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1 プロローグ的な

初投稿です、とてもゆっくり更新して行きます。よろしくお願いします。

――――楽しい夢を見た


「「ヴォル!お誕生日おめでとう!」」


 豪勢な部屋で、僕の両親が手をたたきながら僕の誕生日を祝ってくれた。


「もう2歳になったのか、生まれてからあっという間だな」


 銀色に輝く腰まである髪にとんがり帽子を乗せた父さんが、僕が生まれた日を思い出しながらしみじみとそう言った。


「そうよ、もうすぐこの子だって産まれるしね」


 燃えるような赤く短い髪に花を添えた母さんが、大きく膨らんだお腹を愛おしく撫でながら、新しい家族を待ち望んでいた。


「そうだな、その時はヴォルはお兄ちゃんになるな」

「女の子だったら、家事を色々一緒にしてみたいわね」

「男の子だったら一緒に狩りに行きたいな」

「あら、それならヴォルを狩りに連れていけばいいじゃありませんか」

「馬鹿言え、ヴォルはまだ2歳だぞ」


 ・・・父さん、母さん、僕の誕生日だってことをすっかり忘れてない?


「まぁそれは置いといて、今はヴォルの成長を祝おうじゃないか!」


 父さんは手を大きく広げて、極小の()()()()をクラッカー代わりにしながらそう言った。




――――嬉しい夢を見た


 父さんが扉の前でうろうろしていた。


「どうしたの?父さん」

「もうすぐ子供が産まれるらしいんだ。あいつ、俺に内緒にしやがって」


 声をいつもと比べてとても小さくして父さんは言った。

 その時、扉の向こうから大きな産声が聞こえた。父さんはいつの間にか部屋に突撃していた。

 あまりの勢いに前につんのめっていたけど。


「あなた…生まれたわよ…」

「おぎゃあぁぁぁ」

「おお!女の子か!良かったなヴォル、妹ができたぞ!」




――――悲しい夢を見た


「あなたーどこなのー?」


 母さんが僕の手を握り、もう片方の手と紐を使って妹を背負って、父さんを探していた。


「こっちだ!早くここに隠れろ!」


 父さんは村外れの岩をどかしながらそう言った。

 岩の下には階段があった。


「さぁ早く入って、ヴォル」


 僕が先に入って、母さんが入ったが、父さんは一向に入らなかった。


「くそっ、なんでこんな時に盗賊団が…」


 父さんは村があるであろう方向に向かって独り言を呟いていた。


「あなた何をやってるの!早く隠れないと!」


 父さんは迷っているようだった。

 そして、決心がついたのか今までに見なかった真剣な顔でこっちを向いた。


「子どもたちを頼んだぞ」


 父さんはそう言って村の方向へ走っていった。


「あなた…あなたー!」


 母さんが手を伸ばして叫んでも、父さんは戻っては来なかった。




――――嫌な夢を見た


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 火のない暗い道を母さんに手を引かれて走っていた。

 サアサアと水の流れる音がするから近くに川でもあるのだろうか。


「ーー!ーーーー!」

「ーーーー」

「ーー!ーーーーーーーー」

「ーーーーーー!」


 遠くから低い声が二人分聞こえた、さっきよりも声が大きくなっているのは気のせいでもないだろう。


「このままじゃ…」


 母さんの言いたいことはわかった。この先の見えない、どこまで続いているかわからない場所で、逃げ切れるはずはない――――と。


〜〜〜〜〜〜


 それからどれだけ走っただろうか。何せ暗い道を走っていたから時間の感覚が無くなっていた。

 後ろを追ってくる足音は近くなったり遠くなったりしていた。

 母さんの疲労も顔を見れば一目瞭然と言えるくらい溜まっていた。

 その時、前から光が見えた。

 助かった、と思ったが、その光は外の光ではなく、ガラの悪い男達が持つ松明の光だった。

 母さんは反射的に来た道を走って戻った。でも、その先にはさっきまで追いかけていた盗賊達の声がしていた。

 万事休すかと思ったその時だった。


「――――ごめんなさい、ヴォル」


 母さんが僕を道の横に突き飛ばした。

 あまりに急なことだったので、僕は何も抵抗をせずに倒れ、そのまま水に落ちた。


「ガバッ……ゴボッ……」


 水で泳がずに育った僕としては、足がつかないところでは何も出来なかった。本能で上へともがくだけで、あとは川に流されるままだった。


「兄貴ぃ、子供が1人落ちやした!」

「捨て置け、どうせ滝で死ぬ」


 盗賊達が何か言っていたが、水と格闘中の僕には聞こえなかった。


「ゴボッ……ボッ……」


 いくらもがいても水面に顔を出せず、ついに水を飲んでしまった。

 それを境に、段々と体が動かなくなって、視界が黒く染まって――――――

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