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第22話「成長の途中」


明くる朝、ルークは大賢者のコカトリス亭を出て

街の外にいた。

昨晩は遅くまでギルドマスター達と話していたため、

少し眠気が残っている。


「暴風竜か、、、」


ルークはおとぎ話に出てくるあまりにも有名な存在の

名を呟いた。それが実在するなんて思ってもみなかったし、

この瞬間もまだ信じきれていない。

だが昨晩のボッシュ達の狼狽する姿を思い出すと、

それが真実だと僅かな実感が芽生える。


一体何が起きてしまうのだろう。

ルークはそれを考えると、

胸がザワつくのを感じた。



深呼吸して、剣を構える。

集中しなければ、とルークは気を取り直す。


一昨日はボッシュに為す術もなく負けてしまった。

手も足も出ずに完敗と行っても良い。


塔の探索を通して魔物相手には、

なんとか戦うことは出来るようになった。

だが対人となるとまるで自信はない、

幼い頃から散々兄や教師にやられていたため

さらに強い苦手意識があるようだ。




ルークはゆっくりと剣を振る。

上段、下段、横薙ぎ。突き。

一つひとつの動作を丁寧に行っていく。


ルークの脳裏にはカケルがボッシュと戦う姿が浮かんでいた。


カケルはすごい、ルークは素直に思う。

塔の攻略、そして邪神の眷属との戦いを間近で見た。

カケルの成長スピードは異常だ。

次代の賢者と言われるのも納得である。


そう、次代の賢者。

彼は選ばれし人間なのだ。

自分とは違う。


出会ってから今まで、

カケルには迷惑をかけてばかりだ。

このままではカケルにまで愛想を尽かされてしまう

時が来るかもしれない。

ルークはそれを懸念していた。


「ハッ!」

そんな事を思いながらルークは剣を振る。

ただひたすらに、型を繰り返す。


ルークは剣を振ることが好きだ。

なにも考えないで済むから。

だが今日は中々無心になれない。

胸に刺さったトゲがなかなか抜けない。

こんなことは久しぶりだ。



どれくらい剣を振っただろうか、

背中が汗ばみ額を汗が流れるのが分かる。

その時、


「雑念が見えるね」


突然後ろから声を掛けられた事により、バランスを崩す。

「わっ!」

転んでしまう、そうルークが思って地面に手を付こうと

したときであった。


「危ない!」

突然、突風が吹いてルークは体勢を取り戻すことになる。


「え、あ・・・」

「すまない、驚かせてしまったね」


聞き覚えのある声。

振り向き声の主を確認すると、

そこに居たのはロリリアの騎士団長ミリアルドであった。


「おや、君は、、、」

「ルークです。カケルと一緒にいる」


「ルーク君か、先日はどうも。君は剣士なのだね。こんな朝早くから修練とは偉いね。」

にこりと笑う、ミリアルド。

先日修練場であった時よりもかなり柔らかい印象だ。


「はい、まぁ。これぐらいやらないと、迷惑をかけてしまうので・・・」

「迷惑?それはどういう・・・」


ミリアルドは不思議そうにルークの顔を覗き込んだ。

そこで何かに気が付いたような表情になる。


「君、名前はなんという?」

「・・・ルークです」


「すまない、私は家名を尋ねたつもりだった」

ルークはごくりと唾を飲み込み口を開く。


「・・・ロードシルトです。ルーク=ロードシルト」


それを聞いたミリアルドは少し驚いた様子だった。

「そう、か・・・」


そう言うとミリアルドは、ルークに背を向けて言った。

「すまない、訓練中邪魔をしたな。私もここでよく剣を振っているのだ。機会があればまた会おう」


「は、はい・・・」

ルークはそれだけ返事をする。

ミリアルドは一度も振り返る事なく街の方へと歩いていった。




・・・

・・




暴風竜イル=バルヴァロの討伐は極秘裏に、

かつギルドマスターと騎士団長が選ぶ精鋭のみで行われることになった。

治安維持のために遠征している騎士団の一部メンバーの帰還を待って、

