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26 Fランク冒険者のお仕事

「······」


 朝、ベッドの上でさぞかし僕は眉間に皺が寄っていると思う。


 眠いからでもなく、理由は夜のことだ。

 たった2匹しか会敵しなかった、村では最低でも5は毎晩会敵してたのに。


 村みたいに何匹、何体かで固まって行動していないから?

 確かにそれはありうる。でも固まっていないと周囲からの攻撃に反応できなさそうだし、狩れる獲物もおのずと弱くなるか量が少なくなるはずだから、子孫を残せたりは出来ない。

 

 いつ狩られるかを心配をしなくてもいいほど敵が弱い?

 それも可能性としてある。もしゴブリンがあの森の頂点であるなら、そういう世界(難易度)だと思える。

 でも仮にそうだとすると森の周囲から他のモンスターとか冒険者が突っ込んで占拠出来ていそうだし、城壁もあんなに立派なものじゃなくてもいけそうだしね。村の壁なんて最初柵だよ、柵。それでもって近年壁の強化と言って柵に板を貼り付けていったくらいだ。


 あれ?そういえば柵を強化した後でも前でもモンスターって襲ってこなかったような······なんでだろ、火かな?


 自問は疑問に変わり、なんだか考えるのは後にしよう(面倒くさい)と思い。頭の中を真っ白にして顔の皺を伸ばした。


 外に出る前に、明るくなっているので木剣に割れ目とか入っていないか確認──────うん、大丈夫そうだ。少々振ってもバランスがおかしくなったりしていない。

 よかった、木剣も鉄剣と同じく村から1本しか持ってきていない。初日(あれだけ)で折れているんだったらモチベーションがガタ落ちしていた。例えるなら······買ってもらったばかりのスマホを落として画面がすごくひび割れてまともに見れない感じ。


 頬を叩いて気合いを入れて、冒険者ギルドへと向かう。


 えっ、ギルドカードと顔を見せてって······?

 はいぃ······




「ふぅ······」


 朝っぱらから精神力が削られたけど、まだ半日以上起きている時間が残っている。気持ちをリセットさせるために頬を叩く。

 さぁ、今日も頑張ろう。




 えーっと、今日のクエスト(依頼)は、っと······荷物配達に水路の掃除に壁の補強のための人員、それにお守り等々沢山ある。

 なんだか『使い勝手のいい人が集まっているところ=冒険者ギルド』って考えが出てくる。冒険者は何でも屋じゃないと思うけどね······


 しばらくの間依頼版の前で動かずに、全てのクエストに目を通してから頭の中で計算する。


 小中学校で1限目の授業の前に100マス計算だとか漢字の小問題とかやっていたのをふと思い出して、久しぶりにやってみたのだ。

 やってみて分かったのが、確かに頭を活性化している気になる。実際に活性化しているか確認のしようは無い。

 でもこの『気になる』、僕にとっては結構重要なことで、別に精神論者と自称する訳では無いけど気力は体力に勝ると思っている。そうじゃないとぶっ倒れるまでゲームは出来ないでしょ。

 でもそこまでやってしまうとゲーム取り上げられてたから······


 依頼板に数人人は来るけど、Fランクのクエストを受ける人はおらず、受けるとしてもEランクのクエストの紙が貼られている範囲のFランク寄りくらいの場所までしか来ない。

 そのため依頼板から少し横に逸れて斜めから見ることでずっとクエストを見つめることが出来る。


「よし、これと······これ」


 頭の中にあるビージアス王都の地図(正確さは50%ほどかな?)と金額を考え、依頼をスムーズにいくつも受けようと決めたクエストの紙を剥がす。

 選んだのは荷物配達と家の解体作業の手伝いの2つ、解体作業の方が早く終わるのなら他のクエストを受けれそうな気がするのだけど、どんな家の状態から解体していくのかは分からないから今日は置いておく。それに時間が余ったらまた受けに来ればいいだけだからね。


「配達と解体ね、怪我には気をつけてね」

「はい、頑張ります」


 受付の人(今日はクーラさんじゃない)に紙を渡して、別の紙を受け取る。


 この紙をギルドカードに当てると、紙がギルドカードにゆっくり吸い込まれていく。初めて見た時はびっくりしたよほんと。

 こうすることでギルドカードにクエストの情報が入って、クエストの内容が簡易表示される。



***************


ヴォル

パーティ︰

ランク︰F


●指定箇所へ荷物を配達(0/2)

●西部の家屋を解体


***************



 ······うん、まんまゲームだよね、これ。色が変わってサブクエストが表示されたりとかしたら普通にゲームの中だと思うじゃん。あれ?今受けてるのがサブクエストに······じゃあ追加されるとしたらメインクエスト?


