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4 憑依しました

PV70行きました!それとブックマークもして頂きました!

ありがとうございます!orz

見た時に嬉しすぎて踊っちゃいました(照)

───目が覚めた


 目の前に広がるのは先が見えない白色ではなく、快晴の時の空のような青色だ。

 さっきまでとは違って体がだるく、寝てだるさを取ろうとしたのだが、頭頂部からつま先にかけてキンキンに冷たく……


「って冷たっ!」


 出てくる声が少し高いのに違和感を感じながらも、冷たすぎて体を起こす。見ると体が水に浸かっていた。

 神様は水に浸かっているとは言ってたけどこれは流石に酷くないか?

 ……まぁ全身水の中だったり、うつ伏せでもなくて、ちゃんと水の深さが顔の厚さ以下というところはまだましだけど……


 寒い!なにこれ寒い!水の中でも寒かったのに、体を起こしたせいで上半身が風に当たって寒い!体がブルブル震えてるから!


 刹那のうちに両手で体を抱く。鳥肌のついたプニプニの腕を温まるように揉んで……プニプニ?カチカチじゃなくて?

 そうだ、自分の身体じゃないから腕がプニプニしているんだ。

 他の所も見てみると、手も全然違う。手の甲に血管が浮き出ていた僕の手が、今や子供の手のように少し膨れていて、血管なんて見えなくなっている。

 僕は自分の姿を確認するために、水から出る。


「子供じゃん」


 見える高さが違う。家のテーブルから考えて……1メートルぐらいか?というと、3歳か4歳くらいだったはず。

 夢で見た記憶と合わせて考えると、ヴォル(この子)は村か町に住んでいて、そこが盗賊団の襲撃に遭って、母に逃げるように、と川に突き落とされたけど、川岸に上がって力尽きてしまったところなのかな?それとも川で溺れ死んでから、ここに流れ着いたのだろうか。

 そんな考えをしていて気が紛れていたせいか、いつの間にか体が冷えきっている。今にも筋肉が震え出しそうだ。水に濡れて、さらに外気に晒されているから、冷えるのは当たり前なのだが。

 今着ているのはゴワゴワした感触の半袖の服と、同じ素材の長ズボンだ。どこにでもいる村人みたいな服装だ。

 暖をとりたいところだが、火はつける事が出来ないから、せめて風の無いところに行きたい。

 周りを見てみると、今立ってる方は川原の先にススキみたいな高い草が生えている。今の僕の目線よりも高い。川を挟んで反対側には木々が生い茂り、森となっている。何故か先が見えない。多分光が入らないくらい生い茂っているんだろう。

 ちなみにだが、川の上流は川の反対側と同じように森となっていて、その上に高い山がうっすらと見える。修学旅行で見た富士山よりも高い。

 下流の方は川が2手に分かれていて、片方は森の方へ、もう片方はしばらく流れたあとに高い草の割れ目に流れていっている。

 森の方には行きたくない。行ったら一生帰って来れない自信がある。


「うぅ、寒い寒い」


 迷わず近くの草むらの方へ走る。靴は履いているのだが、靴底が薄くて石の感触がそのまま足に伝わってしまう。正直に言うと、靴が曲がりやすくて走りやすいけど、痛い。


「うわっ!」


 小さくなった足をうっかり川原の石の隙間に落としてしまい、足をくじきそうになる。くじかないように体を動かすが、バランス感覚が戻っていないせいか、こけてしまった。運が悪いことに、尖った石に膝をぶつけながら。


()っ」


 ぶつけたところから血が出ている。さっきよりも力も入りにくくなった。

 ようやく草むらの中に入る。中はまるで満員電車の中のように草が生えている。膝の傷に当たらないように動くので一苦労するほどだ。だけど風は少し収まっている。地面がさっきまでの石がそこら辺に転がっているような場所とは違い、土になっているから、足元が見えなくてこけてしまうことを考えなくてもいいだろう。

 まだ風は感じるので、もう少し奥に入る。すると草がなぎ倒されて直径3メートルくらいの円が出来ている所に出た。ミステリーサークルのようなその場所で1度休憩する。

 ここからどうしようかと草むらの奥を覗いてみるが、同じような草が見渡す限り生えている。でも遠くの方に緑色の小高い丘が見える。あそこから周り全体が見れそうだ。

 僕がその丘を目指して歩き出したその時だった。


 ガササ…ガサッ……


 草をかき分けて進む音がする。最初は風で草が揺れる音かと思ったが、違うようだ。音が聞こえるということは、結構近い。


「そういえば、モンスターとかいて当然だよ……ね……」


 そう言いながら、僕は水で冷えた時よりも背筋が寒くなった。

 ひょっとして今僕、大ピンチですか?!

 僕が軽くパニックになっているのにも関わらず、音は近づいてくる。さっき声を出してしまったからか、まっすぐこっちに向かってくる。


(早く逃げないと!)