出発は7日後となった。


そんな悠長に準備している場合かと怒り暴れるボッシュを、

ミリアルドが制圧する形で決着となったが、

ボッシュ本人はまだ納得が行っていないらしく、

今日も朝から機嫌が悪い。


だがそれでもそつなく店の開店準備を進めるボッシュの姿を見て、

やはり商売人だな、と感心するカケルであった。



ルークは朝からどこかに出掛けていたため、

カケルはひとり大賢者のコカトリス亭を出ることにした。

この街で一人きりで行動するのは初めてだ。


昨日の騒動により魔物の討伐証明部位を換金出来ていないため、

まずはそれを済ませてしまおうとカケルはギルドを目指す。


ギルドの扉を開けると、立て付けの悪い扉がキィとなった。

ギルドの中は冒険者で溢れており、

カケルはキョロキョロと換金場所を探す。




「あのー、大丈夫ですか?」

後ろから声がして驚いて振り向くと、

そこには一人の少女が立っていた。

服装からすると、ギルド職員のようだ。


「あ、ごめんなさい。驚かせてしまって、あなた新人さんですよね」

「あ、あぁ。確かにそうだが・・・なんで分かった?」


少女はクスリと笑う。

「それは分かりますよ。ギルドの中であんなに物珍しそうにキョロキョロしていたら、新人ですって言っているようなものです。」


「そう言うものか・・・」

少女に言われて少し恥ずかしくなるカケル。


「そう、そうです。ここだけの話、ギルドの中は色々な人がいます。あまり隙だらけだと、悪い人に目を付けられてしまいますよ。」


少女は周囲を気にして小声で話す。


「ありがとう、助かったよ。ところで討伐証明部位の換金所を探しているんだけど教えてくれるかな?」


「はい、もちろんです。それでしたら、こちらへどうぞ!」


少女に促され、正面左手のカウンターに進むカケル。

少女はカウンターの内側に入ると、再びカケルに向かい合った。


「ようこそ!換金所へ。受付嬢を務めますマリアと申します。改めてよろしくお願いいたします」


丁寧にお辞儀をするマリア。


「マリア、さん。初めまして、俺はカケル。察しの通り一昨日街に来たばかりの新人だ。よろしく頼む」


「マリアで良いですよ。はい、カケルさんですね。それで、どちらを換金されますか」


「あぁ、これだ」


カケルは荷物を開き、中からいくつかの素材を取り出す。


「角ウサギ、、ゴブリン、、ファングボア・・・森の魔物ですね。これでしたらすぐに終わると思いますので少しお待ちいただけますか。査定お終わりましたらお呼びいたします」


「分かった、頼む。」

カケルはカウンターから離れた。


マリアに注意された為、あまりキョロキョロとしないようにしながら、

再びギルドの中を見回す。

他のカウンターにいた冒険者の集団が声をあげ、何事かを大喜びしている姿が見えた。


あれはきっとパーティなのだろう。

掲示板を眺めるといくつもの依頼書が貼られていた。

ゴブリンの討伐、ゴーレムの結晶の採取、沼リザードの捕獲。。


そこに書かれたいかにも冒険者な内容に、カケルの胸は少し高鳴るのであった。


その中の一枚、薄汚れた一枚の告知にカケルの目は止まった。

そこには汚ない字でこう書かれていた。


ーーー魔法を用いた戦闘術教えます。初心者でも問題ありません。


ボッシュとの戦いはミリアルドの乱入により流れたが、

それでもあのまま戦っていたらカケルの負けは確実だった。

ボッシュが最後に放った殺気、恐らくあれがボッシュの本来の姿なのだろう。

奥の手どころではなく、完全に手加減をされていた訳だ。


強くなる。

そのシンプルな目標のために、

カケルはなにか出来ることがないかを模索していた。


「カケルさーん、終わりました!」

マリアの声にハッと気がつき、カケルはカウンターへと向かう。


何気なしにその告知を掲示板から引き剥がすと、

上着のポケットの中へと詰め込んだ。


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