 まぁ経緯はどうであれ、いつでも受けたクエストが見れるのはありがたい。僕は忘れっぽいっていう自信はある、ゲームのサブクエストをメインクエストをやっている間に何個も忘れてしまうくらいにはね。




 閑話休題、クエストに荷物配達があるけど、この世界には運送会社や運搬業者といった荷物を運ぶのを仕事としている人はいない。1番近いのは商人なんだけど、運んでいるのは自分が売りたい物なので、運ぶのを仕事にはしていない。

 2番目に近いのは御者で、人を運ぶついでにその人の荷物を運んだり、場所が空けば目的地に送り届けたい物を運ぶ······これ御者の方が近い気がする······順番間違えたかな。


 と、ともかく荷物を運ぶ『だけ』で生計を立てている人はいない、ついでに言うとそういう業者もいないってことで!


 王都や村の間を輸送するとなると馬車とか、あるいは僕が貰った魔法の袋等の収納出来るものが必要になってくるけど、村の中、王都の中だけでは、荷物にもよるけどその2つは必要無くなる。


 そうなった時に誰が運ぶのかとなるけど、昔の人はそこで冒険者ギルドの低ランクの人達に目を向けたのだ。


 表向きにはクエストに慣れるためだったりその地域の人と交流を深める理由があるけど、本当の理由は人件費を抑えれるから、それだけの単純な理由だ。


 ······というのは自分で考えたものなので、実際はどうか分からない。確定しているのは近距離に荷物を運ぶ人がいないってことだけ。


 配達する荷物が置いている場所に行くと、僕が抱える大きさの木箱と両手で持てる木箱が置いてあった。これくらい自分で持っていった方がいいんじゃない?とはふと思ったけど、体が不自由だと受け取りにすら来れないのでそれならしょうがないと木箱を重ねて持ち出す。


 人目につかないような場所に持ち歩き、そこで魔法の袋に荷物を入れる。

 このまま持ち去ったらどうなるんだろう?

 あ、でもギルドカードにクエスト内容が表示されたままだし、それができるなら冒険者ギルドにあったあの水晶にクエスト受注状況か何かがありそうだ。最も、盗もうなんてことはしないけどさ。




「えーっとこっちの······」


 王都は広い、なんてったって広い。それに計画してから建物を建てていかなかったのか、道が入り組んでいて目的地に行くのも難しい。


 心の鉄壁(ただのフード)を装備している僕は道端で掃除しているおばさんに配達先の場所を聞くことが出来る。これ(フード)が無かったらこんなこと出来ない。それこそ屋根の上に登ったりしてしらみつぶしに探していたと思う。


 おばさんから聞いた話だと、行けばわかるらしいけど······えっと、ここを右っと。


「あぁ、うん。わかりやすい」


 道を折れた先は行き止まりだけど、奥に見える扉以外両側は木窓のついた壁だ。どの家かはすぐに分かる。

 今のうちに荷物を魔法の袋から出しておいてっと。


「ごめんくださーい」




 ······




「ごめんくださーい」







 ······留守かな?

 念の為にノックもしておこう。えっと、3回だっけ?4回だっけ?


「荷物をお届けに参りましたー」





 ······聞こえていないのかな?何かに夢中になっていたりして?


 僕が考えている間に、少し扉のノブが回される音がする。

 よかった、誰かはいたみたいだ。


 恐る恐ると言った感じで、扉がゆっくりと開いていく。

 中から出迎えてくれたのは、お年を召したおじいさんだった。


「すまんの、かなり大きな荷物だったろうに」

「いえいえ、持てる重さだったので大丈夫ですよ」


 フードをずっと被っているにも関わらず何も言わなかったこのおじいさんは薬師をやっているそうで、最近腰痛が酷くて仕入れた葉っぱ等の材料が家まで運べなかったので冒険者ギルドに頼んだとのこと。

 仕入れているなら運んでくれても良さそうな気はするけど······道幅か、ここに来るには狭い道を何度か曲がらないと行けなかったので、そこまでわざわざ仕入れ者が運ぶのかどうか······というかおじいさんが薬師をするならこんな行き止まりのところじゃなくて大通りに近いところに住んだらよかったのに。


 ······ん?ということはおじいさんの腰痛が治らない限りはまた同じクエストが出てくるってこと?


 そのことを聞いてみると重々しく頷かれた。この程度なら毎日だってできるので、また依頼したら届けますよと言うとすごく感謝された。


 荷物を運ぶのに魔法の袋を使っているから何の苦労も無いんだけどね。

 なんだか申し訳ない気持ちになる。


「カードを出してくれんかの」

「はい」


 おじいさんに言われた通り、ギルドカードを出す。

 依頼したのが人だった場合、クエストが完了した証明はその人の持つ紙とギルドカードを重ねることで出来る。クエストを受けた時に受付の人から貰った紙とよく似た紙をギルドカードに当てられると、これもまた同じようにゆっくりと吸い込まれていく、これにてクエスト達成だ。



***************


ヴォル

パーティ︰

ランク︰F


〇指定箇所へ荷物を配達(2/2)

