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第10話 「蜘蛛の魔物」



「蜘蛛の魔物の話は父に聞いたことがある。」

森を歩きながら、ルークが話す。


「蜘蛛の魔物にはたくさんの種類がいるが、世界に5体だけ、母なる蜘蛛と呼ばれる蜘蛛がいるそうだ。」

「母なる蜘蛛・・・」

「あぁ、蜘蛛型の魔物はすべてその5体のいずれかの眷族で、蜘蛛型の魔物を倒害すると、いずれこの母な

る蜘蛛がそいつを食べに来るそうだ。だから・・・」


「蜘蛛には手を出すな・・・って」


その話に、一行は押し黙る。






「衝撃波ッ!」

ドゴンという音とともに、蜘蛛の四肢が飛ぶ。

グロテスクな光景だ。

相変わらず、小型の蜘蛛がカケルたちに襲いかかっていたが、

その数はドンドンと増え、戦闘に切れ間がなくなってきた。


「カケル、気が付いているかい?どうやら誘い込まれているようだ」

テトラがいう。


カケルも蜘蛛たちの不自然な動きが気になっていた。

カケルたちを森の奥へ奥へ、追い込むように襲いかかってくる。


「もしも統率してるやつがいて僕らを狙っているとしたら、本当に頭のいいやつだ。注意した方がいい」

そう言って、テトラは氷の刃で蜘蛛の頭を吹き飛ばす。


「わかった」




その時、

カケルたちの後方からガサガサと音が鳴り始める。


「カケル・・・あれは・・・」

ルークが目を見開いている。


そこには今までとは比べ物にならないほど大量の蜘蛛が、

沸きだしていた。



「走れ!」

テトラが叫ぶ。

それと同時に、一体の地面が凍結し、

蜘蛛たちが動きを止める。

一行は、一斉に走り出した。







蜘蛛たちに追われ、森のなかを走る。

殿を務めてくれているテトラが魔法を放つが、

いまや蜘蛛は四方八方から沸きだし、

森全体がカケルたちを追いかけているように見えた。


「このままじゃ・・・まずい、な」


走りながらカケルがいう。


その時、小さな洞窟が目の前に見えた。


「テトラ!」

カケルがそう合図すると、テトラもそれに気が付き

洞窟に向け進路を変更する。


「飛び込むんだ!」

テトラの指示よりも先に、カケルとルークは

その洞窟に駆け込む。


「アイスウォール!!」

テトラは自らが洞窟に入った瞬間、

洞窟の入り口に向け魔法を放つ。



バキバキと音を立て、大きな氷が競り出す。

洞窟の入り口は完全に閉ざされた。



「あ、危なかった・・・」

ルークがいう。


3人は上がりきった呼吸を整えた。




やがて3人は洞窟からの脱出ルートを探るため、

奥へと進んだ。


テトラが魔力の流れを関知し、

別の入り口の存在を感じたためである。



いくつかの分岐点をテトラに先導されながら

歩くと、ルークがなにかを見つけた。



「カケル、テトラ・・あれ・・・」

「なんだ?」



天井からぶら下がる糸とそれに繋がり

中吊りになっている糸の塊があった。

糸の塊は、まだ生きている魔物が簀巻きに

されており少しだけ揺れている。


「糸・・・」


「どうやらここはやつらの食料庫のようだね。逃げ込んだと思っていたのは敵の足元だったみたいだね。いや、そもそも最初から僕たちはここに誘導されていたのかも知れない」


とにかく、注意しよう。

そう言ってテトラは

さらに先に進んだ。

カケルは自らの体に身体強化の魔法をまとわせるのだった。





3人が出たのは洞窟内の開けた空間だった。

そこには無数の蜘蛛の糸が張り巡らされており、

何体かの魔物が引っ掛かっているのが見えた。



「ここが敵のホームか」

カケルが言う。


「静かに。あいつがここの主のようだ」


テトラが視線を向けた先には、巨大な蜘蛛がいた。

ここまで倒したどの蜘蛛よりも大きかった。


「なんて大きさ・・・夢に出てきそうだな」

「アークタラテクトだ・・・」



母なる蜘蛛の眷族にして忠実な僕。

莫大な魔力により自らの子孫を残す。

食欲が旺盛でアークタラテクトが巣食った森には

生物は一匹も残らないという。


塔の中は常に一定の魔力が循環しており、

特定の魔物が爆発的に増え

生態系を破壊してしまうようなことはない。


アークタラテクトも産卵の際には塔の魔力が

必要なため、いつでも一定数が保たれていた。


しかし、先日カケルとテトラはデュラハンという

莫大な魔力を持った魔物を討伐した。


それにより塔の内部に魔力の余剰分が出来、

その魔力を使いアークタラテクトは大量の蜘蛛を

産み出したのであろう

テトラは状況をそう推測した。



「あいつが気が付かないうちに、先制攻撃で仕留めよう」

そう言ったのはテトラだった。


アークタラテクトはこちらに気が付いていなようで、

たしかに先制するには絶好の機会だった。


テトラは、身に魔力を纏うと

静かにそして丁寧に魔力を練りだした。

同時にブツブツと詠唱を始める。


その姿を、カケルは普通に見ていたが

対称的にルークは驚いていた。

テトラがここまで集中的に魔法を使う姿を見るのは

初めてだったのだ。

自らの指南役や、これまで出会った、

一流と呼ばれる魔導師たちの

