5 村に居ました
前回投稿してから1時間後位にアクセス数を見に行ったら、30PVついてて、累計100PVの字を見て(’ω’)ファッ!!?ってなりました。
これからもゆっくりですが頑張って投稿していきます。
ドアノブの高さを修正しました
村に帰った俺は、すぐさま自分の家に入る。
「エナ!暖かいお湯と治癒魔法を!」
「どうしたんだい、アンタ。そんなに早口で」
「いいから早く!」
エナがゆっくりと階段を下りてくるが、そんな時間も待ってられねぇ。ガキの体が最初に抱えた時よりも冷たくなってるからな。
1階奥の部屋にあるベッドにガキを寝かせて、そこにやっと階段を下りてきたエナを引っ張って連れてくる。
「アンタ……これって……」
「狩りの時に間違って撃っちまったんだ。治せるか?」
「早く桶に水を汲んで来て頂戴!それと布も!」
「分かった!」
エナがガキの顔を触ると同時に叫んで、俺が忠実に動く。
すぐに村中央にある井戸から水を汲んで、エナに持っていく。
「持ってきたぞ!エナ!」
エナは俺が持ってきた水を火魔法で直接温めてから、布を浸してガキの体を拭いていく。更に傷の部分に治癒魔法をかけて、一気に治していく。
エナは昔『人を治すのが得意だよ』って誇らしげな顔で言っていたが、ここまでとはな。俺の生まれた村に治癒魔法を使える奴はいたが、これと比べると可哀想なほど遅い。全く、頭が上がらねぇぜ。
しばらくすると治療がひと段落ついたのか、エナがこっちを向いた。
「で、アンタはこの子に何をしたんだい?」
俺は感じた全てをありのままに伝えた。ガキを見つけた時に思った事が沢山ありすぎて、話す順番がぐちゃぐちゃになったが、あまりにも例外な事だから仕方ないだろ。
エナは俺の話を聞きながら、ガキを温め続けている。
「はぁ……とりあえずこれで大丈夫にはなったかね?あとはこの子が起きるまで待つことだね。あんたの麻酔矢だから……あと半日は眠っているだろうさ」
そう言って、最後に腹に布を巻いてからエナは部屋を出ていく。
「アンタ、ちょっとこっち来なさい。話したいことがあるんだ」
エナが扉を開けた時にそう言う。口調が荒いから、これから叱られるんだろうな。
ここにいても邪魔にしかならないから、俺も部屋を出る。
扉を閉める時に、ベッドが視界に入った。赤髪のガキが最初見た時よりもましな顔色で胸を上下させていた。呼吸を聞く限り、今はただ眠っているだけだろ。
「死ぬんじゃねぇぞ、ガキ」
俺はなるべくそっと扉を閉めた。
○●○●
「お兄ちゃん!またこんなところで寝て、風邪ひかないでよね!」
また従妹に注意された。ただ寝転んでいただけなんだけど。
「いいだろ、陽が当たってるし」
「まーたそんな事言って、冷えちゃうよ」
「冷えないよ。なんならここに寝てみろよ」
僕は妹に横に寝るように促す。今は昼過ぎだから、これからもう少し暖かくなるだろう。
「暖かくないじゃん、お兄ちゃんの嘘つき」
「いや、すぐには暖かくなる訳ないだろ」
寝転がった途端に文句を言われた。
「もー、責任取ってお兄ちゃんが温めてよね」
そう言って僕に抱きついてきた。すごく温かい、温かいけど……
「くすぐったいからそうやって頭をグリグリするのはやめろ」
「いーじゃん、別に」
「良くない」
本当にくすぐったいんだ。そのうち耐えきれなくなって笑い声が出てしまうから。
「あらあら、仲のいいことで」
母さんがまるで他人のように言ってくる。違うんだよ母さん、こうしないと泣いちゃうんだよ。
「お兄ちゃん、頭撫でて〜」
「はいはい」
「『はい』は100回!」
「はいはいはいはい……って違うだろ」
「えっへへ〜」
「あらあら」
いつものボケとツッコミをする。もちろん、頼まれた通りに頭を撫でながら。
「───はっ」
目が覚めた。幾分前に親戚の家に行った時の記憶だ。
神様が言っていた準備とやらのせいで、異世界の夢ばかり見させられていたから、こんな夢が懐かしく感じる。
「ここは……どこだ?」
さっきまで草むらの中にいたはずなのに、今はベッドで寝ている。
周りを見渡すと、壁や天井が木で出来ていて、梁が見える。どうやらここは木造の部屋の中のようだ。左側が壁で、右側に扉がある。
ベッドの頭の方の壁に、明り取り用なのか小さな木の窓があり、少しだけ開いて光が差し込んでいる。そこから外を見ようと体を起こし───
「痛……っつう」
脇腹の辺りが痛くて、頬にいらない力が入った。身を屈めると更に痛くなったから、手をついてゆっくりとベッドに横になる。
顔を上げても痛くなるから、顔を動かさず、手で傷の箇所を探す。
「ここ……か」
傷の箇所は脇腹で合っていた。そこに何か布のようなものが包帯よろしく巻いてある。今着ている服よりも柔らかい素材だ。