 僕がようやくパニックから立ち直った時、音の主が姿を現す。


「ウウゥ」


 そう呻きながら、銀色の狼が姿を現す。右目に矢が刺さっていて、そこから赤い体液が流れている。


(狼!矢が刺さってても逃げ切れるわけがないよ!考えろ……)


 狼から視線を外さないまま、焦る気持ちをなんとか抑えながら考える。


(考えろ、考えろ!背中を見せたら終わり、それなら───)


 僕は運命をかけて、狼の右側に半身で走り出す。こうすれば、狼が転回に時間がかかると思ったからだ。


「バウ!バウワウ!」


 狼の体の横に回ったところでとても大きな声量で吠えてきた。いきなり吠えられたものだから、足がもつれて転んでしまった。

 その間に、狼はこっちを向いて悠々と歩いてくる。顎から赤い液体と共に、涎まで垂れている。

 狼が目の前に来て、立ち止まった時だった。


「キャン」


 突然狼が悲鳴をあげて倒れ、ピクピクと痙攣をしだした。

 横に回った時には無かったのだが、いつの間にか胴体の真ん中に矢が刺さっている。矢羽根からして、目に刺さっているのと同じ矢だ。

 グロ耐性が余り無い僕は、目の前で起きた事が怖くなって後ずさり、草むらの中に入る。

 一旦離れて、落ち着こう。まずは、呼吸を落ち着かせて───


「───っ!!」


 左から何かが飛んできて、脇腹に刺さる。勢いが強く、そのまま右に倒れた。倒されたまま見ると、さっきの矢だ。先が尖っていて、体の中に深く刺さっている。


「あ……っあ」


 声に出せないくらい痛い。飛んできた方を見ても、そこには草しかない。

 あれ?段々と体に力が入らなくなってきた……目も開かなく……


 駄目だ!死んだら駄目だ!せっかくの異世界をこんな形で終わりたくない!




「ひゃめ……はろ……ほん……は……」

(だめ……だろ……こん……な……)


 舌を噛んで耐えようとするが、次第に噛む力も弱まっていって……





「ほお……お……え……」

(とこ……ろ……で……)






(死ん……でた……ま……るか……)






 ───そこから先は覚えていない。



○●○●



「おーい、キール。そっちは殺ったかー?」

「あぁ、ちょっと逃げられたが、ちゃんと殺れたぞ」


 遠くからサマンタが近づいてくる。サマンタが向こうでシルバーウルフを引きつけてくれなかったら、こっちで静かに狙えなかったぜ。


「やっぱキールでも失敗する時はあるんだな」

「うっせ」


 シルバーウルフの死体を担ぎながらサマンタが言ってくる。あそこで風が吹かなかったらちゃんと眉間にブッ刺さってんだよ。


「そういや、シルバーウルフの近くにもう1匹いたぞ」

「逃がしたのか?」

「馬鹿野郎。俺がそんなヘマすると思ってんのか?

 麻酔矢で眠らせてる。シルバーウルフより小っせぇから効いてるだろ」


 サマンタが軽口を叩いているが、しっかり言っておく。こうしねぇと、後で変な時に茶化してくるからな。

 スヌ草をかき分けて獲物まで進む。クソッ、尻尾にスヌ草が刺さってムズ痒い。


「痒いのか?痒み止めの薬なら村にあるから、今は治せないぞ?」


 サマンタがこっちの気を遣って聞いてくる。さっきまでとは違って言葉に悪意が感じねぇ。まぁそういう奴なんだが……


「チッ、痒くねぇよ」

「嘘つけ、舌打ちが聞こえてるぞ。後お前の尻尾がさっきから挙動不審だから言っただけだ。ついでに耳もな」


 そこまで見てんのかよ、それだったらもう言い逃れできねぇな。

 そんな話をしているうちに、獲物を倒した場所に着いた。


「おっとぉーう?あー誤差だな、これ」


 さっきまで後ろにいたサマンタが、素早く俺の前に来ていて、俺が1本しくじった獲物を見てる。

 からかおうとした様だが、生憎だがそれは出来ねぇんだよなぁ、ほんとに誤差だからな。


 さてと……獲物の処理はサマンタに任せて、俺は麻酔矢で眠らせた方を見に行くか。

 俺は念の為、腰につけてた剥ぎ取り用のダガーを抜いておく。こっちが風上で、獲物が何なのか分からねぇからな。

 ゆっくりと近づいて見えたのは────2本の足だった。


「サマンタ!こっち来い!」

「はいはい、何だい?」


 俺は見やすいように、スヌ草をダガーで刈りながらサマンタを呼ぶ。


「!これは……キール、逃がしたどころの騒ぎじゃないぞ?」

「そ、そん時は姿が見えなかったから獲物かと……その……」


 そこに3歳ぐらいの赤髪の男の子(ガキ)が横たわっていた。腹には俺特製の麻酔矢が深々と刺さっていて、顔が青くなっている。倒れた時にでも擦りむいたのか、膝から血を流していた。


「麻酔の強さは?」

「シルバーウルフがすぐ寝るくらいだ」

「まずいな……早く持って帰れ!」


 サマンタが麻酔矢を抜いて、手持ちのポーションで応急処置をしている。


「ほら!」

「あぁ、わかっ───って冷てぇ!」

「いいから早く!エナなら何とか出来るだろ!」


 ガキに触れると氷のように冷たかった。こんなクソ寒い時に、川にでも入っていやがったのか?


「畜生っ!」


 俺はガキを抱えて、出せる限りの力を使って自分の村へと走った。


これからもゆっくりですが投稿していきます!

長い目でお付き合いして頂けたらと思います!



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