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街はまだ見えない。
雨に氷が混ざってきている。
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真っ白な雨が降り出した。
これが、旅の吟遊詩人の歌に聴いた雪というものなのだろうか。
急激な冷え込みの為か、魔物の姿は少なく、動きも鈍い。
勇者がいないことを考慮し、出来る限り戦闘を避け、先を急ぐ。
◆
遠くに街が見えた。
雪が積もり、予定よりかなり遅くなってしまった。
馬車の車輪が思うように進まない。
手足の赤切れが激しい痛みと痒みを伴う。
指の震えと合わさりうまく字が書けない。
◆
手足の感覚がなくなってきた。
雪の勢いが増し、見えてきていた街どころか、少し前の景色すら見えない。
死が目の前をちらつく。
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これしか無いのか。
本当にこうするしかないのか。




