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魔物の声が近いと記した後、私たちの匂いを嗅ぎつけたのか、狼のような魔物が数匹現れた。
どうにか撃退するも、戦士の傷は深い。
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癒しの魔法を限界まで使い、気絶しては起きてまた使う。
出血が激しかった為か、戦士はしきりに寒いと言う。
夜、魔物が群れをなしてやってきた。
戦士は虫の息だ。
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私も魔法使いも傷だらけ。戦士はいつ死んでもおかしくはない。
私が覚えているのはここまでだ。
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勇者が戻ったのはそれから三日が過ぎてからだったという。
私たちの遺体は激しく損傷していたものの、蘇生に必要とされる、肉体の半分は残っていたらしい。
獲物を保存する習性を持っていた魔物に救われるとは、なんとも皮肉なものだ。
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死ぬという事。蘇生するという事。
変わり果てた魔法使いの姿を見て理解していたつもりだった。
だけれど、自分の認識が甘かったことを身を持って痛感させられた。
生き返ってからのことは思い出したくない。