段々と痛さに慣れてきたので、ゆっくりと動いて、さっきの窓から外を見る。
「……村?」
窓から見える景色を見て最初に思ったのがこれだ。
所々に1階建ての木造建築の家があり、家々を繋ぐようにあぜ道のような道がある、その横は田んぼじゃなくて畑のような物だが。
遠くの方には一際高いやぐらのような高い建物も見える。
僕はベッドに戻って、脇腹の痛みを感じながら、これまでの情報から、今の状況を考えた。
神様にスキルテスターに選ばれて、異世界の子に憑依する
↓
憑依すると水の中だった
↓
風よけのために逃げ込んだ背の高い草むらの中で狼に襲われる
↓
狼と一緒に矢を受けた。多分僕は獲物として
↓
人だったからか、ここに連れてこられた
これが僕が考えた今の状況だ。少し無理矢理感があるが、これが1番腑に落ちる考えだ。最悪の場合、拉致されたと思ったけれど、それなら傷の手当はしないし、ベッドに寝かせたりしないだろう。
それよりも、今は異世界が見たい!さっきから体がうずうずしているのだ。脇腹はさっきの思考で痛みが幾らか和らいでいる。
背が低くなったせいで、今の僕からしてものすごく高いベッドから降りて、これも木で出来た扉に向かう。少し立ちくらみを起こしたけど、寝起きだから仕方がない。
扉に手をかけて、そ〜っと開ける。背が低いから、ドアノブが持ちにくい。
そして目に飛び込んできたのは、ありえない光景だった。
さっき草むらで見た狼が、今目の前にいるのだ!色はさっきより白いけど、大きさがでかい。さっきの狼の2倍はある。
今はこっちを向いていないが、顔を上げられたらお終いだ。
「〜〜!〜!」
僕は悲鳴を上げそうなのを手で口を塞いで必死に耐え、急いでベッドに戻った。扉を閉めるのを忘れたまま……
(ヤバイヤバイ!どうしよう!どうしよう!)
必死に隠れるところを探す。だけど、この部屋には生憎とクローゼットのようなものは一切無い。
だから、唯一光が届かなさそうなベッドの下に潜る。ここなら扉から入った時に見つからないだろう。
キィ、と扉が開く音がした。
しまった!扉を閉めるのを忘れてた!
僕はベッドの下でほとんど音が出ないようにじっとする。心臓の音がとてもうるさい。
潜る時に頭から潜ったから、扉の方は見えない。今から方向転換しようにも、それだけで音が出て見つけられてしまう。
扉から入ってきた足音は、ゆっくりだけど確実に僕の方へ近づいてくる。
足音が近づくにつれて、他の音も聞こえてくる。この空気の出入りするような音は……まさか鼻息!?しかもすごく荒い、本当に獲物を探しているように……
そうやって推測を立てていたら、突然足が引っ張られる。
「うわあああぁぁぁぁ!」
そのままベッドの下から引きずり出され、宙吊りにされる。
「助けて!誰か!誰か!」
何としてでも食べられる訳にはいかない僕は、出せる限りで助けを呼ぶ。
「誰か!助け「うっせぇ!!!」!」
必死に叫ぶ僕の声をかき消す、大きく太い声が耳元で響く。思わず耳を塞いだ。だけど耳鳴りや、全身から液体が噴き出すのは抑えられなかった。股を除いて。
「安静にしてろ!ガキ!」
空気が震えるのを身体中で感じながら、僕は宙吊りにされたまま反対を向かされる。おそらく何か吠えられているのだろうが、耳鳴りのせいで聞こえない。
いや、聞こえなくて良かったかもしれない。聞こえていたら股からも液体が噴き出すところだったから。
反転させられて見たのは……白い何かだった。
「ひいっ!」
「早くベッドに寝「アンタ、何やってんだい!」」
段々と耳鳴りが収まって、周りの音が聞こえるようになってきた。
溜まりに溜まった涙を瞬きで流して、声がした方を向く。
「そんな事して傷が開いたらどうすんだい!」
そこにいたのは、少々ふくよかな、食堂のおばちゃんのような人だった。
「い……いや……こ、これは……」
いつの間にかさっきまで大声で吠えてきていた狼が狼狽えていた。
……それも人語で。
「無理やり起こして、大声出して!アンタはこの子を殺す気かい?!」
おばさんが狼に臆することなく、むしろおばさんが叱っている。狼が怖くないのだろうか。
……というより、思いっきり人語で喋っているけれど、狼が人語を理解する訳が……あれ?そういうことなのか?
「無理やり起こしたんじゃねぇよ。こいつが起きていやがったんだ」
狼がまだ僕を宙ぶらりんの状態にしたままそう言う。そうか、そういうことで良いんだな。
そろそろ下ろしてくれないと、気持ちが悪い。頭に血が上って、くらくらしてきている。血が集まりすぎて、目の前が真っ暗に……
あっ───
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ちなみに、文章中の『○●○●』は、お分かりかとは思いますが視点が変わる合図です。