

空中で止まることになる。


「な・・・」


なにか、重くて柔らかいに絡めとられたような感覚。

カケルは拳を突き出したままままの体勢で動くことができなくなった。



「ほれ、どうした。この程度で動けんのか?」


リエルはそう言って、無防備なカケルの胸に小さな手を置く。


「ハッ!」

<衝撃波>


リエルが無属性魔法を放った瞬間、カケルの身体は後方へと吹き飛ばされた。

そのまま瓦礫の中へと叩きつけられるカケル。

カケルの放つ<衝撃波>とは比べ物にならないほどの威力だ。



「ハッハッハ!それでも次代の賢者か。そのへんの雑魚と本当に変わらんのう。さぁ、立ち上がって来い」

高笑いするリエル。カケルの反応はない、

パラパラと瓦礫が崩れるばかりだ。


「ほれ、どうした、ん?どうした?おーい」


リエルは返事のカケルを確認する。

カケルは意識を失い、すっかり気絶してしまっていた。


「お、おい貴様!目を醒ますのじゃ!こんな簡単に気絶するでない!おーい!」

意識を取り戻すことはおろか、呼吸も止まりかけていたカケル。

リエルはメイドさんを呼び、慌ててカケルを介抱させることとなった。



・・・

・・



「弱すぎるそ、貴様」

目を覚ましたカケルは、リエルと再び向き合い話していた。

カケルは正座でリエルの正面に座らせている状態だ。


「・・・言葉もない」

ここ最近ボッシュや、リエルといった格上との連戦続き。

それも殆ど手も足も出ずにやられているカケルは自信を失っていた。


「こんなもんじゃ、貴様を次代の賢者とは認められん。クソじゃ。ゴミくずじゃ」

幼女の罵声がカケルの胸に突き刺さる。


「ここから鍛えると言うのはかなりの大仕事じゃのう・・・」

「・・・見捨てないでくれるのか?」


「当たり前じゃ!妾は一度交わした約束を違えたりはせぬ。貴様こそ今さら戻れると思うな!」


生意気で言葉は悪いが、根は優しいやつなのかもしれないな。

カケルはそう思った。


「しかしのう・・・属性魔法も使えない、戦闘もたいした事ないでは・・・一体どうすれば・・・」

リエルはぶつぶつと呟きだした。

「それを習いにきたんだ」

負けたことは気にしていないとばかりに胸を張るカケル。


「威張る出ない雑魚が!」

きつい言葉にカケルはしゅんとするのであった。


その時、傍らで待機していたメイドさんが口を開いた。

「恐れながらリエル様、魔闘術はいかがでしょうか。カケル様にはぴったりかと存じます」


「む、魔闘術、魔闘術か・・・ふむ、たしかにそうじゃな。それなら属性魔法が使えぬ事も関係はないか。しかし次代の賢者が魔闘術か・・・」


チラリとこちらを見るリエル。


「その魔闘術ってのはなんだ?」


「む、気になるか。そうじゃの、簡単に言うと固めた魔力でぶん殴る感じじゃ。脳筋じゃ」


「固めた、、、<身体強化>とは違うのか?」


「次元が違うわ。魔闘術はかつて存在した魔族の武芸者が生み出した、闇の格闘術での。錬度さえ上げてしまえば、そんじょそこいらの属性魔法より破壊は数段上じゃぞ、、、」


「それ、俺でも使えるのか?」


「属性魔法が使えんくても問題はないじゃろ、そもそも魔法とはまったく別の系統の技術じゃからの。ただ、、、」


「何か問題でもあるのか?たとえば使うたびに命を削るとか、記憶を失っていく、とか」


「そんなものはない。ただ貴様は次代の賢者じゃ、そんな脳筋みたいな戦い方は、、、その、、イメージに合わん。魔導師としては完全に失格じゃ。ダサいのじゃ」


そう言われて考え込むカケル。

「ダサい、、、とかあるのか」


「ド阿呆。おおありじゃ。魔導師はスタイリッシュでなくてはいかん。洗練された魔法と卓越した戦略。互いの相性を見極め、針の穴を通すような魔法を放つ。それが魔法戦闘の醍醐味じゃ。美学じゃ。しかも貴様はそのトップオブトップ、大賢者をいずれ拝命する運命なのであろう?それが、、、魔闘術など、、、」


顔をしかめて悩むリエル。

異世界からきたカケルには分からない美学があるようだ。


「教えてくれ。強くなれるならなんでも構わん。正直、魔導師っていう自覚も俺にはないんだ」


「ぐ、、くそ。聞かせるでなかった。お主のせいじゃぞ」


「申し訳ありません、リエル様」

綺麗なお辞儀をして謝罪するメイドさん。


その後、約1時間。

渋るリエルを説得し、カケルは魔闘術を習う確約を取り付けたのであった。




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