誰よりも強力な魔力を感じる。


今、対峙している巨大なアークタラテクトより

ルークは目の前の小さな猫の力に恐怖を覚えるのであった。






詠唱をしながらテトラは、自らの変化を如実に感じていた。


やはり魔力が強く早く、自分に集まってくる。

違和感を感じ始めたのはデュラハンとの戦闘を終えてからだった。

戦いを重ねる毎に、高まっていく自らの魔力。

それは持て余すようなものではなく、むしろ体にとても馴染む。

気持ちが良いほどに、魔力が自分の思うように動くのだ。

今ならどんな大魔法でも全力で放てる、そう感じるほどに。



だが、なぜ。

使い魔に過ぎない自分に、カケルと同じようなレベルの成長は

ありえない。

何度、そう問い掛けても自らの中に答えは見つけられなかった。









「いくよ...」

詠唱を終えたテトラは魔法を構築する。

テトラの足元から、放たれる魔力は冷気となり、

地面全体、そして壁にと伝わり

周囲の空気が急激に冷やされていく。



「これは・・・」

ルークが呟く。



「空間氷結魔法<アイスクロニクル>」

テトラがそう言って魔力を解放すると、

その空間は一瞬にして氷に閉ざされた。


張り巡らされていた糸も、

捕まっていた魔物の身体もすべてただの

氷の塊に変化していく。


「グォオオオオオオォオン!!!!!」

地響きのような鳴き声が洞窟内に響く。

アークタラテクトが、こちらに気が付いたようだ。



「ふふ、遅いよ」

テトラはもう一度、魔法を詠唱した。

するとそこに巨大な氷の剣が一本現れた。


「氷剣魔法<アイスソード>」



氷の剣がアークタラテクトに向け放たれる。

アークタラテクトがそれに気が付き、

回避しようとするものの

接近するアイスソードのスピードの方が早く

その巨大な足に突き刺さる。


「グォオオオオオオォ!!!!!」


周囲に響くアークタラテクトの叫び声。


足を引きずりながら、アークタラテクトは

洞窟内の横穴に逃げ込もうとする。



だが、

「逃がすかよ!」


身体強化したカケルが張り巡らされた氷の糸を土台に

壁面をかけ上がる。


そしてそのスピードのまま剣を抜き放つと、

アークタラテクトの腹部に突き刺す。


「衝撃<インパクト>!!!」


同時にアークタラテクトの脚に触れ魔法を叩き込む。


テトラのアイスクロニクルにより、氷かけたその脚は

ガラスのようにバリンと音を立てて崩れる。


脚を奪われたアークタラテクトは、バランスを崩した。

巨体が自ら張った糸の氷をバキバキと破壊しながら、

地面に落ちていく。


「グギュルルルル!!!!」


苦しそうにのたうち回るアークタラテクト。


だが落ちた先を見て、カケルは驚いた。



「ルーク!」

「あ、あ・・」


アークタラテクトが落ちたのは、

ルークが身を潜めていた大岩の

目と鼻の先だったのだ。


「く、くるな・・・やめろ・・」

アークタラテクトは苦しみながらも、

その真っ赤な瞳でルークを捉えていた。


キュルルルとか細く鳴きながら、

ルークに迫る。



「ルーク!逃げろ!」

カケルは身体強化で壁を走りながら、

アークタラテクトに向かう。

だが、この距離では間に合わない。


アークタラテクトがその毒牙を向き、

ルークに噛みつこう大口を開ける。


その時、


「うあぁぁぁっ!!!!!」


ルークは自らの剣を抜き、

アークタラテクトの口内に突き刺した。


「グキュァァァアアア!!!」

思わぬ反撃に後ずさりするアークタラテクト。



「やれば出来るじゃないか」

その時、テトラの声が聞こえた。

アークタラテクトの真上に、大きな氷剣が浮かんでいる。

「くらえ」


ズドン、と剣が突き刺さる。

最後にキュルルと鳴き、

蜘蛛はその動きを止めた。







呆然とするルークを抱え、

カケルとテトラは洞窟を脱出する。

主が死んだとは言え、大量の蜘蛛の魔物は

まだ健在だ。

異変を感じ集まってくる前に脱出する必要があった。


予想通り、アークタラテクトを倒したことで

階段に張り巡らされていた糸は消滅していた。


一行は蜘蛛が追ってくる前に、

階下へと進むことにした。




・・・

・・




アークタラテクトを倒して以降、

ルークに変化が見られた。


少しずつではあるが、

戦闘に参加するようになり、

ゴブリンなど弱い敵であれば

自ら攻撃を加えるようになった。


アークタラテクトという強敵を倒したことで、

彼のなにか心境の変化があったのだろう。


彼の成長により、一行の探索ペースは

再びスピードアップすることになる。

3週間後、ついに一行は100階層に到達することになる。


カケル

LV35

HP 720

MP 1630

身体強化Lv15

加速LV15

衝撃波LV18

魔法刃Lv10

魔弾Lv15

探知Lv15

大賢者の叡知Lv1

剣技Lv4




ルーク

LV17

HP 120

MP 15

脚力強化Lv5

身体強化Lv2

剣技L8


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