●西部の家屋を解体


***************



 達成したクエストは色が変わって見やすくなる。これはすごくありがたいんだけど······なおのことゲームっぽさが出てくる。

 ちなみに依頼したのが人以外、つまりギルド単位や王都単位でクエストが出ていた場合は、クエストを完了させた証明はギルドの水晶でするみたいだ。

 そういった依頼はほとんど討伐系で、Fランクにはもちろん無い。




 気持ちを切り替えて次の仕事に行こう。クエストを受けた時に簡易な地図は貰っているので、今度は人に聞かなくて済む。

 ありがたやー


 地図に示された場所に行くと、少し解体されている家の前にもう既に何人かガッシリとした人が集まっていた。

 えっと······もしかして僕遅刻?時間は指定はされてなかったけど······


「遅れてすみません」


 開口一番に皆さんに聞こえるように言う。謝罪は素早く誠意を込めてって誰かが言っていたのを見たか聞いたことがある。


 謝った僕に対して目の前の人達は「へ?」といったような······どこかピンと来ていない顔をする。


「坊主、お前がギルドからの応援か?」


 少し間が空いた後、1番近い人が聞いてきた。


「はい、解体作業の手伝いとしてやってきました。遅れてすみません」

「いや、まだ作業は始めてないからいいんだが······お前の様なナリじゃ何も出来ねぇぞ?」


 ナリ?······あぁ体のことね。

 言われて自分の体を見直してみれば確かに、短いローブで体を少し隠しているとはいえ、集まっている人達と比べると下半身の太さなんて半分ほどだ。となるとおのずと上半身も細身ってことも分かるし、皆さんとは違い成長中の僕の身長は皆さんの胸の辺りに届いているかどうかの高さだ。

 これじゃあ力仕事なんて合ってない坊主なんて思われても仕方がないや。


 流石にクエスト受ける前に門前払いは嫌なので、傍らに置いている僕の顔の2倍くらいありそうな石を持ち上げて両手に抱える。


「この程度なら持ち運べますよ。もう少し大きくてもいけそうですね」


 少しは戦力になれるところを見せないと。僕にとっては抱える大きさと言ったけど、皆さんなら小脇に持てそうな大きさだ。嫌でも戦力になるのか不安になってしまう。


 皆さんは少し驚いた顔をした後、「それぐらい力があればいい」と言って僕も解体メンバーに入れてくれた。


 後で聞いた話だけど、最初は僕がローブを身につけていたから魔法使いだと思い、その細いナリからして冷やかしだと思ったとのこと。確かにそんな子が絶対持てなさそうな大きさの石を持ったら少しは驚く。


「んじゃ坊主はあっちの山を持って行ってくれ」

「分かりました!」


 あっちと指を指した先にあるのはレンガや石、建材だった材木が積み上げられた小山だ。平たく積まれた高さは僕の目線よりも高くなっている。


 ん?でも来た時は屋根とか少し解体されてただけで家の形はほぼ残っているような状態だったよね?


 ······え?これを手で?少し歩いたところの置き場まで?

 

 あの、一輪車は······えっ無い?


 そもそも一輪車って何だって?何で開発されてないの······


 大きい岩を引きずって?いや、丸太があれば······どこ······


 あったああぁぁぁっ!






「うーし、今日はここまでだ。坊主、明日もやるからお前も来い」

「は、はいぃ······」


 もう疲れた······頭も体も使いまくったせいで今声をかけてくれた解体メンバーの大将に『何で命令形なんですか』とツッコミをする気力もない。


 体は言わずもがな、朝持った木箱程の大きさの石は持つことは無かった(他の人が持って行っていた)けど、その大きさの木だったり顔より少し小さな石なら持って行けると言ってしまったので、他の人よりも多く置き場と解体作業場を往復した。


 頭は運搬が楽になるアイデアや記憶を引っ張り出すのに忙しかった。一輪車があればある程度早く運搬出来たはずだけど、それが無いので積み上げた石の持ち方を研究しながら持ったりした。

 あと大人数で地面を引きずるように大岩を運ぼうとしていたので、手頃な丸太を何本も用意し、下に等間隔で敷いてその上を転がすように大岩を乗せて楽に運べるようにしたり······これを思い出すのに少々時間がかかってしまった。


 最も楽な方法は魔法の袋を使って全部入れて僕1人で運ぶのが1番だ。魔法の袋の容量はあの建物ごと入りそうな気はしている。

 だけど人前で魔法の袋を使うのもなんだか駄目な感じがする。なんだろう······直感?

 使おうと思うとえもいえぬ不安?恐怖?にかられてしまう。もしかしたら本能的に駄目と認識してたりするのかな?なんでだろ。


 とはいえ、大将の言う通り明日も解体作業を行うようで、僕以外の人たちもすぐ帰ったり肩を組んでどの酒場に行くか話し合ったり、体を労うかの様にゆっくりと帰っていく人もいる。

 残る解体途中の家屋、その大きさは半分程度になっており、明日朝から動けば全部解体出来そうな気がする。


 でもこんな重労働、朝からできるのかな······

月初:書く時に違和感ないけど読み返すとどことなく違和感を感じる······なんでだろ

ルイス:書く時のテンション毎回違うからだろ

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